ミッション3:ご利用は計画的に
本日時間差二話更新です!ご注意ください。2/2。
アドバイス、評価、感想ありがとうございます。
すべてのコメント、感想、メッセージには目を通しております。
リアルが忙しくはありますが、できる限り行いますので、お気軽にどうぞ。
「人手を増やそうと思う」
ミソロジーライフ開始からゲーム内で四日目。
ゲーム内で一夜を明かした九郎は、朝食の並ぶテーブルに全員がつくのを待ってからそう切り出した。
「むむ。ということは、【評価ポイント】の報酬が支払われておりましたかな?」
「ああ、今朝確認をしたら報酬が支払われていた。今回の報酬はソウルが4931で、魂石が銅・二枚と小回復の傷薬と毒消しの詰め合わせが1セットだったよ。これでちょっとした買い物ならできるようになったし、銅も五枚あるから一つ二つ消化して人手を増やすのも悪くないと思った」
ステータスメニューで確認したところ今回の【注目度】が49313。【支持数】が562だった。
ソウルのほうは現金にせずそのままゲーム内通貨に換えた。前回の報酬分が残っていたが、千や二千じゃまともな買い物ができないので使っていなかった。
魂石が減ったのは一部がアイテムに変わったからだろう。
それでも二枚ももらえたので充分な報酬だ。
ちなみに現在の合計ソウルは【 6369 S 】となっている。
ほんのちょっと遊んだだけで初期の所持金の三倍とは何の冗談だろうか。
「ナンデナカマフヲヤスンダー?」
「ん?ああ、畑もどんどん拡張していきたいし、もっと他のこともしたいしね。あとは俺の護衛も兼ねてみんなが外に遊びに行けるようにって思ってさ。ほら、人数がいればローテーション組めるだろう?」
「オオ、ソッカー!オイラモゴシュジンサマミタイニタタカイタイゾー!」
「あたしも、ごしゅじんさまとおでかけしたいですっ」
双子が拳を握って目をキラキラさせる。
ウカノミタマも感心したようにうんうんと頷いているが、ウカノミタマよ、言葉にはしていないが増員の思いついたのは、九郎がウカノミタマとの畑仕事に懲りたからだ。許せ。
「でだ、朝食を済ませたら早速召喚に入りたいのだが、やり方を忘れてしまった。みんなは知っているか?」
「わたしは存知ません。お役に立てず申し訳ない」
「あたしもです。ごめんなさい」
「オイラモー」
「ふむ」
三人が申し訳なさそうに眉ハの字にして寄せる。
そこは忘れた九郎が悪いので、九郎は気にしないでと逆に謝った。
「じゃあ呼々さんに訊こうかな。……呼々さーん」
天上を見上げて呼々を呼ぶ。
本当はオプションからヘルプに入って見ることができるのだが、九郎はヘルプ=呼々と思い込んでいた。
二度、三度呼々に呼びかけるとリビングの入り口に光りの粒が湧き出し、それが収束するとカジュアルな格好をした私服姿の呼々がイスから腰を上げたような変な体勢で現れた。
「――ッ!?ン、ンムグッ!?(な、なんで!?)」
また、その頬はパンパンに膨らんで口は咀嚼中の何かが出てこないように押さえられている。
リスのようでちょっと可愛いなどと九郎は思ったが、相手はうら若き乙女(すでにウン百歳を超えているが)なので言葉にはしない。
「あーー、お食事中でしたか、すいません」
「モ、モンゴォーファマ?(げ、ゲンクロウ様?)」
九郎が頬を掻いて苦笑する。
それに対して呼々はぺこぺこと頭を下げながら、ちょっと待ってとジェスチャーで返した。
(どうして呼び出しに応えてしまっているの?私はまだ応答ボタン押してなかったのに)
出勤後、ちょっと遅めの朝食をとっていたところに呼び出しが入り、呼々は慌てて目の前の料理を頬張った。
スタッフは自室に居ようと仕事場に居ようと、担当のプレイヤーから呼び出しがあればすぐに対応しなければならない。このとき、スタッフの目の前には呼び出しボタンなるものが出現するのだが、呼々は咀嚼中であったためにまだそのボタンを押してはいなかった。
にも関わらず呼々は何故か九郎の前に出現させられ、その醜態を晒すこととなったのはどうしてか?
