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【連載版】『絶対王者』と呼ばれた男は、冒険者になって無双する  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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18/50

火剣


【side イオ】


 俺の名前はイオ、『火剣』の二つ名を持っているAランク冒険者だ。

 このガレフォンの街で仕事をしている冒険者達の中では、右に出る者はいないだけの結果も出している。


 俺にはかわいい、目に入れても痛くないほどにかわいい妹のリルがいる。

 リルは俺の妹ってことはガレフォンの人間ならほとんど知っている。

 だってのにあのクソマフィア共は、リルに手を出しやがった。


 トラッドファミリーの頼みを聞いたらいけねぇっていうのは、この街である程度活動している冒険者なら誰でも知っている有名な話だ。


 最初は割のいい依頼をいくつも出してきてこちらの警戒を緩ませ、その後はあの手この手を使って腕利きの冒険者達を絡め取ってくる。


 借金で首を回らなくして借財奴隷になんてのはまだマシな方で、噂では薬でも使われたのか廃人同様になる人間も多いと聞いている。


 そんなやつらだとわかってるから今まででかわしてきたわけだが……とうとう俺にもその魔の手が伸びてきた。

 なんとしてでもリルを無事に返してもらわなくちゃいけねぇ。

 急いでスラムの中に分け入ろうとしたところで俺はあいつ……ギルと出会った。


 骨を持った、おかしな見た目の男だった。

 ただ魔物討伐を主な生業としている俺には、あいつのヤバさが一目見てわかる。


 こいつは……獣だ。

 だが獣狩りなら俺達冒険者の領分。


 めちゃくちゃ強ぇが本気を出せばなんとか……というところで戦いがストップされた。


 なんでもギルは、トラッドファミリーからリルのことを守ってくれたらしい。

 それならなんで戦う必要があったのか……理解ができなかった。

 そうしたかったからだと言われても、俺の頭は更に困惑するばかりだった。


 一度トラッドファミリーから目をつけられた以上、この街で活動を続けるのは難しい。


 言うことに従うわけにはいかねぇ。ただガレフォンで活動をし続けるのは危険だ。

 ただリルの薬を作ってくれる婆さんと、素材を集めるために必要な高い稼ぎを両立させるためには、別の街を拠点にするわけにもいかねぇ。

 それなら言うことを聞くしか……と考えてた俺を、あの野郎は笑いやがった。


 そしてあろうことか今からトラッドファミリーに殴り込みをかけにいくという。


 一体何が起こってるんだ……俺はあまりの怒濤の急展開っぷりに、頭を悩ませる暇もなく状況に流されていた。







「ぎゃあっ!?」


「クソッ、こいつ……なんて強さだ!」


「てめぇら、うちに喧嘩を売ってタダで済むと……」


「タダで済まない方がこちらとしても嬉しいんだが。もっと上の兄貴を呼んできてくれよ」


 ギルは圧倒的だった。

 一切の躊躇なく、トラッドファミリーの構成員達をぶっ倒していく。


 ギルは強い。

 純粋な戦闘能力だけの話じゃない。

 こいつは心が強い……自分の芯がブレねぇんだ。


 ギルにとっては自分の中にある何かこそが絶対のルールで、街の法律や権力者の持つ力なんてものに、まったく重きを置いていない。


 だからギルは何があろうと揺るがない。


 俺も昔と比べれば、強くなったはずだった。

 けれど完成されたギルを見れば、俺は自分の未熟を恥じずにはいられなかった。


 そしてトラッドファミリーごときに言いように扱われそうになっている自分が、情けなく思えてきた。


 そうさ……俺は風任せの冒険者。

 両親が死んだ場所だからって、ガレフォンに留まらなくちゃいけない理由はない。

 稼ぎが減ろうが、蓄えだってある。


 俺は――もっと自由になっていいんだ。


「てめぇ……イオ、わかってんだろうなぁ!?」


「妹が枕を高くして眠れると思うんじゃ……ぶべらっ!!」


 気付けば俺は、脅してくるトラッドファミリーの男を斬り伏せていた。

 俺を見たギルが笑う。


「いい顔をするようになったじゃないか」


「――はんっ」


 俺はギルの隣に立ち、背中を預けて戦い続けた。

 そして俺とギルはトラッドファミリーを相手に、大立ち回りを演じることになった。


 自分を縛ろうとしていた鎖がこれほど脆いものだと、一人だと気付くことはできなかっただろう。


 俺はまた一つ、強くなることができる気がした。


 さて……これからどうするか。

 ノープランだが、大して悩んではいない。


 リルのためにも、一度婆さんに会いにいく必要があるのは間違いねぇが……まあなんとかなるだろ。


 見上げた空は、いつもより何倍も青く澄んでいるように見えた――。

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