表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜の星のメンテナー  作者: M
3章 昔の話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/36

23 Aug. 14006「4×4」

23 Aug. 06 -4×4砂漠-


 ニライカナイコロニーの西には、広大なプラスチックの砂漠が広がっている。

 久しぶりに発掘調査隊が砂漠に潜る。

 今回の調査員は五人。彼らは、人間がコロニーの外で活動するための防寒着を纏っていた。フルフェイスで気密性と防寒性がとても高い、宇宙服のような装備。

 胸には青葉のマーク。プロジェクトのメンバーの証だ。


 ボクはその調査隊と一緒にキャタピラ車に乗っていた。

 メンテナーには発掘調査隊の案内役という仕事もある。防寒なんて無関係のボクは、ゴーグルに上着、ブーツといったいつもの格好。


「なぜ、ここが『4×4砂漠』と呼ばれているか知ってるか?」


 隊長が隊員たちに聞く。が、すぐに答えは出ない。隊長は、勉強不足だなと呆れ顔で答えを言う。


「この砂漠は北緯24度から28度、東経124度から128度に渡って広がっている。緯度で四度、経度で四度だから『4×4』なんだ」


 隊員から「勉強になります」「さすがです」という声が上がる。もっと勉強するようにと笑う隊長。

 今回の調査隊は、そういう関係性なんだなと一発で分かった。


 キャタピラ車が目的地に到着。

 ここまでくれば、砂の深さは四十センチほどしかない。

 ヘリで飛べばもっと早く着くんだけど、嵐に巻き込まれると危険なので半日掛けて地面を移動している。


 ボクはブーツのスイッチを入れて一番に降りる。続いて調査隊の面々が降りてくる。


「マイプラ濃度は問題ないな、準備を始めよう」


 隊長の指示で隊員たちが砂を掘ると、やがて氷の層が見えてきた。かつては海と呼ばれていた氷床だ。


 夜が明けなくなって一万年。地球の気温はどんどん下がり、全ての海が凍ってしまった。

 全球凍結

  雪球地球

   スノーボールアース

 空気中の水蒸気もほとんどが凍ってしまい、雨も雪も降らず、雲すらなくなってしまった地球。

 乾燥した冷気に、風化して細かくなったプラスチックが混ざった空気。コロニー外の環境は、生命活動がほぼ不可能な死の世界となった。


 調査隊は簡易なシールドマシンを組み立てる。マシンは氷床を砕きながら斜め下に掘り進んでいく。

 人が立って通れるギリギリの大きさの穴が出来て、ボクは調査隊についていく。


「やはり表層付近は、プラスチックばかりですね」


 隊員は氷の壁にセンサーを当てながら、もともとは海だった場所を観察する。

 人工の氷の洞窟を数メートルほど下っていくと、氷が青みを帯びてくる。純粋な氷の結晶は波長の短い光を吸収し、青い光を反射するからだ。

 泉の青とは違った神秘的な青さ。


「これが見たかったんだ」


 隊長が呟き、隊員たちが頷く。

 アンドロイドに発掘を任せず、危険を冒してまで人間が調査に来ているのは、こんな光景を目の当たりにしたいからだろう。


 歩いて数時間。数百メートルは降りてきただろうか。


「隊長、こちらを!」


 隊員の一人が壁に当てたセンサーを見て叫ぶ。

 その方向の氷の中に小さな黒い影。


「あれは何だ?」

「くちばし……鳥っぽいですね」


 発掘の目的の一つに絶滅した種の捜索がある。氷床に閉じ込められた生物を発掘するのだ。

 隊員が影の方向へ氷の壁を掘っていく。ボクは落ちた破片を片付けるのを手伝う。

 影に到達すると、工具で周囲を丁寧に削る。

 取り出されたのは、凍った小鳥。


「ひばりの仲間でしょうか」

「鳥とは珍しい」


 化石と違って、遺伝子が冷凍保存されていれば、絶滅種を再生できる可能性がある。この発見は十分な成果だ。

 今回の発掘の様子は、映像がまとめられてスペシャル番組として放送される。


 帰還するキャタピラ車の中で、調査隊は盛り上がる。

 でも、今回ボクはほとんど役に立てなかった。

 ちょっとだけ悲しい気持ちで車に揺られていた。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