これも九郎の不幸体質の影響?否、何故か、誰がやったかなんて簡単すぎる問題だろう。
スタッフの権限を無視してこんなことができる者は数少ない。
(こんな悪戯をするのはオモイカネ様ですね!!)
高速で口の中の物を咀嚼した呼々が飲み下すと同時に天上をキッと睨みつける。
きっと先日の雑巾アタックの仕返しだ。
(あとで高皇産霊神様に言いつけてお仕置きしてもらいますからね!)
タカミムスビノカミは格の高い創造の神でオモイカネの父だ。普段は温厚だがキレると死ぬほど痛い目に遭わされる。邪心があったら問答無用・回避不能で死んでしまう矢を射返された天若日子みたいに。
ちなみにゲンクロウという特異な存在が居ることは、すでにタカミムスビも把握しており、息子がやたら気に入っているのも知っている。それに関してタカミムスビが『息子が調子に乗って何かやらかす前に一度釘をさしておくべきか』と漏らしていたのを呼々は知っていた。
そんなわけでこの数時間後、オモイカネは高天原中をホーミング機能付きの矢に追い回され、一週間ほどクッション無しではイスに腰掛けることもできなくなるのだが、まあ、そのときの話は割愛しよう。
「ごほんっ。お、お待たせしましたゲンクロウ様。お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません。ご用件は何でしょうか」
落ち着きを取り戻した呼々の衣装が咳払い一つで巫女服へと変わる。
呼々はできる女を装った。
唇の端には“お弁当”が付いてるので可愛らしいことこの上ないのだが。
九郎は笑いが漏れそうになるのを押さえ込みながら、自分の唇の端を指で叩いて返した。
「召喚についての手順や注意事項などあったら教えてほしいのですが」
「え、なに――はぅっ!?…………しょ、承知いたしました」
呼々が耳まで真っ赤になりながら身を縮める。
お弁当は一瞬で呼々の口の中へと消えていった。
「こ、こちらへ」
どうやら召喚は別室でするようだ。
呼々が先行し、地下室へと降りる階段がある方へと進んでいく。
とぼとぼと歩く呼々の背中は小さく丸められていた。
その後ろをついて行く九郎は、結局その姿に笑いを堪えきれず、呼々に睨まれてしまうのだった。
◇◆◇◆
――プレイヤーホーム:地下室――
そこは部屋というよりも生き物の心臓部のようだった。
脈動する赤い光りの筋が乳白色の部屋中を這い、その中央にある繭へと集まっている。
繭は床と天井を繋ぎ、トクントクンと脈打っている。それはまるで心臓だ。心臓でなければ中に生き物が入っているとしか思えない。
九郎がその部屋の異様に呆けていると、呼々が九郎の胸中を見透かしたかのように答えをくれた。
「アレが【神核】です」
「コレが【神核】か。俺たちプレイヤーが死守しなければならない重要アイテム」
ゲーム内ではもう四日目だが九郎が神核を見たのは初めてだ。
「はい。神核はプレイヤーの行動によって自動的に成長し、力を溜めていきます。成長すると【領地】にプラスの補正がかかったり、機能や施設が増えたりしますよ。まあ、当面はプレイヤー側でできることはそんなにありませんから、気にせず自由にプレイしていただけば良いでしょう。なお、ご存知の通りこの神核が他のプレイヤーに奪われたり破壊されるとゲームオーバーになります」
「“奪う”と“破壊する”では違いがあるんですか?」
「ええ。神核は切り取って自分のホームまで持ち帰るか、この場所を長時間占領して神核の所有者を書き換える必要があります。破壊することでも勝利となり、その場合はプレイヤーに大量の経験値が入りますが、わたくし個人はオススメしません」
「ほう、それは何故ですか?」
「それはまたそのときにでも」
お楽しみです、と呼々は微笑む。
九郎も微笑み返して頷いた。
「では、召喚に入りましょう。この部屋に入るとステータスメニューに召喚の項目が現れます。そこを選んでいただくか、口頭で『英雄召喚』と言っていただけば【英雄召喚器】の種類を選ぶ項目が現れ、決定すると神核から召喚器が出現します」
呼々が神核に近寄ってポンポンと叩く。
神核はそれに合わせて赤い光りを明滅させる。
「あ、やっぱり召喚器にも種類があるんですか?」
