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盗賊


 サドラを出てガレフォンにたどり着くまでには、都合三つの街と四つの村を経由する必要がある。

 野宿をせずにしっかりと人里で身体を休めながらとすると、馬車を乗り継ぎながらでも、およそ一月半ほどの時間がかかるということだった。


 サドラにいるうちに冒険者としてある程度依頼はこなしていたが、正直金にそこまでの余裕はない。

 Cランク冒険者になれたおかげで冒険者として食っていくことはできるものの、流石に一月半もの間稼ぎもなくぶらぶらと歩ける金銭的な余裕はなかった。


 野宿をしながら徒歩で行ってもいいのだが、それだと時間がかかりすぎる。

 正直なところ俺一人で全力疾走をした方がはるかに早いんだが……野宿はミーシャに断固拒否されてしまった。


 ただ、街に行っては依頼をこなして金を稼ぎ……などと足止めを食らうことはない。

 なぜなら俺達冒険者には、移動をしながら金も稼ぐことができるという素晴らしい依頼が存在している。


 その依頼とは――護衛依頼。

 文字が読めない俺の代わりに彼女が見繕ってきてくれたのは、ガレフォンの手前にあるメニングスの街まで商人の道中を守る護衛依頼だった。





「私が今回依頼を出しセルマと申します。今日からおよそ五日ほどの日程になる予定ですが、よろしくお願いします。えーっと……」


「俺はリーダーのギル」


「私はミーシャ。二人でCランク冒険者パーティー『ギルとミーシャ』をやっています!」


 恰幅のいい中年のおっさんであるセルマが一瞬硬直する。

 そのパーティー名、もうちょっとなんとかならなかったのかという目をこちらに向けてきた。

 俺も同じ視線をミーシャに向けた。

 彼女は二人分の視線を受けてなぜか、ドヤ顔をしながら胸を張る。


 その様子に毒気を抜かれた様子のセルマが、ガクッと肩を下げた。


「Cランクなので大丈夫だとは思いますが……よろしくお願いしますね」


「ああ、任せろ」


 こうして俺達が護衛をする馬車が出発するのだった――。




 護衛依頼を受けることができるのは、冒険者としてある程度実績を積むことができたDランクからだ。

 なので本来ならミーシャが受けることはないのだが、これには高ランクの人間とパーティーを組むという抜け道がある。


 パーティーのランクは一番ランクの高いメンバーのものとしてカウントされる。

 もちろん明らかにランクに見合わないような成果しか出せなければランク降格や罰金などのペナルティを課されたりもするのだが……俺がカバーすればそんなことにはならないはずだ。


 それに活動していてわかったが、ミーシャはこんなんでも結構腕がいい。

 使える魔法の幅も広く、俺の見立てではCランク程度の実力はある。


 本来であれば護衛をする冒険者は外で馬車に併走する形を取ることが多いんだが、今回はミーシャだけは馬車に乗っての護衛を認められている。

 こいつ、体力ないからな……。


「ほう、ではミーシャさんはその年にして既に聖魔法が使えるのですね」


「ええ、人並み程度ではありますけど」


「またまたご謙遜を」


 今回俺は耳を起点にして聴覚の網を伸ばし、可能な限り広範囲に索敵を展開させている。

 おかげで馬車の話まで丸聞こえだ。


 ミーシャはあんな風によくわからないやつだが、魔法使いの中だと結構なエリートだ。

 火・水・土・風・聖・魔という六属性のうち、彼女は火・水・聖という三属性を使うことができる。

 本人の談では三重使い(トリプル)なんて大層な呼び名がつくくらいにはレアだそうだ。


 ミーシャの言葉なので俺自身半信半疑で聞いていたんだが……どうやらセルマの様子から察するに、聖魔法の使い手が珍しいのは間違いないらしいな。


 聖魔法は六属性の中でただ一つだけ、怪我や病気を癒やすことのできる属性だ。

 持っているだけでパーティー勧誘がひっきりなしに来るくらいには需要があるらしい。


 ちなみに彼女は俺と組むまで、自分が聖魔法が使えることは人には秘密にしていたようだ。

 俺は身体強化を使い、馬車に併走しながらあくびをしていた。

 荷がある分馬車の速度はそれほどでもないため、暇なのだ。


 だが数時間ほど駆け最初の村にたどり着こうかという頃、俺の聴覚の警戒網に引っかかる反応があった。


「セルマ」


「はい、なんでしょうか?」


「盗賊だ。数はここからわかる範囲だけで五。一人は後方に配置されている連絡要員だろう。まず間違いなく、他にもメンバーがいるはずだ」


「なんですって!?」


 あわあわとした様子のセルマ。

 だが何日か共に依頼をこなしたことで俺が何をしようとしているのかわかっているミーシャの方は、特に顔色を変えるでもなく平常運転だった。

 今回の依頼主はセルマなので、何をするにしても彼の了承を得る必要がある。


「盗賊退治は実入りも多いと聞く。生け捕りをしてペースを落とさせるつもりはないから、全員処理してアジトから金目の物だけかっぱらいたいんだが……今から二時間ほど時間をくれないか?」


「やっぱり蛮族……」


 小さく呟いたつもりだろうが……聞こえてるぞ、ミーシャ。


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