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背信者に捧ぐゴスペルソング(7)


頭の中にガンガンと荘厳なメロディーが鳴り響いてます。私のゆったりペースを取り戻せば、考える事が沢山です。


あの憧れの存在。シラク司教が……。


しかも、あの師匠に窃盗容疑が掛かったのです。私の持っているリュートが盗難品。しかも、何やら高価値なものらしいです。スペルソングはこのリュートだから奏でられるもの。先生から授かった時から、只“物”じゃないとは思ってましたけれど。まさか、一流音楽家になる前に教会の御尋ね者に身をやつしてしまうとは……。


「ふい~~」


「レミ姉、何か風呂上がりのおっさんみたいだよ」


乙女の艶やかで悩ましき桃色吐息に、どういう比喩をするのですか、クソガキ……ではなくて、少々礼儀を欠く少年よ。

「貴方はお家に帰らずにこんな所に居て宜しいのですか?」


人目を避けた森の中を掻き分け先を行くフレスさん。ラスルルからは明らかに遠ざかってますが何故か付いて来る少年。


「僕に家なんか無いから良いじゃん。あっ、僕、シャン=マルール。ヨロシクね」


「レミファ=アニアです。ところでシャン君、まさか、一緒に来る気では無いですよね?」


「ところでレミ姉。さっき歌った凄い歌ってさ、闇神プレアスが月神ルーファスに恋したって話だったよね」


思いっきり話を逸らしますね。それで逸らしたつもりなれば大人を嘗めてるとしか思えませんね。


「そうですが、それよりも……」


「レミ姉って凄いよね。僕って、音楽はあまり詳しく無いけどさ、レミ姉が歌ってる姿って、正に月神ルーファスの権現って感じだったよ」


……ふっ、年相応、お子様らしい表現ですね。


まぁ、月の女神ルーファスは美性と音楽を司る神とは謂われてますし、私自身、ルーファスの生まれ代わりではないかと常々思ってましたが。


それにしても中々可愛い事を素直に言うではありませんか。


「……ねぇ、お姉さん、ついて行っちゃあ駄目?」


クッ、何ですか、その寂しそうな眼は!こんなそんな態とらしいを感じさせないまるっきり、純粋を装うおねだりが出来るとは……。騙されませんよ。しかし、この子はリサイタルの客引きに使えるかもしれません。


「お願い……お姉さん」


あっ、コラ、弱々し気に袖を引くんじゃありません。シャン君、何処でそんな女顔負けの色気を身に付けたのですか?


「……フレスさん」


私の一存では決めかねますので旅のお財布と相談です。


「レミが良いなら、良いんじゃね」


シャン君を一瞥だけして、先を急ぐフレスさん。

フム、私のお財布が快諾してくれるのならば、従者をもう一人くらい雇っても良いかもしれません。そうと決まれば……。


「ちょっ!レミ姉!」


背は私と同じ位、しかして、中々程よき筋肉が付きながらもしなやかさ保つ。声代わり前のボーイズソプラノ。蒼い瞳に整った白顔は愛嬌も携えております。フムフム、私の小間使いに最適かもしれません。


「合格ですね」


「良いから離してよ!」


あれ、耳を朱に染めちゃって。お姉さまの抱擁で照れちゃいましたか?生意気な口に比べて意外に初なのですね?


私から解放されるや否や、シャン君は早足でフレスさんの後を追っていきます。そのソワソワな背中に、してやったりのニヤニヤです。悪戯に追い掛けて、顔を覗いて差し上げましょう。


「……ねぇ、レミ姉はさ、そのリュートに刻まれてる紋の意味知ってる?」


つまらない事に平静な顔に戻り、真面目に聞かれてしまいました。


「いえ知りません。これは師から頂いたものなので」

「……そっか。じゃあ、良いや」


ニカッと笑ったシャン君。いや、そんな話の切られ方をすると私が気になるんですが……。


「おーい、置いてくぞ!」


大分前を行っていたフレスさんの声に走り出したシャン君。


私も走り出す前に……このリュート唯一の装飾、シンプルに彫り込まれた三日月。これが一体何だと言うのでしょうか?

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