「はい。今は一種類ですが神核の成長に合わせて増えたり、特殊なクエストをこなしたり、あとはたまにイベントに合わせて別の専用器が出現します。また、プレイヤーが集まる街にも専用の召喚器があって、そちらでは魂石だけでなくソウルや特殊アイテムなどで回せるものもありますよ。ただし、一回の使用料がデタラメですが」
そこには以前呼々から聞いたボーナスポイントで回せるものもあるらしい。当然出てくるモノは良いモノだが、ソウルで回せる召喚器などは最低でも一回五万ソウルのものからしか無いと聞いて、九郎はどうも回す気になれなかった。
「ここで召喚した仲間は最初石版の形で出てきます。具現化はサポートアイテムの【携帯召喚陣】を持っていない限り、プレイヤーホームで具現化を行うことになりますのでご注意ください。なお、具現化にはどのレアリティでも一体500ソウル必要です」
(金を取るのか)
九郎は苦笑し、頬を掻く。
「ここでは強化素材や余ったキャラなどを掛け合わせて経験値を増やしたり能力の底上げをする【強化合成】や、通常のレベルアップではできない特殊な進化や転生もできますが、それらの機能を利用するにはカード状態に戻す必要があります。また、低レアリティのキャラは進化や転生ができない者もいますからその点、お気をつけください。
なお、現在召喚している仲間もこの場でならカードに戻せますので、伸び悩んだり仲間が余っているときは積極的に合成を行ってみると良いでしょう。ただし、合成にもソウルが使用枚数×1000ソウル必要ですが」
「結構かかるな。ソウルは何かと入り用ですね」
「そうですね。ですからほいほい後先考えず使うと痛い目を見ます」
どんな世界でもやはり堅実で、節制し生きるというのが尊いようだ。
「最後に、獲得した仲間は図鑑に自動で登録されます。一定条件ごとにプレゼントが貰えますからお楽しみにといったところです」
「モンスターを仲間にしても登録とか強化とかできるんですか?」
「仲間にしたモンスターに関しても通常の仲間同様の条件で強化・進化・転生は可能です。ただ、図鑑登録に関しては転生できる者のみとなり、基本は【討伐記録】にしか載りません」
「あー、例えば一本だたらとかファウヌスとかがそんなのですか?」
「……肯定はできかねますが、そんな感じだと思っていただければ良いかと」
呼々が困ったようにして微笑む。
それもまたゲームの楽しみということだろう。
一応答えは貰ったようなものなので、九郎はなるほどと頷いた。
一本だたら、もしくはダイダラボッチは鍛冶・製鉄の神である天目一箇神と、ファウヌスは牧神・パンと同一視される。
そこから考えると妖怪や怪物が転生するというのが神格を得ることなのではないだろうかと九郎は考えたのだ。つまり、転生のできるモンスターは恐らく神の姿を取り戻すという形の変化になるのだろう。
そして、そう考えると、他の英雄たちに関しては“○○と同一視される”という話が幾つもあることから転生はイコール“別の神の格を得ること”となり、例えば日本のオオクニヌシが同一視されるヒンドゥー教最高神の一柱である破壊神・シヴァへと変わったりする可能性もあるわけだ。
国造り、もしくは医療の神などと崇められるオオクニヌシが転生した途端『第三の目ファイヤー!』とか言ってそこら中を火の海に変えたらなんて思うと、なんとも笑えない話である。
焦土と化した大地を背に『アレは極火炎魔法ではない。ただの火魔法だ』なんて言われたらどうしよう、と九郎は今から不安に思っていた。
「では、一通り説明も終わりましたし、召喚を始めましょうか」
「そうですね。えっと……『英雄召喚』」
九郎が召喚器の選択画面を呼び出す。
すると薄い緑の板が現れて、その中に【ノーマル:英雄召喚器】という項目が浮かんだ。
他に種類は無いのでそれを選ぶ。
すると、ウィンドウに召喚器の簡単な説明と目玉のキャラの絵が現れる。
どうやら日本武尊も神格化されているようだ。
白い歯の輝くいけすかな……イケメンである。
他にも何体か表示されては流れていくが、レア度の高いキャラはほとんどが元・人間であった。
ノーマルだからだろう、レア度も【達人】止まりで【勇者】や【英雄・女傑】が入っていないようだ。
九郎が疑問に思い、ゲーム開始時の召喚器とは違うのかと呼々に訊ねると、肯定される。
最初だけは制限の無い抽選で、ガチンコで運による有利不利が出るようだ。
