パパのライバル。
十分で仕上げた。カッとなって書いた。反省はしてない。
パパがある日、滅多にしてくれない昔話をしてくれた。
「パパは小さい頃な、地元のガキ大将だったんだ」
誇らしげに言うパパは、今はお腹が出ていてガキ大将には見えないけれど、私は素直に頷いた。
「ケンカにも負けた事が無かったんだ」
お腹は出ているけれど顔の彫りが深いパパは、確かにちょっと強そうだ。
「パパは王様気取りだったよ。なんせ誰も逆らえないんだからね」
そう自信ありげに言うと、パパは太い眉毛を下げて「でも」とつぶやいた。
「ある日、同い年の子が近所へ越して来たんだ。
……そいつはな、華奢で色白なのに、パパよりずっとずっと強かった。何度勝負を挑んでも、一回も勝てなかったんだ」
パパの悲しげな口調で語られる話に、私の頭の中でケンカに強いクールなイケメン像が作られる。パパは一応、柔道のプロだ。そんなパパに勝つなんて、一体どんな人なんだろう。
「どんな人だったの、ねえねえ!」
パパは優しげに微笑むと、私の頭を撫でた。
「……君のお母さんだよ」
ちょうどその時お出かけから帰ってきたママに、私はしばらく目を合わせられなかった。