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境界の物語  作者: ∀・1
魔滅・新大陸
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フェル

「...僕の望んでいたのと違う気が…。」

「あきらめた方が良いよ。そもそも、これは僕たちの来た...それこそガイオと戦い始める前の、8年前からできてるから。狂ってるけど、その分面白いよ?」

「意味わかりませんよ...。」

そうだね、言っている側が分からないよ。この非日常に慣れていない少年Aを見ると、思わずそう思ってしまう。狂ってるけど面白い、きっとそんな言葉はラギアス大陸に行っていなければついぞいう事は無かっただろう。ついでにいえば、ガイオの暴走で世界が滅んでいたに一票。


「では、新たな少年が来たことだし自己紹介してもらおうか。では、自己紹介を頼む」

頼む、と口では言っておきながらもう壁に取り付けられた板に名は書かれている。フェル。平民らしいけど、その分頑張ったことが伝わってくる。というか、此処に入るためにどういう事をしたのだろうか。僕たちはあの後誰もなっていないであろう『∀』なる称号を持っているのだが。

「...あ、えーと...フェルです。『魔災戦』の時には剣で戦ってました。でも、子供がいるとかではないです。魔力が無いので、空気中の魔力を吸う、」そういって握りこぶしを創り、「このくらいの大きさの吸魔器を作って魔術を使ってます」そう言った。


...中々に天才のようだ。少なくとも、この帝国の開発部と同等ぐらいには優秀じゃないんだろうか。

そんな事を知ってか知らずか、「あ、でも流石に魔力の形を変えて核撃魔術にすることは出来ません」と取って付けたような補足。因みに核撃魔術と言うのは、レールガンダーティボムタイプの上位互換で広範囲の爆破と熱風を与える魔術だ。とんでもない魔術だけど、3km程度の距離で放つと巻き込まれかねないほか、使いすぎると体毛が抜けたり血を吐いたり、最悪の場合さらに苦しんで死に至る恐ろしい魔術...とセイタが言っていた。切り札的な物らしいけど、僕はそんな危ないものは使いたくない。使うなら、最近デレルベン王が計画しているらしい『外宇宙進出及びそれに伴う外宇宙探査用小型多目的艦艇作成計画』、通称『〇号作戦』の兵器にしてほしいね。因みに、その小型艦艇を宇宙に出すのは僕らしく、つまりはあちらが失敗したら何とか宇宙に物質を作って一人きりの孤独を一生過ごさなければならないのだけど、まあ何とかしてくれるだろう。でも最初に送り込むのは魔物の実験体にしてほしい。


まあそもそも吸魔器を作ったことがセイタの目に留まったのならばいい事だし、勉学が出来て発明もできるのなら開発部へと進む前のユウの様に、数えきれないほど莫大な距離のかなたにあるらしい『地球』に行ってみたいものだ。勿論、行くとなったらヒバナ家御一行にお任せするほかないのだけど。

「まあ、この様に中々な異常の塊ともいえる」

「いじょう、ですか...。」

フェル少年が悲しそうに顔を落とす。でも、此処で異常というのは実質普通だと言っているのと同義なのだ。それに気づいて欲しい。


「たのもーう!」

だから、そんな声が扉の開く音と一緒に響いた時、僕は飛び上がらんばかりだった。



―――



「全く、王家に伝わる大昔の古文書に『いつか王女が出奔するだろう』などと書いてあったから良いものの、そうでなければ今頃私は...私はあぁぁ~!」

そこにいたのは偉丈夫だった。が、恐らくレーヴァに向けたのだろうその言葉の尻に泣かれては困惑するほかない。

「...めんどくさ」

レーヴァのいやそうな顔は時々見るが(最近見たのはレグをこの部屋に入れてはならないとセイタに言われたとき)、最上級に嫌そうだった。というか、言葉通り面倒臭かったのだろう。


次いで、その夫となったシンを見る。

...もう一度見たのなら殺されると感じるような、激怒し過ぎて感情の振れ幅がなくなったかのような無表情だった。

そしてその男の周りにいる、恐らく騎士だと思われる一団を見ると「...ああ、やはりヴィーラ様に会われるとああなってしまわれるのか」と、レーヴァのファミリーネーム?を呼んでいるのが聞こえた。というか、多分あの男が使える対象なのだろうにこのように悪口を言っていいものなのか。


「ヴィーラ!何故国を出た!そして、その男は何だ!私はそのような男を認めん‼」

...これがものを分かって言っているのなら、僕ですらも呆れてしまう。目は節穴か、とよくセイタが言っているけど、それはこの男にこそふさわしい。多分、レーヴァに集中しすぎるあまり抱えているレグに気付かないのだろう。...レグのあったかさを知らないからそんな反応が出来るんだ、きっと。

レグに気付いてくれー、そんな無言の思念を送っていると横から声がした。


「...お久しぶりでございます、ヴァーダルカ皇太子さま。いえ、ライゼオン殿下」

エミリアだった。いつもよりも更に低い...軽く背を曲げたような体制になって、しかし顔は男...ライゼオンと呼ばれた男へと向けられている。そう言えば、一応エミリアはレーヴァの護衛だった...筈だ。でも確かゲルググ辺りから僕への好意を二人きりの時は出していたような...。そう考えると、シンとレーヴァに汚染されたのだろうか。

「レグ様をご覧になればわかる様に、レーヴァ様は婚姻、出産を行っています。いまだに『本国へ戻れ』というのは、無理があるかと」

久しぶりに見た、僕に甘えない姿勢。ずっとこれで、僕の前でだけ甘えん坊になればなあ...と考えてしまうのは、恥ずかしがるようにして俯いていたころのエミリアを再び見てみたかったからだろうか。

ともかく、それでしばらく無言は続いた。

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