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夜の星のメンテナー  作者: M
1章 ボクの日課

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4 Nov. 26「SATIE」

4 Nov. 26 -コロニー-


 今日は街へ買い物に来た。

 街は、「コロニー」と呼ばれる透明な半球体のドームに覆われ、外の冷気や砂嵐から守られている。


 ボクは街の大通りをバイクを押しながら歩く。

 沢山の街灯があちこちを照らし、様々な人々が行き交っている。

 バイクが楽しそうに話しかけてくる。


「いつ来ても、ここは賑やかですね」


 このコロニーに来るのは、ほぼ一年ぶり。

 バイクがはしゃぐのも仕方ない。


「メンテナーさん、こんにちは」


 ボクに声を掛けてきたのは高齢の女性。

 久しぶりに来たのに、ボクを覚えてくれる人がいると嬉しい。


「今日はお休みですか?」

「はい、かいものです」

「外でのお仕事は大変でしょうに」


 そう言って女性は上を見上げ、コロニーの天井を見つめる。

 その先は、どこまでも真っ暗な空。


「だいじょうぶです」


 そう答えると、女性は「頑張ってくださいね」と手を振って去って行った。

 バイクがボクに小声で囁く。


「感謝されてるじゃないですか」

「あたりまえのことをしてるだけさ」


 ボクは心の中では照れまくっているけれど、バイクにバレないよう平静を装う。彼女なら、ボクをからかってくるに違いない。

 ごまかすために、ボクはお店を指差した。それは電気屋のチェーン店。

 彼女の興味がそちらに移る。


「あ! ヘッドライトのランプあるかしら」


 彼女は、ヘッドライトをもっと明るくてパッチリした電球に替えたいらしい。

 まだまだ明るくて十分に使えると思うんだけど、彼女の想いは強かった。


「早く行きましょうよ!」


 バイクが催促するので、駆け足でお店に向かう。

 売り切れることなんて無いと思うけど……。


 電球を選ぶのに時間は掛かったが、取り替え作業は数分で終わる。


「前よりも明るくなったから、安全に走れますね」


 彼女は嬉しそうにライトをチカチカと瞬かせる。

 あまり変わってない……、なんておくびにも出すことはできない。

 笑顔で「とってもいいね」とだけ答えておく。


 その帰り道。

 ちょっと裏通りに足を伸ばす。人も少なくて落ち着いた雰囲気の通りだ。

 骨董品店のショーウィンドウの前でボクの足が止まった。


 完全フル装備の潜水服。

 超々深度まで潜水できるように耐圧構造となっており、ゴツいヘルメットが宇宙服を思わせる形をしている。


「また、古い物を見てる」


 バイクの呆れたような声。

 君だって、相当古いよね……、とは口が裂けても言えない。


「ちょっと、みてきていい?」

「私はここで待ってます」


 バイクを路肩に停め、ボクは店の扉を開いた。


「いらっしゃいませ」


 少女がボクを出迎えた。

 七、八歳くらいだろうか。店主にしては幼すぎる。


「パパ! お客さんよ」

「分かった、サティ。すぐ行く」


 恰幅の良い男性が顔を出す。


「ああ、メンテナーさん。お久しぶりです」


 かなり前にこの店でラジオを買ったことを、店主は覚えていてくれた。

 サティが店主に聞く。


「パパ、エンテナって?」

「違う違う、メンテナーだよ。お客様は、地球を直すお仕事をしているんだ」


 店主がボクの仕事を説明してくれるが、サティは小首を傾げる。


「へぇ、パパと一緒だね」

「一緒?」


 ボクと店主は顔を見合わせる。


「パパも、壊れた物を直してるでしょ。メンテナーさんも、地球を直してるんだね」

「そういうことか、そうだね。パパとメンテナーさんは同じお仕事だ」


 店主は豪快に笑う。


「頑張ってね。パパみたいに昼寝ばっかりしてちゃダメよ」


 サティの言葉に店主の笑いが止まる。


「そうだね。がんばるよ」


 ボクがそう答えると、サティの瞳はキラキラとして、眩しいくらいだった。


「で、今日は何にご興味が?」

「あの、ショーウィンドウの……」


 ボクが店主と話している間、サティは興味深そうにこちらを見つめていた。


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