04:一緒にいるのが普通になる
気づけば、帰り道が同じになっていた。
最初は偶然だったと思う。
仕事が終わる時間が近くて、
エレベーターに乗り合わせて、
そのまま並んで歩く。
それが何度か続いただけだ。
けれど、いつの間にか、
待つようになっていた。
相手の準備が終わるまで、
自然と足を止めるようになった。
「先、行ってていいよ」
朝霧は時々そう言う。
けれど、そのまま歩き出すことはない。
俺も、急ぐ理由はなかった。
駅までの道は特別じゃない。
コンビニがあって、
信号があって、
混む時間帯には少し歩きにくい。
それだけの道だ。
会話も、特別なものはない。
今日の仕事のこと。
帰ったら何をするか。
どれも、答えがなくても困らない話題だった。
途中、雨が降り出した。
本降りになるほどではないが、
傘がないと少し気になる程度。
俺は足を止めて、
コンビニの看板を見た。
「買う?」
俺が聞くと、
朝霧は首を振った。
「すぐ止みそう」
根拠はなさそうだったが、
不思議と納得できた。
そのまま歩く。
雨粒が、少しずつ服を濡らしていく。
信号の下で立ち止まったとき、
朝霧が少しだけ近づいた。
ぶつからない程度の距離。
意識しないと気づかないくらいの変化。
それでも、
数値は確認しなかった。
確認する理由が、
見当たらなかった。
雨は、駅に着く前に止んだ。
濡れた袖を見て、
朝霧が小さく笑った。
「ほらね」
それだけだった。
何かを証明する必要はないらしい。
改札の前で立ち止まる。
行き先は違う。
けれど、別れる流れは決まっている。
「また明日」
朝霧が先に言った。
予定の確認でも、
約束でもない。
ただの挨拶だ。
「ああ」
それで終わりだった。
振り返ることもなく、
それぞれのホームへ向かう。
帰りの電車で、
数値を確認する。
やはり、変わっていない。
それでも、
今日一日を振り返って、
足りないものは思いつかなかった。




