魔物との戦争―――5
ディスペアーの特攻から数分後。体に大量の火薬を仕込んでいたのか、煙が大量に舞っていた空気がようやく透明になってくると、そこから大きな何かが見えた。
それは何かの宮殿のようでいて、屋敷のようにも思えてしまう。
とにかく要塞とは思えない、自らの住んでいたアリオスにある生家ヴェルドリア邸の様な攻撃性の高い屋敷ではなく、王都にあるような(実物を見た事の無い為、たぶんだけど)上級貴族の屋敷に不格好な一対の翼と、その前方に付けられた蹄のような何かから魔人が射出されているのを見るとガイオの居城なのだろうか。
「...橇、か。まあ、魔人と言う猟犬を連れたと言う意味では間違ってはいないのだろうが」
セイタの呟きに納得してしまう。だが、僕は遅まきながらなぜここにセイタがいるのか?と気付く。
まあ、どうせ魔力がないのに魔術の様な物を使うセイタの事だ。謎の力で魔人を倒してきたのだろう。
「猟犬ねえ。私はどっちかって言うと自走地雷に思えるんだけど」
「優はなぜここにいるのだ!?一応、狙撃隊の隊長な筈だろう!?」
しかし、ここにいるユウに関してはセイタと同意見だ。魔人を倒す今の主力である狙撃隊、その隊長であるはずなのに何故。
「それは由紀に丸投げしてきた。ああ見えて、由紀も射撃は得意なのよ」
どうと言う事もない、というふうに言うユウ。あのユキが射撃が得意だと言うのは信じられない。しかし、何故かセイタはそれで納得した様に頷いていた。
「...そう言えば、デスティニープランの中で銃特化の作品が出来たと興奮しながら伝えてきたのは由紀だったな...。」
聞いたことのない言葉だが、なんとなく理解できるような...できない様な言葉に戸惑っていると、ユウは続ける。
「ま、そういう事だから。取り敢えず、私はのんびりしてる事にしたってわけ」
そのまま、何処からか出したソファに飛び込むと(これを見る限り、いつの間にかユウも<空間収納>を手に入れていたことになる)、「ふああーぁ...。」と滅多に見せない欠伸をしてそのままソファの上で丸まっていた。
いつもとは違う光景に唖然としていると、遠くから砲撃音。聞き慣れた狙撃銃の音だけど、いつもと違って比較的静かなここにも音が聞こえてしまって、戦闘中なことを思い知らされた。
―――
「...ひまだなあ」
魔人は少しづつ出現の量が減り、少しづつではあるが要塞外に進出も可能になっている。
ガイオの居城が姿を現して3ヶ月。長い長い期間ではあるが、この3ヶ月で要塞の周りにちょっとした町が象られる程度には進出しているのが分かる。
要塞を中心として、少しづつ低くなるように街を広げる。そうすることによって魔人が侵入しても何とかなる...と思われる程度には一般兵器の類が強い。
そもそも魔人には魔術が効かないので、どうしても実弾武器が優秀になる。
銃も強いけど、それはあくまでも銃であって限界がある。たとえば、味方に当たったり見えるよりも下に堕ちたり。
だからこそ、弓や投石が優秀になる。魔人に対しての切り札である覇宙城ガルヴィンデガイオは隠したまま、魔人を殲滅する日は続く。
...更に二か月。なんだか、妊娠している女性が多い。確か5ヶ月くらいで腹が膨らむらしいから、ガイオの居城が現れたころに交わったものが多かったのだろうか。
命の危険があると生存本能がそうすると言うが、まあ実際そうらしい。
ただ、僕の周りの女性(ユキ、ユウ、レーヴァ)はそうなっていないのを見ると、案外その相手が強いせいかもしれない(ユウはそもそも相手などいないだろうけど)。
あと、その妊娠している女性の中には未成年の...10歳ぐらいの者も結構いる。
それに比例するように未成年の男子が戦いに向かっているのを見ると、若気の至り、というやつか。
...まあ、僕はそういう事は無い。というか相手がいない。頭の中でここ一年ぐらいご無沙汰な少女の笑顔を思い出して胸の奥の方が疼くものの、それはガイオを倒して平和な世界をガイオに見せてからだ。
―――それで、僕がエミリアに対しての好意的な感情が少しづつ変わっていたのには気付く事は無かったが。
半年後。
少し前にデレルベン王が元首の『神聖ライデオル帝国』を立ち上げ、以前からあった冒険者の技術に加えてかつて技術者だったらしいセイタが魔力に反応して個人識別を行う“戸籍原本”なるものを作り、それをまとめる台帳を大気中にある魔力を吸収してそれぞれの家族の構成を書き込むと言う、特殊なシステムを作っていた。
街並みはガルゴン王国もかくやと言ったところで、全てが...それこそ、壁も舗装も神龍ノ鋼でできている為に魔力と物理攻撃に対する相当高い防御性能を持っている。
これは魔人と戦う際に家に兵器が墜ちて家屋が破壊されるのを防ぐためでもある。
そんな感じで、いまはレギュリア唯一の国をこうしておいているわけだが...若い夫婦も非常に多い。組数で言えば、4600組ほどか。それだけが以前に交わっていたと言う事だが、しかし未成年で独り身なのは二桁にも満たない年齢の者ぐらいなので、生存本能は恐ろしい。
いまや食料・衣服・兵器全てを生産し続ける生産工場と化したラィデォル要塞は、これまたセイタとデレルベンが共同開発した<魔吸器付き大規模生産工廠>と名付けられたものが置いてあるが、それを使用するために一定以上の魔力を吸収・それに勝る量の魔力を放出して人間に還元されるので肉体が強いようになっている。
そして、プラントのものを食べて魔力に高い適性を得たライデオル帝国の者は、その大量に放出される魔力を得た強い魔物たちと戦ってさらに強くなっていく。
ここらで見られるのが、ラギアス天地中央部で見たようなアーマイドなどの軍隊型や御馴染みスレイヤーの群れなどの強力なモンスター、それにワイバーンなどの下位飛竜も見られる。
そして、更に数年が経つ。