なお、召喚器にて各プレイヤーが獲得キャラの種類は、各自所属するエリアに関連するキャラだけとなっているが、街で回す召喚器や、クエストやイベントにより出現する特殊な召喚器はこれには当てはまらない。
《 ノーマル : 英雄召喚器 でよろしいですか? OK / キャンセル 》
画面の最終確認でOKを選ぶ。
するとウィンドウが閉じて、呼々の触れている神核からにゅるっといった感じで石造りの懐かしい筐体が九郎の前に飛び出して来る。
そこで再び緑のウィンドウが現れて音声が流れた。
《 お好みの魂石を投入してください 》
画面には《 銅 : 5 》と表示され、タッチできるように浮き出ている。
「一度タッチすると枚数の選択ができます。上下にスクロールして選んでください。複数種類を一度に選んで抽選することもできますが、一度の召喚では各種合計十枚までです」
「了解です」
呼々の説明に九郎は二枚を選択。
ウィンドウ下部に現れた決定ボタンを選んで最終確認もOK。
すると九郎の目の前に銅の魂石が二枚現れて召喚器の投入口に吸い込まれ、すぐさま抽選が始まる。
「さて、何がでるかなー」
銅が二枚なのであまり期待はできないが、戦い向きで【優秀】以上が出てくれれば有り難いところだ。
「戦力が充実したらまたあの森に赴いてリベンジマッチといきたいな」
――が、しかし、そこは九郎である。
ガリガリッガリガリッと硬い音を立ててハンドルが回り、召喚器の取り出し口から光りとともに出てきたのはなんと二枚ともにレア度【平凡】の強化素材のカード。効果は筋力を少し上げてくれるそうだ。
「……いらない」
強化素材はどうもキャラごとに使用限界数や使用許可レアリティがあるらしい。
【平凡】な強化素材など使う機会はそう多くは無いだろう。
しかも今欲しいのは仲間である。
「も、もう二枚」
そう言って九郎はまた銅の魂石を二枚選択。投入してカードを引く。
――が、
「くそう。また素材かっ」
再び【平凡】の強化素材。
今度は速さと器用さだ。
九郎は頭を抱える。
こういうのには慣れっこだが、だとしてもここで『お、今度は違う種類だ。やったぜ』などと言える度量は、九郎には無い。
(日本エリアの召喚器は他のエリアよりもキャラの種類も数も豊富だからキャラ出現率高めなはずなのに素材ばかりとは……。逆に運が良いのではないかと思えるヒキですね)
呼々が苦笑いで首を傾げると、九郎は自棄になって最後の一枚を選択する。
「ええいっ、神よ!」
最後は神へと祈りつつOKを選択。
だが残念、近頃の神は空気が読める。
《 おめでとう! 【 強化素材 : 体力 】 を手に入れました! 》
「そう来ると思ったわ、ちきゅしょー!」
手にしたカードを床に叩きつけると、九郎は言葉を噛むのも気にせずに、力なく膝から折れて床を叩いた。
残念な結果だが、神様的にはドッカンドッカンである。
「えっと、今はじっくりと身の回りから充実させていきましょう。ね、ゲンクロウ様?」
「……はい」
呼々のフォローがむしろ悲しい。
九郎は何とか立ち上がると、呼々の後ろをとぼとぼと追って地下室を後にした。
その後、リビングに戻った九郎は新しい仲間の装備に使うはずだったソウルで初心者用の簡易鍛冶セット(5000S+素材1000S)を買い、投げ捨ててきた剣の代わりを作るため、一日を練習に費やすのだった。
ウカノミタマは後にこう語る。
あの日、裏庭から響いてきた金槌の音はどこか悲しげだった……と。
シヴァ:大黒天。ヴェーダ神話の暴風雨神ルドラの別名。オオクニヌシと同一視される。すんごい危険なかた。なかでも有名な力?のひとつ、第三の目は、作中でメラ○ーマだの言っていますが、どちらかといえば超高威力のベギラ○ンです。
開眼イコール焼死確定。あっちの神様はなんであんなに危ないの?
天目一箇・牧神パン:どちらもよく妖怪や怪物と同一視されますね。パンは特に多いのではないでしょうか?なお、灼眼のあの子のパートナーとは違います。個人的に灼眼の中の人と外のあの子は好きです(違)誰とは言いませんが。
タカミムスビノカミ:オモイカネのお父様。キレたら矢を放ってきます。作中ではホーミング機能付き。でも、邪心があったらって条件付きはまだやさしいかもしれませんね。




