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境界の物語  作者: ∀・1
魔滅・新大陸
88/92

納涼祭

...再び来た夏は、非常に暑く感じた。それは単純にエミリアが引っ付いているからかもしれないけど...。

『フェル、君は炎の魔術が苦手なのだからもう少し工夫を凝らすようにして魔術を放った方が良い』

『わ、分かりました!』

―――やっぱり、フェルが炎の魔術を使っているのが一番だろう。


今年も恒例の納涼祭があるわけだけど―――その前に、僕は出なければならないことがある。

それは『大会』と呼ばれるもの。欲しいものを言い合い、戦うと言う、いわば戦争の規模極小バージョンだ。そしてなぜ出るかと言われれば...僕が景品として出されているから。

ラヴィア学院長と言う名で強制的に其の案を通してしまったセイタは、「僕に求婚する権利」を持った奴を叩き潰せば問題ないと言った。

仕方なくそれに従っている所で、最上学年になった今もそれは変わらない。


「...まあ、レイとエミリア君は大会で使い物にならないとして、他の者は努力する様に。それとレグ、君はシンとレーヴァの応援をしてやりなさい」

「はい!」

この、僕とエミリアを省いた準備も去年、一昨年と同じだ。ただ、子供には相当甘いのかさしものセイタもレグに対しては柔らかい口調になる。もしくは、それにちゃんと従ってくれるからだろうか。

それはそうと、結局今年も大会に出ることが決定した。しかも今年は、僕が卒業すると言うことで学院外からも大会参加者がいる。以前に比べて相当魔術の腕が上がった魔術師たちだけど、流石に無詠唱魔術複数属性複数保持は難しいようだ。フェルはそれに向けて日々特訓中であり、特殊能力はなくとも努力を重ねる彼の成長を見るのが楽しい。


「じゃ、今日は二人でのんびりしよーね?」

「ああ、うん」

セイタが消えた途端にそんな事を言うエミリアに、いつもの癖で頷いてしまう。ただ、その癖がだめだろうとは自分でもわかっているけどついつい...という感じなのだからどうしようもない。

そのまま<転移ガレヲーノ>し、僕たちはアリオスに向かった。



―――



ライデオル帝国の中でも、現状ではいまだに辺境に当たるアリオスでは魔物でも一番弱いのが単体のアニヒレーター(Bランク)というほどの辺境ぶりで、ガイオの出していた魔物の放出に生き残った者達が盗賊として生きているものもあるから、治安も悪い。

その盗賊にしても少しずつ数が減少しているらしいけど、Bランク以上の冒険者はレギュリア広しと言えども3000人程度しかいない。それでももともとが冒険者制度が無かったことを考えれば多い方なのかもしれないけど。


辺境にいる魔物に対しての橋頭堡とするためにこの街を復興させようとはしているのだけど、やはり魔物が強すぎて中々復興できない。そして、復興したとしても恐らく人が入らない。

そんなところだけど...今回は、アリオスの復興を望んでいるのかどうなのか。

「...ライゼオン殿下がしっかり帰れたのか、確認の意図も含めてね。まあ、小さい時から結構強かったし、それにレーヴァ様に対してもべったりで甘やかしてて、その時からレーヴァ様には嫌がられてたなー」

違かった。まさかのグレスに対する帰属心だった。まあ、シンを庇護するくらいだからそれは友情よりは低い者らしいけど、SSランクに指定されるような龍王なんて言う、普通なら絶死の存在と戦っているぐらいだから帰属心は強いのかどうかは不明だけど。


「...あれ、なんか見慣れた影が」

「...なんでだろ、ボクも見えるなあ」

紛れもなく、というか嘘であってほしいけど、あの一行だ。

仕方ないなあ、そう思いながらも僕たちは声を掛けることにした。

「えーと、なんでここにいるんですか?ライゼオンさん?」

すると、ぐるりと振り返ったライゼオンは僕を睨み、「...どこにあるのだ。直ぐに帰れる門とやらは!」と一括してきた。



「いや、それは森なんですよ。入ったらすぐに引き返して、そしたらつきますよ」

「...なぜ重要なことを言わなかった」

「あれで言っても聞き入れられなそうだと判断したので」

「むう...。」

と言いつつも、しっかりと案内は怠らない。

そして、懐かしく忌々しくもある、枯れなかったらしい青黒い光を放つ森に連れて行く。


エミリアが拒否動作を見せたけど、そのままライゼオンもついでに引っ張る。護衛もついてきたことを確認すると、すぐに後ろに歩く。

そして、出たのは―――懐かしきかな、偉大なるグレス王国の首都・グレートデヴァルだった。

「...本当に我等が都に着いた。...あの森は、古文書に残る海を渡った先につながる森、か」

謎の言葉を発していた皇太子は無視して、僕は久しぶりに来たこの地を見てついつい(魔力が薄いなあ...。)と感じてしまう。そして、何故か人が少ない気がするとも。


≪...レイヴン・ヴェルドリアよ。何故我の元にすぐ来なかったのだ?我を胎児化させた際に、すぐに来ると言っておったのに...。≫

と、天空からそんな声が聞こえてついそちらを見る。

口調と言い、伝達の方法と言い。どこかで聞いたことのあるものだ。

「...なんでいるんだろ、あれ」

エミリアのそんな呆れ声を出させたのは―――やはりと言うべきか、焰龍王パーシヴァルだった。

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