18 Oct. 14126「樹海の糸」
18 Oct. 26 -アマゾンコロニー-
世界には二百を超えるコロニーがある。
ボクたちが訪れたのは、そのうちの一つ「アマゾンコロニー」。
ここはジャングルのコロニーとして有名だ。植物の箱舟として、様々な草花や樹木を保存している。
大昔に巨大なジャングルがあった場所で、熱帯や亜熱帯の地方に育つ植物が沢山植えられている。
ボクたちは、もくまおうの並木道を歩く。二十メートル級の木々からは、小枝が細かい葉のように垂れ下がり、ボクたちに覆いかぶさるように伸びている。
カラハーイも枝の間をひらひらと楽しそうに飛んでいる。
並木の先には小さな広場。その中央には巨大ながじゅまるの樹。
ニライカナイコロニーの公園にあった樹よりも少し低いけれど、こちらの方が幹が太いから存在感がある。
カラハーイはがじゅまるの樹の枝に腰掛けると、ボクを見下ろして笑う。
彼女の表情は変わらないし、声も出せないから、本当に笑ったわけじゃないけど、とびっきりの笑顔でこちらを見ている気がした。
何となくウナイに似ている。
「おみやげをかわなきゃね」
カラハーイを呼んで、道の反対側にあるお店へ。土産物店にはツタで編んだ籠や、切り株を彫った椅子なんかが並んでいる。
ウナイは歌が好きだから、歌に関係するお土産が良いんだろうな。
ボクたちが商品を見ていると、さっきまで店主と談笑をしていたおじいさんが声をかけてきた。
「君らは旅行者だね。ジャングルはもう見たのかい?」
「いいえ、まだです」
「今から行ってみんかな」
おじいさんは、森の案内人だそうだ。
案内人なら身体も動かせるし、人と話もできる。それが生きがいだと言っていた。
歩いて五分ほど、気候を区分している壁が見えてきた。
ここにもエアロック。でも、一つだけ。壁を超えて種や菌を持ち込まないように、防護服を着るように言われる。
カラハーイは、ボクの防護服に潜り込んで、ヘルメットの中に顔を出す。
「この先がジャングルだ」
おじいさんがエアロックの扉を開くと、ムワッとした空気が流れてきたのが分かる。
「うわぁ、すごいねぇ」
ボクは思わず驚きの声を出した。壁の向こうは、鬱蒼とした森。
高い湿度を纏った様々なツタやシダ、蔓植物や高低様々な木々が、ボクたちの行き先を遮るように茂っている。
他のコロニーでは見られないここだけの光景。
「多様な植物が、この森の特徴だ。もちろん、植物だけじゃ生態系は維持できん。昆虫や小動物、鳥も沢山いる」
ここはビオトープなのか。水族館や動物園と違って、生き物の種だけでなく、環境自体を保存している場所なんだ。
珍しい花を見ると、カラハーイがシャラシャラと音を立てる。ボクはそのたびに、おじいさんに何の植物かを聞く。
「目印の糸から離れんようにな」
おじいさんの指差した先には、赤色の糸が張られていて、森の中へと続いている。
「森を守るために、あの糸から中には入ってはいかんのだ」
そう聞くと、糸から少し離れて歩いたほうが良いのかな、と思う。
おじいさんの説明はさらに続く。
「でもな、この糸は道標。糸を辿れば、ちゃんと戻って来れる」
そう聞くと、細いけど心強い糸に見えてくる。
ビオトープを一周して、エアロックまで戻ってきた。
初めて見るものばかりで、とても楽しかった。
ボクとカラハーイは頭を下げてお礼を言う。
「妖精さんも楽しんでくれたのかな?」
おじいさんが肩の上のカラハーイを見る。
「カラハーイも、とてもよろこんでます」
「妖精さんはカラハーイというのか。聞いたことがある。どこかの言葉で『羅針盤』という意味だな」
そうか、だからカラハーイはボクの道標なんだ。
ボクは地球儀をくるくると回す。
これからもよろしく、カラハーイ。




