表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜の星のメンテナー  作者: M
閑話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/58

25 Jun. 14016「やぎの散歩」

 私の名前はヤギという。漢字で書けば八木。

 地球環境回復プロジェクトのメンバーであり、ニライカナイコロニーでメンテナーの管理を行っている。


 今日はコーラルリーフで、メンテナーから進捗報告と発掘物の提出を受けた。

 報告が終わり、メンテナーを一階ゲートまで見送る。


「引き続きお願いします」

「もちろん。じゃあ、またね」


 彼の見た目は十三歳だが、三千年以上稼働しているアンドロイドだ。

 だが、歳上という感覚はない。人格をコピーした時点で彼らの精神は成長しないからだ。


  ぐううぅ


 お腹が空いたと警報が鳴る。

 ゲートの横の受付アンドロイドに、食堂の日替わり定食の内容を聞く。


「今日は魚のフライ定食とチャンプルー定食です」

「いつも、ありがとう」


 また空腹警報が鳴る。どっちにしようか考えながら、エレベーターで七階へと戻る。

 執務室に入ったところで、東京コロニーから出張で来ている課長が話しかけてきた。


「ヤギくん、昼飯はどうする?」


 美味い店を教えろとでも言うのだろう。それなら偉い人と食べに行けば良いのに。


「いつも外の公園で食べてます」


 嘘を吐いた。いつもじゃない、たまにだ。

 課長は逡巡する。


「そうか。なら俺は食堂に行くか」

「今日の日替わりはチャンプルー定食です。ここの自慢料理ですよ」

「お、そうか。食べてみよう」


 課長はウキウキと部屋を出て行った。

 正直、課長とご飯なんて食べたくない。課長には出張初日の懇親会で絡まれた。


「ヤギくんは結婚しないのか? 相手がいないなら東京の子を紹介してやるぞ」


 その場は適当にはぐらかしたが、まだ諦めていないと思う。



 私は再び一階へ降りて、近くの公園まで歩く。

 六月の気温は蒸し暑くもないし、外を歩くにはちょうどいい。


 お昼の公園にはキッチンカーやワゴンが並ぶ。

 さあ、今日は何食べようかな。


 おにぎり、バーガー、丼物、串焼き、フルーツ。軽食から甘味まで揃っていて、何にしようか目移りする。


 弁当屋の(のぼり)に「名物ザンギ」と書いてある。

 ザンギ……知らない料理だ。どうやら唐揚げの一種らしい。


「肉と大豆の割合はどうされますか?」


 午後はメンテナーからの報告をまとめないといけない。ちょっと奮発して気合を入れるか。


「肉、百%……いや、八……六十%で」

「了解しました」


 結局、日和ってしまった。


 ベンチに腰かけて、ザンギ弁当を開く。醤油とニンニクの香りがして、ぐぅと三度目の警報。

 早速メインのザンギからいただく。少し大きめだが普通の唐揚げのように見える。

 一口かじる。

 サクサクとした衣に、ジューシーな肉汁。ニンニクと生姜の香りが口いっぱいに広がる。


 これは美味しい。

 あっという間に一つ食べ切る。

 ご飯も進む。二つ目はもっと味わいながら食べる。

 次の給料日には、百%肉にしよう。


 少し物足りないが、このくらいの腹具合の方が、午後眠くならなくて良い。

 食後は腹ごなしに公園を散歩する。

 昼休みのサラリーマンの他にも、ランニングをする人や老夫婦がいて、思い思いに過ごしている。

 アスレチックでは子供たちのはしゃぐ声が響き、親たちがそれを見守っている。


「結婚かぁ」


 思わず呟く。

 確かに結婚して子供を育てるのは、閉鎖された環境で生きる人類の存続にとって不可欠なこと。

 人口が減りすぎて破綻しそうなコロニーだってある。


 世界の人口が減少し始めたのはコロニーができる前、文明が世界中に行き渡った時からだ。成熟した文明社会では、人は子孫を残そうとしない。

 だからこそ、結婚と育児を推進する施策が取られ、幸福な結婚という教育も行われる。

 ……でも、結婚だけが幸わせだとは思わない。

 仕事と結婚したって格好良いじゃないか。


 もうすぐ時間だ。

 私はコーラルリーフに向かって、散歩道を戻っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