シン
祝日なので、この様に書いています。
春分の日万歳!
「誰か...助けて...。」
―――
4歳になった或る日。
僕は、父さんに断ってからアリオスに出ていた。
そこまではいつもと同じはずだったけど、その後好奇心で横道にそれてしまったのがいけなかった。
戻ろうとして場所が分からなくなり、どんどんと進んでいこうとするものの、進むのはさらに迷うのが世の常。
...ということで、すっかり暗くなったために立ち止まり、助けを求める様にしていた。
「おいガキ、こんなところに何の用だ?」
と、何処からか口の悪い人が来た。
これを好機と思い道を尋ねると、「よし、こっちにこい」とさらに奥まで進む。
本当にこちらに行けばいいのだろうか?
その疑問を思って「どこに向かってるんですか?」と聞くと―――。
「...親方!ǸǸǸだぜ!コイツぁ記憶がねえみたいだが、こりゃいいガキだぜ!」
その声でもう目的地に着いたことを悟り、もしかしたら危ないかも―――とそこまで考えたところで後ろの方から気配を感じ、気付けば―――そこは暗い部屋だった。
―――<???視点>
...目を開けると、そこは暗い場所だった。
「...男か。まあいいだろう、どうせコイツもǸǸǸなんだからな。ǸǸǸを捕まえるときにはお前も役に立つんだからな」
転生したと悟ったのは、近くに彼女の雰囲気が感じられなかったからだ。
命懸け―――いや、実際に命を棄てて<転生>して早1400年ほどたっただろうか。
僕は久しぶりに人間の姿の感覚を味わっていた。
嘗て、僕が自らの生きる道を修羅の道と定められて、アリオスという老人に鍛えられまたその名を継承して『最後のアリオス・ヴァルディアヌス』となってからレヴィアに巻き込まれて人と敵対し、そして大陸の名を定めてからも同じ時間が経っていて、不思議な感覚だ。
「男のǸǸǸだから...お前の名は『贖罪』だ。
お前の前世に犯した罪を全て贖罪できるように、せいぜい努力することだな」
シン。それが、この世界で再び剣を取る運命にあるだろう僕のこの生に受けた名だった。
―――
「...う...。」
頭がぐらぐらする。恐らくは、さっき後ろから殴られるかして気絶させられただろうから前歯も折れているだろうか。そういえば、口が痛い。
さっき、男の人についていったのが間違いだった。
と、物音がしたのでそちらを振り向くと、首が痛むのも忘れるほどに驚いた。
そこには、子供がいた。それも、僕と同じぐらいの少年が。
「...君が捕まった子かな?家に帰りたいのなら僕を信じて欲しいんだけど」
その言葉は、抗いがたい誘惑で会って―――同時に、先の事のせいで猜疑心を与えるものでもあった。
「...できれば、そんなに警戒してもらいたくないな。それに、僕はだますことなんてしないよ。
君と同じなんだから」
と、そんな僕の心が伝わってしまったかそんな事を言う少年。
きっと、この人も捕まったのだろう。そう思うと、僕の口は「...分かったよ」と自然に動いていた。
「...ありがとう。じゃあ、目を瞑っていて」
何故という間もなく目を潰されかけ、瞬時に瞼を閉じる。
「...<時間遡行>」
そう聞こえたと思うと、「もう目を開けていいよ」と言われた。
「...少し手荒な真似をしたけど、これでもう怪我はないはずだよ。ほら、前歯も戻ってるだろう?それに、血もないはずさ」
そういわれて首の下あたりに血がついていないかを見ると、一切なかった。
そして、舌で前歯の有無を確認すると―――そこには、何事もなかったかのように歯があった。
「...<時間遡行>さ。僕の不思議な力、と言ったところかな。本当は神族しか使えないんだけど僕はǸǸǸだからね、ガイオの能力を少しは奪っていたのかもしれないね」
神族、時間遡行。訳の分からない言葉もあったけど、少なくとも助かったからいいや。
そう思って礼を伝えると、「礼はいいよ。その代わりに、少しの間でいいから君の下で過ごさせてもらってもいいかな?」と言われた。
勿論、それは僕が決められる事じゃない。でも、きっと父さんなら許してくれるだろう。
そう思って、「勿論!あ、僕の名前はレイヴンって言うんだけど、君はなんていうの?」
と応答と質問を同時に行った。
「...希望か。俺には程遠いものだな」
そう呟いたように聞こえたと思うと、その声を変えて、
「シン。少なくとも、此処ではそう呼ばれている」
と言った。
ずっと共にいることになる、その少年と会ったこの時は、一つの運命が消えた事も表していたけど―――それを理解する由もなかった。
―――
「...こんな遅い時間までどこで何をしていたんだい?それに、その子供は誰かな?」
家に帰ると、やはりというかなんというか父さんに怒られた。
「僕はシンです。(希望を潰さないことが僕の贖罪らしいからね)」
シンが僕の説明よりも先に名乗ると、父さんは―――
「...なぜその言葉を知っているんだい?」と驚いていた。
それを質すよりも先に、「...いや、そんな事はいいよ。君もこの家にいていいよ。と言うか、僕の養子と言う形でいてくれないかい?」と寧ろ下手に出て父さんがシンに懇願していた。
「分かりました。|これからよろしくお願いいたします、御父様《これからも頼む、神族の身に生まれながらも人に姿をやつす子よ》」
何故か、それに笑顔で答えたシンの声は二重に聞こえた。




