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【連載版】『絶対王者』と呼ばれた男は、冒険者になって無双する  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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魔法使い


 メニングスの街に入ったところで、依頼主のセルマとは別れることになった。


「そ、それではこれで……今回は色々とありがとうございましたっ!」


「ああ、お互い達者でやろう」


 ギルドへ向かい護衛依頼の達成報告を終えると、そそくさと出て行ってしまった。

 どうやら盗賊討伐の一件でかなり苦手意識を持たれてしまったらしい。


 力がもてはやされる冒険者だからといって、あまり露骨に暴力の気配を漂わせるのは良くない、ということなのだろう。

 また一つ、新たな学びになった。


「ここからガレフォンに行くまでは、護衛依頼は受けずにいこう」


「そうですね、誰かさんは戦いとなるとすぐにどこかへ飛び出していっちゃいますし」


「盗賊討伐をしてもはした金しか手には入らんし、つまらんからもうやらんさ」


 一応頭目の首だけ袋に入れて持ってきて、盗賊討伐の報告もさせてもらった。

 ただ手に入った額は合わせても金貨一枚ちょっと。

 これなら魔物を倒してその素材を持ち込むのとそう大差はない。


「護衛依頼の報酬は頭割りでいいですけど、盗賊の方は全部ギルさんの総取りで大丈夫ですので」


「ああ、わかった。それじゃあ次は宿探しだな」


「既にセルマさんから宿のことは聞いてますから、任せてください」


 手際のいいミーシャと一緒に宿へ向かい、荷物を下ろす。

 ちなみに中には俺が自作しミーシャが整えたパンサーレオの毛皮も入っている。なんやかんや

 道中村で買い換えた服は、着心地があまり良くないので、新しいものを買うべきかもしれない。


「サドラと比べるとずいぶんデカいな」


「あそこはそこまで大きな街ではありませんからね。ただこれでも規模的にはガレフォンの半分程度ですよ」


「ほう……」


 話ながら晩飯を食えそうな場所を物色していく。

 ミーシャは宿の話しか聞いていなかったので、こちらは手探りだ。





 入った店の飯は、十分に美味かった。

 大して舌が肥えてるわけではないので、店で食える濃い味付けのものなら、なんでも美味く食えそうだ。


 ただ少し量が足りなかったので追加でいくらか料理を持ち帰らせてもらい、酒屋でエールを買っていく。


 同じ宿の隣室を取り、部屋に入る。

 当然だという顔をして、ミーシャも中に入ってくる。


 何をするかといえば……酒盛りだ。

 俺もミーシャも、酒を飲むのは嫌いではないからな。


 飯屋で食うより、物を自分達で用意した方がいくらか安くあがる。

 それに……店ではできないこともあるしな。


 床に座り込み、器からジョッキにエールを注ぎ終えると、ミーシャも自分のコップを取り出してずいと突き出してきた。

 そのまま器を傾けエールを注いでやり、買った飯を広げる。


「ん」


 俺がなみなみとエールの入ったジョッキを渡すと、彼女の方はそれを受け取り、


「――ふっ!」


 一瞬、ミーシャの身体が淡く光る。

 続いてカラン、と軽く高い音が鳴った。


 ジョッキの中を見れば、いくつもの小ぶりな氷がぷかぷかとエールの海を泳いでいる。

 彼女は自分のコップにも氷を入れると、それを高く掲げた。


「乾杯!」


「乾杯」


 ごっごっと、喉を鳴らしながらエールを飲んでいく。

 エール特有の苦みとえぐみを、冷たさが押し流してくれるようだった。


 冷たさは、一種の快楽だ

 普段の生活では味わえない爽快感を感じることができる。


 この一事だけでも、ミーシャと共に行動をしていて良かったと思う。


「もっと別のところでありがたがってもらいたいんですが……」


 どうやら心の声が出ていたらしい。

 不服そうにぶすっと唇を突き出しているミーシャの表情を肴に、酒を流し込んでいく。


「しっかし、便利なもんだな、魔法ってのは」


「魔法使いを便利アイテムと思ってるのは、貴族かギルさんくらいだと思いますよ」


 水属性使いの中でも、氷を出せる人間はさほど多くないらしい。

 氷として出すことができると攻撃力が一気に上がるため、魔法使い同士の中でも一目置かれるようになるのだとか。


 更に言うと氷はわりと日常生活でも重宝されるため、使えると豪商や貴族から囲い込みが入ることもあるらしい。

 聖属性の時も思ったが、魔法使いというのも存外大変なようだ。

 有用な魔法が使える者は、世間が放っておかないようだからな。


 氷が出せることを、ミーシャは他の人間に言っていない。

 なので氷を出してもらおうとすると、どうしても人目につかないところでやる必要があるのだ。


「ん、頼んだ」


「もう……あんまり飲み過ぎないでくださいよ……ひっく」


 俺は別にミーシャに攻撃能力は期待していないし、彼女を囲い込むつもりもない。


 ただ……一緒に同道している今くらいは、その恩恵にあずかってもいいだろう。

 そのため今日も余った彼女の魔力は、俺達の飲み物を冷やすために使わせてもらう。


 結局酒盛りは日付が変わる頃まで続き……そして次の日の朝、俺は二日酔いで頭を抱えるミーシャを介抱することになるのだった。

 こいつ、好きな癖に酒めちゃくちゃ弱いんだよな……。


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