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【連載版】『絶対王者』と呼ばれた男は、冒険者になって無双する  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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22/50

貸し借り


 ずんぐりむっくりとした体躯の男が、こちらに対して訝しげな顔を向ける。

 見るからに鍛冶のプロフェッショナルといった感じの男だ。


「俺ぁ、武器は自分で気に入ったやつにしか作らねぇって決め……っておいそこのデカブツ、お前それ魔物の骨じゃねぇか! 加工もしてねぇし使い方も荒ぇ……なんてもったいない! 今すぐ見せろ!」


 ……なんか思ってたのと違う反応が返ってきた。

 「俺は馴染みの客にしか装備は作らねぇ」的な堅物職人を想像していたんだが……思ってたよりやかましいな。


 ただこの背骨の加工は最初から頼もうと思っていたことだったので、手渡して見てもらうことにした。


「まず握りはっと……おいおい、滑り止めすらつけずにそのまま使ってんのか?」


「ああ、一応布を巻き付けてみたりはしたんだが、どうにも合わなくてな」


 剣の握りが大切であることは理解しているが、滑り止めのグリスなんかを使ってもいまいち肌に合わなかった。

 思い切り握った状態で激しく動かすと、布だと全力が出せない。


 きっちりと固定できているわけでもないので、つるつると滑ってしまうのだ。

 その時に生じるわずかな感覚のズレは、到底看過できるものではなかった。


 それなら多少ごつごつしていても、握ってしまった方が面倒がなくていい。

 ただ綺麗に整えられているわけではないのでやはりグリップ部分には若干違和感がある。


「まずは握りをしっかりと作る必要があるな。それにお前これ……まったく研磨もしてねぇのか?」


「ああ、カイザーコングをぶち殺して背中から引き抜いた骨をそのまま使ってる」


「……(絶句)」


 言葉を失うドワーフ。

 それを見たミーシャがなぜか俺の肩をポンポンと叩いてくる。

 そしてちょっとだけ嬉しそうな顔をしながら、


「あれが普通の反応なんですよ、ギルさん」


 と言ってきた。

 ミーシャが勝手に親近感を抱いている間に、ドワーフの方はすぐに立ち直っていた。


「と、とにかく! 依頼はこの骨を調整していく形で問題ないんだよな?」


「ああ、握りをなんとかしてほしいのと、あとは飛び出てる小骨をなんとかしてほしいな。背中にゴツゴツが当たって、たまに痛いんだ」


「そのまま使ってりゃ、そりゃそうなるだろ……っとすまねぇ名乗りが遅れたな。俺は鍛冶師のクセルってもんだ」


 クセルはじろじろと、なめ回すように俺の身体を観察し始める。


「はちゃめちゃに鍛えてるのはよくわかるんだが……それは私服か? 防具はどこにある?」


「防具はつけてないな。一応オーガの腰蓑だけは在庫があるんだが」


 既製品の革鎧くらいなら買えたんだが、身体強化を使えば身体の防御力自体がかなり上がるからな。

 下手な防具をつけても意味がないと思い、戦闘は普通に私服で行っている。


 縫製が粗いせいで、戦闘で骨を振り回すとぶちりと服がちぎれてはじけ飛ぶこともしばしばだ。

 そう説明すると、なぜかクセルが遠い目をするのがわかった。


「ふ、ふぅん、そ、そっかぁ……」


「うちの常識知らずが、本当にすみません……」


「いや、あんたも苦労してるんだな……」


 なぜかわかりあった様子の二人。

 俺を共通の話題にすることで、親近感を抱いたようだ。


「カイザーコングの骨の加工依頼ってなると……最低でも金貨十枚はもらいてぇところだな。それに合わせた防具も一式揃えるってなると……合わせて金貨三十枚は見てもらうぜ」


「それなら防具は必要ない。とりあえず骨の加工だけ頼む」


 金貨十枚か……ここに来るまでにいくつか依頼をこなしたりはしたものの、日々出るものも多いので今の俺の持ち金は金貨二枚程度しかない。


 金を作るために久しぶりに野宿しながら魔物狩りでもしてくるか……と真面目に考えていると、ミーシャがごそごそと懐から巾着袋を取り出した。

 中から金貨を取り出すと、丁寧に並べてみせる。


「ここは私が出します」


「……いいのか? 安い金額ではないと思うが」


「ギルさんには命を助けてもらった恩がありますから」


 というわけで俺はミーシャに加工代金を出してもらうことになった

 出してもらえるというのなら素直に奢ってもらおう。

 これって傍から見ると完璧にヒモだよな……まあ別に気にしないが。


「ただ貸しは、以前返してもらった。だから今回は、俺の貸し一ということでいい」


「――はいっ、わかりました。それじゃあ後できっちり取り立てさせてもらいます」


 ということで俺はミーシャに新たに借りを作りながら、骨を置いて鍛冶屋を後にする。


「何もなくちゃ落ちつかんだろ、これでも持っていけ」


 代わりに手渡された鉄剣を背中に差して歩き出す。


「小屋に戻っても特にすることもないので、せっかくなのでイオ達が向かった薬師のところに行くか」


「ですね。魔晶病の症状の進行を抑えられる薬師というのは、私も興味がありますし」


 どうやらミーシャは魔晶病のことを知っていたらしい。

 彼女の言によると、薬師はかなりの凄腕のようだ。


 腕の良い薬師なら知り合っておいて損はない。

 どんな薬品が置いてあるのか、見て回るのも悪くないだろう。

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