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境界の物語  作者: ∀・1
魔滅・新大陸
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ぶっこみと帰還?

「...まあ、私たちもすぐに発見できなかったのが悪いと言う所もある。...だが、何故抜け駆けなどした‼男を見つけたのなら、私に言えと常々言っていただろう!?」

或る程度の沈黙ののちに、ライゼオンと呼ばれた男は話し始める。...ただ、なんだか僕には情けない大人にしか見えない。しかも、妹にずっと引っ付いて鬱陶しく思われるタイプの。

実際、レーヴァも呆れた顔してるし。


それでも何か叫び続けるライゼオン皇太子だったが、「...情けない」というシンの言葉に「何が、だ?」とこちらも中々に恐ろしい顔になって言い返した。

「...このような貧弱さで、お前は平和を守り抜けるとでも思っているのか?実に甘いとしか言えないな」

どう聞いても挑発だ。...普通に聞く分なら。ただ、このシンと別の“軸”のシンになる筈だった男であるアリオスから聞いたところによると、グレス王国を創ったのはアリオス...シンらしい。

なら、妹に執着するような奴に王の座は任せられないと言う事なのだろうか。...いや、やっぱり単純にシンの方がレーヴァに執着していると見せつけたいだけかもしれないけど。


ただ、そこまで挑発に乗るほどライゼオン氏も馬鹿ではないらしく、無視を決め込んでいた。

シンはそれにつまらなそうにしていたけど、それが当然の反応だと感じてしまうのは僕だからだろうか。

ともかくとして、一触即発の事態は収まったのだが...思い出したかのようにライゼオンがレーヴァを連れ帰ろうとして再びシンと口論が始まり、その状況がしばらく続いて...。



―――



「...えーと、そろそろ夕方ですけど?」

控えめなフェルのその声で僕含め全員の意識は呆れからようやく戻ってきた。

シンとライゼオンはまだ口論を続けたそうだったけど、レーヴァがライゼオンにあきれた視線をくれてやると途端しょげかえっていたのが面白かった。

「それで、あの...あなた方はいつまでいらっしゃるのですか?ここには客人用の寮など有りませんが...。」

再びのフェルの言葉にライゼオンははたして、うぐっと小さく悲鳴を出す。


「...それが、すぐにレーヴァを連れて再びグレスへと戻るつもりだったのだが...。」

シンに対しての言葉とは違って、意外と素直に話すライゼオン。こういう姿が主なのなら、王としてはいい器なのかもしれない。...レーヴァに対するコンプレックスが無ければなおさらに。

ただ、シンは相変わらずの無表情だった。何考えてるんだろう、と考えるにはレーヴァを抱き締めたり頭をなでたりという行為から、ライゼオンに対するけん制が邪魔だけど。


本人もそれを自覚しているのだろう、何故か嘲笑するような顔になっている...気がする。

無表情だから分からないが、多分そうなんだろう。うん。

「まあ、ともかく君たちは帰りたまえ。これは、学院長としての言葉だ」

その高圧的な言葉に「...しかし、...」と口ごもる程度にはレーヴァへの愛は重いらしいけども、シンがいるから目的が成就する事は無いだろう。ちょっと可哀想に。

...あと、フェルがその言葉に驚いていたのは見なかった事にする。


結局ライゼオンは折れ、すごすごと帰っていった。

最後まで未練がましくレーヴァを見ていたが、そのレーヴァ本人がシンに口づけしたことによって何かが壊れたのか狂ったように笑いながら護衛12人程度に連れられて帰っていた。

その、一番後ろにいた護衛に「南の国にあるアリオスと言う街に行けば、すぐに帰れますよ」と伝えてやり、後は手を振って送ってやった。


「...レイ?ちょっといいかな」

「?何?」

見送った後に、情報量過多になりかけていた昔のエミリアではなく最近のエミリアの顔が、これも相当珍しい事に戸惑ったような顔になって僕の腕を引っ張っていた。いつもならもっと強引な手に出ているのに、本当に珍しい事だ。


軽く引きずられかける様にして連れていかれた僕は、エミリアの本当に分からないと言う顔を向けられた。

「...アリオスに入ったことあるけど、なんでアリオスに行った方が早く帰れるって言ったの?」

その言葉に、僕は頭を抱えてしまう。完璧に失念していた。レーヴァとエミリアは、僕とシンの様にあれを体験していないんだった。

頭に疑問符を浮かべているエミリアに、僕はそれを伝える。


「...成程。じゃあ、ボク達と会うことになったのもそこで迷い込んだせいってことなの?」

「うん、まあ...。」

「へえー。...じゃ、結果的にはよかったんじゃないかな?もう一回同じことを繰り返すんだったら、迷い込んで欲しいんだけど」

ちょっと悔しいお言葉だ。だったら、その時は最初からガリアン候に<封印ギジャン>を使わずに魔力を消滅させたいものだけど。


そんな僕の心を読んだのか、エミリアにはくすくすと笑われた。

そんな姿を見ると...やっぱり、一歩離れたところにいるのが一番楽しいなあ、などと考えてしまうのだった。

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