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始まりのデュエット(4)

火を吐くドラゴンに全く躊躇する事なく走り込むフレスさん。どうやら、何方か彼に命の大切さを教えて差し上げた方が宜しいようです。


「天地を裂く雷の力。俺の剣に宿ってその力を示せ!」


付加魔法。フレスさんの剣に雷の力が宿り黄色く輝き出します。只の剣でドラゴンの固い皮膚をボコ殴るほど馬鹿では無いことが分かりホッとしました。


「天地を裂く雷の力よ。私の矢に宿って力を貸して下さい」


真似した訳では無いですよ。ドラゴンには雷魔法が一番聞くそうです。そして、私が知ってる雷魔法の呪文はこの一つだけなのです。私は音楽家ですからね。


懐に飛び込もうとするフレスさんにそれを前足で防ごうとするドラゴン。フレスさん、器用に交わしますね。案外、ドラゴンを倒そうとするだけの実力があるのかも知れません。


そんなフレスさんの軽快なステップに業を煮やしたドラゴン。フレスさんを足元から焼き払おうを口を開きます。私はこれを待っていました。スタッカートな音と共に放たれた矢は、見事にドラゴンの口の中へ届きました。さすがは私です。


「やるじゃねぇの」


口の中のビリビリとくる調べに激しく踊り出すドラゴン。フレスさんがチラッと私を見ます。

その一拍ほどの出来事でした。

豪快な風切り音。先程よりワンテンポ足の動きが遅く感じるフレスさん。その身体を強靭なドラゴンの尾が捉えたのです。


私の真横を通り過ぎ、後方の地面に力無く叩き付けられるフレスさん。


その光景に私の頭の中からは音が消えます。聞こえるのは痛みに耐えながら近付いて来る重厚な絶望の足音。


前衛のフレスさんが居ない。私はここで終わるのです。死ぬのです。


怖いです。泣きたいです。


でも、その時、私には、あの時の音色が聞こえたのです。あの人の奏でる優しい声音。


“貴女がどんなに独りでどんなに怖くても、音は貴女の側に居ます。貴女が楽しもうとすれば、それが音楽になるのです”



私の雷を付加した矢がまだ利いているのか、動きが鈍い観客。聞かせて上げましょう私が師匠から教わった音楽を!


矢筒と共に背中に抱えた私の宝、リュートを手に持つ。奏でるは私がフレスさんと出会った時に弾いていた曲。歌うは、神の怒りに触れた冒険者の伝承の物語。


大海を船で巡ると、五人の男

世界を回り、世界を見た

最後に男達が目指すのは、神が住まう神の島。眼に映った神の島。

突如、吹かれる神の風。神の島へは来させんと風の神が呼ぶ嵐。

帆は折られ、船は引き裂かれ、海の底。男達は、神の島を見ずに、海の底。

男達は海の底で嘆く。あぁ、神の島を見たかった。



奇跡的に、いえ、私ならば当然の事ですが、一音も外さずに完奏しました。集中するために瞑っていた瞼を開けます。


今、歌った物語に出てくる船。神の風に帆を折られ、船体をズタズタに引き裂かれ船。それを表すように首を折られ、身体をズタズタに切り裂かれて倒れているドラゴン。


私の足からは力が抜けて、膝、お尻と二拍子で地面にへたり込みます。助かった安堵感が全身を巡ります。


と、同時にボロ雑巾のようなドラゴン。このズタズタなドラゴンの皮を換金は出来そうにありません。死にそうな目にあってこれでは割に合いません。また、涙腺が弛みそうです。


「お前、呪文歌(スペルソング)を使えたのか!」


相変わらずのフォルティシモな声と大きな影が私を背後から覆います。不味いです。この歌を含む幾つかの不思議な力を持つ歌は、師匠と人前では決して歌わないと約束していたのです。フレスさんが気絶しているものと思っていました。見た目通り頑強なのですね。


「何の事でしょうか?」


お惚け半分、スペルソングなどと言う単語を聞いた事が無いのが半分です。おそらく、スペルソングとは、師匠から教わった先程のような曲の事何でしょうけど。


「…まぁ、良いか。とにかく疲れたろ、帰ろうぜ。今日も飯を奢ってやるぜ」


フフフ、ここまでやらせたのです。そんなの当然に決まっているじゃないですか。ドラゴンの皮で損した分は、貴方の財布で取り戻させて頂きますよ。ところでです。


「あの、そのですね。私としたことが腰が抜けて立てないので、少し休みま…ってぇ~!」


無断で私の身体を軽々持ちあげるフレスさん。その私の抱えかたはあのお姫様抱っこ、では無くて、樽担ぎです。花も恥じらう乙女を樽担ぎですよ!


「下ろして下さい!自分で歩けますから!」


「遠慮すんなって、街まで運んでやるよ」


こんな姿で一目に付く所まで運ばれる何て、絶対にごめんです!その顔は絶対に私の恥じらいを分かっていて、やってますよね?最低です!

この話で、始まりのデュエットは終了。こんな感じのレミファのお話です。



次話は間奏が入ります。


天見酒は感想、意見お待ちしております。どうぞ宜しくお願いします。

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