05:次も一緒にする、という前提
昼休みが重なる日が増えた。
どちらが言い出したわけでもない。
気づけば同じ時間に席を立って、
同じ方向へ歩いている。
混み合う食堂を避けて、
少し離れた定食屋に入る流れも、いつの間にか決まっていた。
「今日、並んでるね」
朝霧が店の前でそう言った。
それだけの確認だった。
別の店にするか、待つか。
選択肢はあったはずだが、
俺は並ぶ列の最後尾に立った。
「ここでいい」
それで十分だったらしい。
朝霧は頷いて、スマホをしまう。
次に何をするかを相談する気配はない。
店内は静かで、
会話をしなくても落ち着く。
料理が来るまでの時間、
俺は水を一口飲んで、
外の通りを眺めた。
「午後、忙しい?」
朝霧が聞いた。
忙しくはないが、空いているとも言い切れない。
少し考えてから答える。
「いつも通り」
「じゃあ、帰りも同じで」
予定の提案というより、
事実の確認に近い言い方だった。
俺は反射的に頷く。
食事を終えて店を出ると、
同僚が向かいから歩いてきた。
何気なくこちらを見て、
一瞬だけ目を留める。
「仲いいんだね」
それだけ言って通り過ぎていった。
数値を見たのかどうかは分からない。
どちらにしても、
説明する理由はなかった。
午後の仕事は滞りなく終わった。
帰り際、エレベーターの前で朝霧を待つ。
待っているという意識も、
もう薄れていた。
外に出ると、
風が少し強い。
朝霧が歩幅を合わせてくる。
「寒くない?」
「大丈夫」
会話は短い。
それでも、途切れても問題はなかった。
駅に着く前、
朝霧が立ち止まって、
ふと思い出したように言う。
「明日も、この時間でいいよね」
確認というより、
念押しでもない。
ただ、続きがあることを
当然のように置いただけだ。
「ああ」
それで話は終わった。
数値を確認する気にはならなかった。
今日の流れに、
不足は見当たらなかったからだ。




