愛を語るには陳腐すぎるだろうか
何度も何度も書き直したブツをみて今にも心が折れそうだ。
やっぱりもう一度見返してみたほうがいいかもしれない。
下駄箱の前で最後の悪あがきをする自分に気付き、ため息がこぼれた。
そもそも読み返してしまったらこんなものを下駄箱に入れれなくなるのは目に見えている。
大きく深呼吸をし、気持ちをできるだけ落ち着かせてからブツを下駄箱の中に優しく入れた。
これが俺の人生初のラブレターという代物の経緯だ。
現在の時間は、7時過ぎだった。携帯で時間を確認し、自分の中にリアルに刻み付けてから自分の下駄箱に向かった。
汚いコンバースを脱ぎ、室内用に買った靴に履き替える。
外はジリジリと憎たらしく居座った夏も、重い腰を上げだした、そんな今日この頃。
少し冷えるな。
そんなことを思ってこの高まった妙なテンションを抑え付けた。
学校が騒がしくなるまでまだ2時間弱もある。教室に直行してもいいがどうせすることもない。
考えた挙句、図書館で時間をつぶすことにした。
図書館は彼女の好きな場所だ。
そんなことで心が穏やかになるのを感じる。
本当に馬鹿だな、なんて思いながら図書館のドアに手をかけた。
「……え?」
ドンドン、ドンドン。
一向に開こうとしないドア、立ち尽くす俺。
「ここは開かずの間か? ……アホらし。何処の学校に朝の7時から図書館開いてんだよ。はぁ、まだ麻痺してんな」
ため息と共に自分の馬鹿さを吐き捨て、潔く教室に向かった。
驚くことに教室のドアは開いていた。放課後ドアは施錠されるのに、こんな朝早くから開ているなんて、警備員も大変なことで、と心の中で同情する。
勢いよくドアを開けると、まず視界に入ったのはなんと愛すべき彼女だった。
皆さん、お気づきかと思うがこのときの俺は焦りと混乱とわけのわからない気持ちでおかしくなったのは言うまでも無い。
確かに、下駄箱には靴があった。
…そう、靴はあったのだ。
勢い良く開けたドアが裏目に出たのか、ふんわりと彼女が本から視線をこちらに向けられた。
「お、おはよう! 早いね」
声は上擦っていたし、挙動不審で情けなさが浮き彫りになった。
「…おはよう。杉森君も早いね。何か用事?」
「あ、うーん」
そう言ってついさっきしてきたことを思い浮かべた。
て言うか、今直接言うべきじゃないか!? …いや、そんな勇気これっぽっちもないけど…。
でも、アレを見たら俺がそのために今日早く来たってばれるわけだし。
なんか物凄くダサい!
俺、ダサい!!
「杉森君?」
キョトンとした顔で俺の顔を見る彼女が愛おしい。
「あ、えっと。」
言ってしまおうか。