土留色のポンチョ
今日も引きこもり気味の私です(-_-;)
今日の午前中で期末試験が終わり早く帰って来るはずの妹に買い物を頼んだら
「終わったらソッコーで“シー”行くからダメ!」と断られた。
そんな妹が学校へ行って、残された食器を洗い終えてからベッドの上でゴロゴロと時をやり過ごす。
「週中の買い物は量が半端だし、できれば行かずに済ませたかったのに……」と寝返りをうって、カーテンの隙間から外を眺める。
今朝から梅雨空が戻って来て外は昨日とは打って変わってどんよりしている。
ためしに窓を開けてみたら梅雨に蒸された草木の匂いが流れ込んで来て、それだけでもう挫けてしまう。
ああスーパーなんか行きたくない!表に出たくない!!
けど……お姉は仕事で外回りしている筈だし、妹は今頃、試験問題と闘っている。
「布団被ってちゃあバチ当たるよなあ~」
カタツムリかヤドカリの様に布団をしょって歩きたい気分だけど、実際にやったら重くてダルそうだ。
“その様”がいかに醜悪なのかにはまったく考えが及ばない私は、今度はマスクにレインポンチョで出掛けようと画策する。
そうすれば髪はひっつめのままでいいしメイクも目の周りだけで事足りる。
後は“もう洗濯する頃合いの”このピンクのジャージで自転車をすっ飛ばせばいいのだ!
自分を鼓舞し仕事で使っていた拡張設計の防水ビジネスリュックを背負って玄関まで辿り着いた。
ところがドアの内側にまで聞こえて来る雨音にまたまた凹む。
ここは気分を上げなきゃ!!
そういえば昔、お姉が“シー”で買った可愛い真っ赤なレインポンチョがあったはず!
“押入れ部屋”のクローゼットを覗くと“可愛いポンチョが持ち去られた後の”空のハンガーが少し傾き気味に掛かっていて、私は妹のポニーテールに鼻っ柱を嬲られた心地になる。
「まったく!あの子は……」
私は取り残されている土留色のレインポンチョをハンガーから外してクローゼットの扉を閉めた。
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雨の中、なるだけ心を無にして自転車を漕ぎ続けていたのに……
ショートカットを目論んで田んぼ脇の細道を選んだら白のワンボックスカーが向かって来た。
無理にすり抜けようとして泥ハネなど浴びたら災難にしかならないから、私はやむなく自転車を下りて車と時をやり過ごす。
田んぼの表面はすこしばかり緑がかった灰色で……それはすくすく伸びている苗の色か藻の色を映しているのだろう。
でも、畦道や苗のあちこちには不気味なピンク色をした塊が付着している。
「きっと危険な物に違いない!!」と調べてみると……これは80年代に侵入して来た“駆除対象の外来生物”ジャンボタニシの卵らしい。
見るからに毒々しくて怖気が走るが……幼い頃には見た記憶が無い。
「私はそんなに年寄りではないのに」と記憶をより強く遡ってみると忌まわしいシーンが蘇って来た。
幼い私は田んぼの畦道にしゃがみ、バシャバシャと水いじりしていたらヒルに襲われるという恐ろしい目に遭った。
大騒ぎの後、ようやくヒルを取ってもらったのに……また畦道で遊ぶと言う愚行を繰り返していると今度は足を滑らせ、グニョグニョに浮いているカエルの卵の中へダイブしてしまった。
ドブ臭い水と身も凍るグニョグニョがパンツにまで染みて……全身がおぞましさに包まれた私!
汚れた私!!
その愚かな幼さから必死に逃げて来たつもりなのに……
大人の階段を昇る度に私の身と心は汚れて行く。
今は酷く蒸し暑いはずなのに!!
土留色のレインポンチョの中で私は汚れ震えている。
握り締めている自転車のハンドルの向こうに
もうスーパーの看板が見えるのに!!
私は一歩も動けないでいた。
おしまい
暗くてスミマセン<m(__)m>
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