山賊のトラムポルカ(2)
「いたっ!ちょっと小突かないで、もっと丁寧に扱って下さい!」
丸腰ですら帯剣した男に堂々と文句を言える中々図太い性格。フレスの兄さんの言う通り。レミ姉さん、ホント、オトコマエ
。
「うるせぇ、さっさと入れ!」
「せめて私のリュートを返して下さいよ!」
まぁ、その十八番のリュートを奪われたスペルシンガーに勝ちは無いかな。案外、と言うよりもそっちの方が熟達してる弓矢も奪われちゃってるしさ。
「坊主も早く入れ」
「はいはい」
まぁ、僕も得物を捕られちゃった所存……頼りにならないと、レミ姉ばかりを責められない……と。
「何だぁ?男ばかりかあ?」
厳つい男達の間を縫って更に厳つい男。頬の傷とか眼帯とかさぁ~。マジで親玉って感じのだっさい男。
「まぁ、男にしては“二人”とも綺麗な顔してやがるし、“ソッチ”の気がある馬鹿貴族には売れるかなぁ?」
「なっ!人身売買は犯罪ですよ?」
うん、レミ姉の言う通りだけど。明らかに野盗の頭領さんっぽいこの人に犯罪を説いても意味が無いのも世の理。強盗殺人を犯した奴に立ちションを説いても無駄。
「特にそっちの小さい方は、男受けしやすそうな顔してるわな?」
お褒めに預かりましてどうも。男としては嬉しくはないけど。
「くぅ!貴方がたは本当に腐ってますね……私は何処からどうみても可憐な……」
おっと、レミ姉?そんな待ったを掛けたい僕の、レミ姉のお馬鹿さ加減を制したのは馬鹿の大将。
「はいはい、黙っとけ坊主。女なら皆で相手をしてやるがよ?俺たちは男にゃあ、興味ねぇんだよ。せめて男にも優しい旦那様にたどり着ける事を期待しときな?運が良けりゃあ玉の輿だぜえ!」
うわぉ……想像しただけで吐き気を催す展開だね?この場で女宣言を下す事の意味を理解し、レミ姉の方が頭が少し勝ってる底脳共の笑い声、マジで吐き気がするわ。
「おい!“血色”の新入り、こいつら、見張っとけ!」
洞に響くは赤毛と、流血沙汰気質を象徴とするシャット人への侮蔑文句。
「了解致しました。私がこのお子様達を見張っておきますので、どうぞ、皆様はお休み下さい」
まぁ、そのあからさまなシャット人は、シャット人特性格と言われる傍若無人、厚顔無恥な性格とはかけ離れて随分と離れていて。
容姿共にあからさまなシャット人の純血統なフレスの兄さんと画を期して紳士的でなおも、同じ闘争本能を身に宿すシャット人。
「見張り番さん。言っておきますがフレスさんは決して貴方には負けてませんよ。きっと貴方を打ち破りますから!」
一人で僕たちのような人間達を閉じ込める洞牢に残った男。レミ姉が強がるよりも、あの僕らを見定めるように手を抜いていた曲者な男、フレス兄さんが本気を出した時よりも厄介な男。