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第6話 創業家への大政奉還


 移り変わる時代にうまく対応していくには、2つの鉄則がある。

 ひとつは、成功に裏打ちされた過去と決別すること。

 これは清久が望んだことであり、宝田も形の上ではそれに(なら)っていた。創業者を含む12枚の肖像画が役員会議室から取り外されたのは宝田の決意と見ていい。

 もうひとつの鉄則は、例外を作らないこと。

 新しい体制で臨むはいいが、どこかに隠し部屋があってそこに過去に(まつ)わる種を保存してあったり有事の備えがあったりすると、変革の妨げになる。経営者がそれを知っていると、逃げ場をそこに求める。

 宝田が社長の座を退(しりぞ)きたいと申し出た背景には、この例外があった。

「私なりにクルマ屋から脱却しようと尽くしてきました。ですが、アウトサイダーの私ではもう無理です。トクダをまとめきれない」

 自分が託した後継者に、まさかアウトサイダーと言われるとは。さすがの清久も困惑した。

「まだ改革の途中じゃないか。君は本当によくやってくれている。こんなところで挫折しないでくれ。私は君の成功を信じているんだ」

 こんな励まししか出てこなかった。それは清久が作った例外に宝田が苦しんでいることを清久自身気づいていたからだろう。

「以前も申し上げましたが、トクダはカリスマ性が大黒柱です。どんな経営戦略よりもカリスマ性と創業家の存在が勝ります」

 清久はひとつため息をついた。

「また、そこの議論に戻るのか?」

 呆れ顔と奥の意思に違いがあることは本人だけでなく宝田にも読み取れた。清久の言葉に以前ほどの力はなかった。

「戻る?」

 宝田は清久の芝居がかった表情に疑問符で抗する。

「戻ることになるのでしょうか?」

 清久が呟く。

「トクダは徳田のものではない。そこに戻ってはいかん」

 宝田がついに例外に踏み込んだ。

「だったら、なぜ会長は稔さんにトランザを任せているのですか?」

「・・・」

 言葉なくも清久の表情が歪んでいた。

 トランザ・バイ・トクダ。

 トクダグループのディベロップメントカンパニー。次世代移動用モビリティの研究開発を手掛けている。

 そのトランザ社の副社長に、清久の長男徳田稔が就いている。実質、社長はお飾りで、稔がトランザ社を動かしていた。

 つまり、ここに創業家の種が植え込まれていたのである。

「繋ぎ役である私はここまでです。トクダに稔さんを、カリスマを戻してください!」

 宝田に残された最後の経営判断、それは創業家への大政奉還(たいせいほうかん)だった。


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