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夜の星のメンテナー  作者: M
2章 サティの初恋

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15 Apr. 14031「アネモネ」

 四月。

 いろんな花が咲くこの季節は、なんだかワクワクする。

 私は、お店の商品たちの合間に様々な色のアネモネを飾りつけた。アネモネの花言葉は……何だったかな。

 とりあえず華やかになったお店を見回し、満足げに店の奥にある工房に入る。


「サティ、あっちへ行ってなさい」

「いいじゃん、見せてよ」


 パパからは工房を出るように言われたけれど、私はお兄ちゃんの隣の椅子に陣取って、作業を眺めることにした。

 パパはお兄ちゃんに依頼されて、バイクさん用のサーモスタットの修理をしている。お兄ちゃんが電気屋さんに持っていこうとしたら新しいのを買わされそうになったので、うちへ持ち込んだんだって。

 パパはハンダゴテをカチカチ鳴らしながら、深く息を吐く。


「難しいの?」

「そんなに複雑な回路じゃないんだけどね。氷点下からかなり温度を上げてるから、あちこちの配線が劣化してるんだ」


 私たちのやりとりを聞いて、お兄ちゃんが申し訳なさそうに「ごめんなさい」と謝る。


「メンテナーさんの仕事だから、仕方ないですよ」


 パパはそう言ってフォローする。

 私はお兄ちゃんが普段は何をしているのか全然知らないことに気が付いた。

 とても寒いコロニーの外で、地球を元に戻すためにメンテナーは働いている。スクールで習ったのはその程度。じゃあ、元に戻すために何をしているんだろう。


「お兄ちゃん、どんなお仕事をしているの?」

「ワームをしらべたりとか」


 げ、ワーム。

 遺伝子操作で作られたプラスチックを処理するための生物だって教科書に書いてあった。でも、その姿はミミズの化け物。

 土を耕してくれるミミズは、お花にとっても大事な生き物。だけど、ミミズはどうしても苦手。


 私がうへぇと言う顔をしていると、お兄ちゃんが、また「ごめんなさい」という。お兄ちゃんは悪くない。悪いのはミミズだ。

 パパが作業をしながら、補足してくれる。


「メンテナーさんの仕事はね、他にも中和作業や発掘のお手伝いとか、いろんなことをしているんだよ」

「発掘!?」


 私は面白そうなワードに反応して、お兄ちゃんの顔を見る。


「あのバイクもそうじゃないかな、かなり古い型だし」


 パパがそう言うと、お兄ちゃんは「まあ、そんなものかな」と頷いた。


 砂漠や氷の下には、コロニーができる前にあった町が埋もれている。たまにコーラルリーフの発掘調査隊が作業を行うスペシャル番組なんかをやっていると、ついつい見てしまう。

 パパが扱う骨董品にも、調査隊が発掘してきた過去の時代の物が沢山あるし、私も全く興味がないわけじゃない。


 私は窓の方に目をやる。お店の外で日向ぼっこをしているバイクさんが見える。

 確かに、一人乗りのオープン型バイクなんて、コロニーの中を走っているのを見たことがない。しかも飛行式。

 もしかしたら、バイクさんは数百年前から砂漠の下で眠っていたのかも。


 パパが生まれるもっと前、おじいちゃん。いや、おじいちゃんのおじいちゃん。もっと前か。おじいちゃんの……もう分かんない。

 そう考えると不思議。


 私はお兄ちゃんの横顔を見つめる。


「なに? なんかついてる?」


 お兄ちゃんは突然見られて戸惑う。

 私は「ふふふっ」と笑ってから、お兄ちゃんにお願いした。


「今度、コロニーの外で何か良いもの見つけたら、私にもちょうだい」

「こらこら、発掘したものはプロジェクトに報告しなきゃならないんだよ」


 パパは、お兄ちゃんに無理なお願いをする私をたしなめる。

 私の不満げな様子を見て、お兄ちゃんは小声で耳打ちしてきた。


「もちろん」


 私はとても嬉しくなって、パパには聞こえない小さい声で「うん」と答えた。


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