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【連載版】『絶対王者』と呼ばれた男は、冒険者になって無双する  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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ピチピチ


 鍛冶師クセルの店は明らかに周囲からは浮いていたが、事前に聞いていた薬師カーラの店はそこら中に立っている小屋となんら変わらないような面構えだった。


 中に入ってみると、むわっとした青臭い匂いが漂ってくる。


「ずらっと並んでいる、これ全部が薬なのか……」


 試しに一つ手に取ってみると、その中には俺の見慣れた緑色の液体が入っている。


 ポーション――薬品の中では特に有名なそれらには、若い頃には何度も世話になった。


 こいつは簡単に言えば効果の高い傷薬だ。

 味はお察しだが、飲まずに直接患部に塗っても効くため、いちいち青臭い味を味わう必要はなかったりする。


 ただ品質によって効きがまちまちなのが面倒で、切り傷に塗っても次の日にならないと効果がどれくらいのものなのかはわからない。

 継ぎ目もわからなくなるほど綺麗に治ることもあれば、完全に傷が塞がらないようなものもある。


「一本いくらなんだ?」


「銀貨二枚ですね」


「高いな……」


 剣奴をしていた時は全部もらいものだったがなんとも思わなかったが、銀貨二枚も払って低品質なポーションでも掴まされればたまったものではない。


 身体強化を使っていれば傷の治りは早くなるし、ミーシャは聖属性の魔法で回復もできる。

 俺達の場合、下手に薬に頼らずに自前でなんとかした方が良さそうだ。


「これはなんだかわかるか?」


「解毒薬ですね」


「それじゃあこっちは?」


「体力を回復させるスタミナポーションですね」


 店の中には大量の薬品が並んでいる。

 俺はポーションぐらいしか知らなかったが、ミーシャは結構な博識で大抵のものに関しては説明することができた。


 ただ彼女でもわからないものもいくつかあった。

 かなりレアなものらしいが……果たしてこの田舎の村でそんなものを使う機会があるのだろうか。


「いくつか買っておきますか?」


「銀貨二枚も払って低品質のものを掴まされたらどうする? 別に自分達でなんとかすれば――」


「そんなもんうちにゃあ置いてないよ! なんちゅう失礼なやつだい!」


 スッと足音もなしに、店の奥から一人の老婆が出てきた。

 身のこなしに隙がない……できるな。


「うちのポーションは中品質以上のものしか置いてないよ」


「……効果が飲む前からわかるのか?」


「そんなもん、一口舐めればわかるに決まってるだろう」


 よくよく思い返してみれば、彼女は難病である魔晶病の症状の侵攻を止める薬を作ってるのはこの婆さんなのだ。

 クセル同様、腕は確かなのだろう。


「イオ達はここにいるのか?」


「いんや、もう帰ったさ。ああ、あんたらがあのはなたれ小僧が言ってたあの子達の知り合いかい?」


「はなたれ小僧……」


 たしかにこの婆さんから見れば全員小僧に見えるのかもしれない。


 ミーシャが知らなかった薬の効用を聞いてみると、石化解除と魔力を一時的に増幅させる薬だった。

 石化という状態異常があるのも、魔力を増やせるような薬があるのも初耳だ。


「飲めばどれくらい魔力が増えるんだ?」


「元の二割ほどってところかねぇ。ただこいつは使えば次の日は丸一日くらい寝込むことになるよ。まあ魔力衰弱の状態異常を治すこの薬があれば半日も経てばピンピンしてるだろうけどねぇ、ふぇっふぇっふぇっ」


 怪しい笑いをしながらもしっかりとセールストークもしてくる。

 この老婆、やはりやり手である。


 一日動けなくなる時点でかなりの劇薬だろうが、二割の魔力増強はデカい。

 ここ数年は魔力枯渇をしたことはないが……恐らくそう遠くないうちに、俺は命をかけるような激戦を行うことになるだろう。


 なんとなく、そんな予感がするからな。

 そして戦いに関して、俺の予感の的中率は100%だ。


「婆さん、この薬をくれ」


「婆さんじゃない、私はピチピチの87歳さ!」


「87歳はピチピチではないだろう……」


 俺は口うるさい婆さんから魔力増強の薬を買い、今後のことを考えて他にもいくつか薬品類を買って店を後にした。


 今日はもう遅い。

 明日辺りに、もう一度来店することにしよう。

 ……余計な手間を増やさないよう、今度はミーシャを連れずに一人でな。

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