12:増えなかったまま
それからも、
生活は特に変わらなかった。
朝は目が覚めて、
コーヒーを淹れて、
電車に乗る。
仕事をして、
帰る。
変わったことがあるとすれば、
帰り道の選択肢が、
いつの間にか増えていたことくらいだ。
朝霧と帰る日もあれば、
そうじゃない日もある。
どちらの日も、
ちゃんと一日が終わる。
連絡は、
用事があるときだけ。
それでも、
間が空きすぎることはなかった。
数値は、
相変わらずだった。
増えもしないし、
減りもしない。
期待に応えるようでもなく、
失望させるようでもない。
最初は、
それを確認する癖が抜けなかった。
朝。
昼。
帰り道。
けれど、
いつの間にか、
確認する回数は減っていった。
見なくても、
困ることがなかったからだ。
ある日、
仕事終わりに合流した朝霧が言った。
「今日、ちょっと遠回りしよっか」
理由は聞かなかった。
聞く必要がないと、
自然に思えた。
川沿いを抜けて、
商店街を通って、
いつもより少しだけ遅く駅に着く。
それだけのことなのに、
その日は、
一日が長かった気がした。
帰宅してから、
何気なく数値を確認する。
変わっていない。
それを見て、
安心した自分がいた。
増えていないことが、
不安にならない。
むしろ、
変わらないことが、
今の距離にはちょうどいい。
数値を見て判断する必要は、
もうなかった。
増えなかったまま。
それでも、
ちゃんと一緒に帰っている。
それが、
今の答えだった。




