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隣の席の朝倉さんは、どうやら異世界帰りの聖女様。  作者: あざね
オープニング

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2/4

1.化学準備室での朝倉さん。






「日直って、本当に面倒だよね。朝倉さん」

「それは、そうですね。でも必要なこと、ですから」




 次の授業は化学の実験だった。

 僕と朝倉さんは偶然にも日直だったので、授業前に諸々の資料、実験に使うものの準備を手伝うことになっている。要するに先生の小間使いなのだけど、さすがは朝倉さん。

 少しだけ面倒くさそうにしたものの、役割は役割と考えて切り替えていた。

 そんな彼女の大人なところにほんの少しの憧れを抱きつつ、僕は化学実験室のドアを開く。するとそこには、何に使うか分からない薬品の入ったビンに、顕微鏡などの道具が所狭しと。



「あれ、先生まだなのか……?」

「そのようですね?」



 だけど、肝心の化学担任の姿がなかった。

 僕たちは互いに顔を見合わせて、小首を傾げながらも足を踏み入れる。そしてテーブルの上に置かれる一枚の紙を発見した。

 そこには、次の授業に必要な薬品の名前が書いてある。

 同時に先生が会議のため、準備を任せる旨も……。



「いいのか、そんな適当に……」



 それを読んだ僕は、思わず口に出してそうツッコミを入れてしまった。

 だが、あまり考え込んできては間に合わない。



「仕方ないから、さっさと準備しちゃおうか」

「そうですね。では、私は――」



 そう思った僕が朝倉さんに確認すると、彼女も同じ意見だったらしい。

 しっかりと頷いて、テキパキと薬品を準備し始めた。

 僕は感心しつつビンを手にして――。



「あ、しまっ――!」



 ある薬品をこぼし、軽く肌に付着させてしまった。

 それが何かは分からないが、鼻にツンとくる臭いがする。おおよそ人体に有益なものではないだろうし、ひとまず水で洗い流そうと水道の蛇口を捻ろうとした。

 すると、その時に気付く。



「うわ、なんだこれ……!?」



 水で洗い流すと付着した箇所の肌が、水膨れのようになっていた。

 痒みと熱感からして、このまま放置してはいけないというのは直感的に分かる。僕は周囲に助けを求めるように視線を泳がせるが、当然そこにいるのは朝倉さんだけ。

 しかし一人で考えるより、万倍もマシだ。

 そう思って、



「朝倉さん、これ……どうしよう?」

「……えっ!?」



 彼女に患部を見せると、驚いたように目を丸くされる。

 それもそのはず。薬品がかかった箇所の様子は、みるみるうちに悪化していた。水ぶくれは大きくなるし、赤みがドンドンと広がっていく。

 僕はひとまず保健室に行こうと考えて、朝倉さんにそう伝え――。



「待っていてください!」

「……へ?」



 ――ようとした、その瞬間だった。

 まるで何もかもを熟知しているかのように、朝倉さんが薬品の調合を始めたのは。手慣れた様子で一つの液体を完成させた彼女は、一つ息をついてから言った。




「これを一息に呑んでください」

「………………こ、これを?」




 差し出されたのは、浅黒い謎の薬品。

 どう見ても人体にとって有害な色合いをしているそれは、時々にゴポゴポと泡立っているのが分かった。僕は手の熱感が酷くなるのを理解しつつ、朝倉さんの微笑みを無碍にもできない。

 しかし、これは呑んでも平気なのか。

 そう考えていると、彼女はこちらを安心させるように言うのだった。




「大丈夫ですよ。これを呑めば、たいがいの傷はふさがりますから」




 ――いや、それなんてポーション?

 僕は朝倉さんの言葉に思わずツッコミを入れそうになりながらも、しかし覚悟を決めるしかないと理解した。そして、せめてもの抵抗にと、鼻をつまんで一気に薬品を煽るのだ。

 すると、



「お、おおおおおお!?」



 信じられないことが起こった。

 身体の内側から、いままで感じたことのない気力が満ちてくる。

 それと同時、薬品によってできた火傷のようなものは、あっという間に治ってしまった。まさに魔法のような出来事に、僕が呆けていると朝倉さんは安堵したように言う。




「ふぅ……『あちら』の知識が、役に立ちました」

「(『あちら』って、どこですか……?)」




 あえて口にはしなかった。

 だが、僕の中での朝倉さんは普通からさらにかけ離れたのだった。



 


ここまで読んでくださってありがとうございます。

朝倉さんの物語、楽しんでいただけていたら嬉しいです。

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