待ち合わせの話
ソラノ「でも極力人を頼ります。その方が間違いないから」
S © 「わかる」
K 氏 「それはそうですね、そんなんじゃ」
ソラノ「そうですよ。人の後ろついてく。その代わり人が迷っても怒りませんよ?」
K 氏 「怒らないってか怒れないだけでは」
ソラノ「そう、私もどうせ迷うから。優しく寛容になれる」
K 氏 「優しいってか自分が迷うから許せるだけでは」
ソラノ「でも文句絶対言いませんよ? 仕方ないよ! 気にしないで! って心から言える」
それでもまだ私のいい草が気に食わないらしく、 K 氏 は不満げだった。この感覚はわからないらしい。
K 氏 「でもそれ、待ち合わせ大変そうですよね。人に会う時どうするんですか?」
ソラノ「とりあえず駅の外出る」
S © 「外出たよここどこって言う」
K 氏 「うわ〜〜迷惑〜〜〜〜」
いやに実感のこもった言い方だなと思ったら、本人が説明してくれた。
K 氏 「いや俺前に友達と大きい駅で待ち合わせしたんですよ。待ち合わせここねって言って。そしたら友達、違う改札から出たっぽくて」
ソラノ「あぁ、改札わかんないのよくあるよね」
S © 「あるある」
K 氏 「ないよ……表示見ないんですか?」
ソラノ「あれば見るよ!」
S © 「でも変なとこにある時ある」
ソラノ「わかる! 大きい駅だとね!」
K 氏 「でも東と西……あ、なんでもないっす」
そういやコイツらわかんなかったな、と言う顔をされたけれど、実際わからないのでスルーした。
K 氏 「いやでも、外出ないでほしいんですよね。そしたらナビできるのに」
S © 「外出たほうがいいと思ってた」
K 氏 「いやーいる場所教えてもらえたら、案内しますって」
ソラノ「でもそれが理解できるなら迷わないんだよ?」
S © 「文なんかでわかるわけない」
K 氏 「ん〜〜終わりだ〜〜〜〜」
顔を覆う彼を労る言葉は出ない。
なぜなら住む世界が違うから。
ここには決定的な溝があった。
それどころか、Sちゃんなんかはさらに絶望に落とす言葉を投下した。
S © 「大体、どうやって指示だすんです?」
K 氏 「え? ここはこう曲がってー、そこで曲がってーみたいな」
S © 「そもそも2回曲がるじゃないですか。その時点でたどり着ける確率は1/4です」
K 氏 「‼︎ なるほど⁉︎ 左右盲の2択はサイコロ振るようなもんですもんね⁉︎」
S © 「それがね、曲がるたびに増えるんですよ……(にっこり)」
ソラノ「え? たどり着ける確率の方が下がってくってこと?」
K 氏 「地獄だ〜!!!!」
人は絶望の際に笑うのだとわかった。
みんな大爆笑だった。
結果は絶望的なのになー!
ソラノ「そっかぁ……それよりは私はマシだったってことなんだね」
K 氏 「やめてください。方向音痴同士の貶しあいは見苦しいですよ」
ソラノ「そこまでいってない」
K 氏 「そこで敵対しあってもいいことないですって! 諦めないで!」
ソラノ「なぜ敵対させようとする」
S © 「つまり駅から出た方がいいんですよ、まだ」
ソラノ「いやでもほんとに待ち合わせは困るよね。私はもう、外出た瞬間にここどこって写真送る。大きいとこはみんなわかってくれるから」
K 氏 「自分ができないこと理解してるだけえらい気がしてきました……」
慈悲の目が痛い。すごく生温かい。おかしい。同僚からこんな目を向けられること普通はないのではないかと思わざるをえなかった。
K氏の本エッセイ内で出てくる友達は全員違う人です。何人いるんだ。
我々はこれを隠キャと呼びません。
次回投稿は本日21:10を予定しています。次で終わりです。