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推しがいるのはナイショです!  作者: 和泉 利依


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「そう。初めてお前のパス見た時にそれで気になったんだ。あの時、縁を切らなくてよかった。言っとくけど、どうでもいい女にMV貸すなんて口実、使わないからな。こないだのカフェで五十嵐って名前が出て、俺はどこぞの課長じゃないから誰のことだよ、って自分でも驚くくらい嫉妬した」

「嫉妬? 久遠が?」

 驚いて声が出た。すると、急に久遠が真面目な顔になった。

「俺、華が欲しい」

 ぼ、と顔が熱くなる。

「俺のものになってよ」

「わ、私は……」

「嫌?」

「………………」

「華?」

 本当の名前を呼ばれて、体が熱くなる。

 私の、名前。

 久遠に呼んでもらうことが、こんなにも嬉しい。

「………………嫌じゃ、ない」

「ならおっけー」

 久遠は、私に向かって手を差し出した。

「ラーメン、食いに行こ。コンサート終わってから、なんも食ってねえんだ」

「こんな時間に? 久遠と食べ歩いてたら、私、際限なく太りそう」

 ため息をついた私に、久遠はまた、に、と笑った。

「太ってても痩せてても、華は華だろ?」

 そう言われちゃうと何も言い返せない。

 私は、少し考えてからその手をとった。

「半分こ、してくれるなら行く」


  ☆


 会議室からぞろぞろと役員達が出てきた。先に出てきた担当の職員と簡単な確認をして、私は自分のフロアへと戻る。

 よかった。無事に終わったわ。

 今日の会議は、本社や他の系列会社の重役もそろった大きな会議だった。

 いつものように始業ぎりぎりに出社してきた高塚さんは、朝から資料作りに追われて座る暇もなかった。また泣き落としで男性社員にやらせようとしてたけど、今日の会議のためにそれぞれみんな忙しかったので誰も請け負う人も手伝う人もいなかった。もちろん、女子社員で手伝う人も誰もいない。かわいそうだけど、彼女自身他の人の手伝いなどしたことがないので、そこは自業自得というものだ。

 途中そっと進捗具合を覗きにいってみたら、ものすごい仏頂面で資料作りをしてた。五十嵐課長に時間を逐一区切られて頼まれた仕事だったから、間に合わせるのに必死だったらしい。さすがに課長相手に、聞いてませんでしたー、とは言えないもんね。

「みんな、ちょっと聞いてくれ」

 フロアに戻ってきた部長が声をかける。その部長の横に、五十嵐課長も並んだ。

「あー、実は」

 部長が、ちらりと課長を見る。

「今年いっぱいで、五十嵐君がうちの会社を辞めることになった」

 女子の間から悲鳴が上がる。私も、声を上げないように口元を押さえた。

 そうだ。忘れてたけど、あの噂。本当だったんだ。

「辞めるといっても、まったく関係なくなるわけじゃない」

 動揺する職員を前にして部長は続ける。

「ここでは言っていなかったが、五十嵐君はベガホールディングスの五十嵐社長のご子息だ。ベガグループを継ぐために、わが社で経験をつんでいたわけだな」

 ベガホールディングス株式会社は、私の会社、紫水観光株式会社を子会社とするベガグループの持ち株会社、つまり本社だ。ベガグループは観光の他にも、交通や食品などの事業を抱えてそれぞれの子会社を持っている。

 そういえば、本社の社長は五十嵐ってお名前だったわ。課長は、社長の息子さんだったのか。

 課内が、さっきとは別の意味でざわめく。そんな偉い人のご子息となればびっくりよね。

 と留美に言ったら、ばかね、とささやかれた。

「ベガの跡取りなんて、捕まえたら超玉の輿じゃん! 見なよ、女子たちの目の色が変わったわよ」

「あ、なるほど」

 それでざわめいていたのか。

 そんな雰囲気に気づいてか気づかずか、部長はのんびりと話を続ける。

「先ほど承認された新事業のため、来年から正式に本社に戻ることになった。ついては、五十嵐君の他にもそちらへ異動することになる者がいるので、該当者には改めて通知をする。五十嵐君」

 呼ばれて、課長が一歩前に出た。

「突然のことで驚かれたでしょう。今度始めるプロジェクトの準備が思いのほか早く進んだので、来年度から始めるためにこちらを年内で退社し新規プロジェクトの準備を本社で始めることになりました。ここで鍛えられた力をいかして、私はこれからもベガグループのために働いていきたいと思います」

 そこで、五十嵐課長と目があった。

「数名の方に出向をお願いすると思います。その時はぜひ、力を貸してください」


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