魔物との戦争―――4
一月後。なんだかんだで僕たちは今日も生きている。まあでも、相当攻め込まれてはいるけど。
二週間前、一か八かで使った魔術によって要塞は拡大し、バイオユニットに当たる面積も増加した。そして勿論防衛担当範囲も広くなり、多少守りやすくはなった。
デレルベン王が言っていた機甲兵器はすでに地下のライデオル要塞に取り込まれ、ラィデォル要塞の技術の糧となってもらった。
なんだかんだでアリオスも滅びかけたのか、突然少し高い位置から住民たちが湧きだし、それが終わった後にお父様が空から降ってきたのが先週のできことであり、見える範囲ではレギュリアは此処以外滅びたらしい。何とか出来るのがいいのだけど、現実問題魔術は魔物が受け付けなくなっており、寧ろ反射されて術師が死亡する事故も発生した。
つまり実弾兵器かビーム兵器、そして爆弾系に攻撃方法は固定され、しかし大量の数のせいで少しづつ押されていた。むろんこれ以上圧されると、射角及び衝撃での要塞へのダメージが看過できないものになる為全力で倒してはいるし、さらに改良して壁に実弾を放てるようさらなる高攻撃性要塞へと変貌してはいるのだが、時折ランダムな方向から魔術が要塞に命中するのが厄介なところだ。
これ自体は大して厄介と言うわけではないのだが、この悉くが範囲攻撃系の魔術であり、命中するたびに近くを担当していた人物が負傷、もしくは死亡という形になっていた。
相手も魔力を使う以上無限には撃てないのか間隔が長いが、それでも魔術を撃たれると言う事は要塞の壁が備えている<魔術に反応して周囲の魔力を吸い込み再生する>機能が使われて僕の魔力が十全に補給されないと言う事をも意味する。最近は魔力を使わない実体剣を持って単騎魔物の群に突撃しているから比較的ましなものの、夜の間に大して魔力が回復せずに翌朝製造する分の実弾が必要数以下になることも増えてきた。
それを補うために大量に魔物を狩って質のいい魔石から魔力を補給するから良いものの...魔物がいなくなって、魔術のみが殺到すればかつてあったが魔術によって大破してそのまま廃棄したレールガン以外に倒す手段がなくなり、そしていずれ万力で潰されるが如く魔物の群れに屈するのだろう。
そしてそれは、魔物が殺到する今の状態だとしても...ガイオが本気を出していないのだろう、今の状態でも起こりうることなのだ。
―――
その日の朝は、何やら騒がしい音で目が覚めた。
目を開けると、その場所は見慣れた天蓋があるベッドで、横には見慣れたガイオ君がいた。
人間は裏切る、だから人間は滅ぼさねばならない。それはそうだと思うけど、ボクはそれは違うと思ていた。
だって、裏切らないではなしかけてくれた人がいたんだから。その人はボクのとっても大切な人で...でもなぜか、ボクが思い出そうとすると靄がかかったようにその人の名前も姿も、何もかもが思い出せなくなってしまう。
それに、こうやって思い返せているのもメモ書きがあったからだ。
『ボクを守っている人は、ボクの敵だ』。
正直、ガイオ君は悪い事をしているようには思えない。寧ろ、悪い事をしている人を倒そうとしているのだから良い筈だ。なのに、何でこんなふうに書いてあるのだろう。
毎朝、これを引きちぎろうと思うけど...靄がかかった向こうから名前が呼ばれた気がして、いつも破けない。
「今日はちょっと近づいてみたけど、どうかな姫殿下」
この大層なボクの呼び名も、最近は気に入っている。とっても優しくて、頼りになるガイオ君。たまに抱き締めたくなったり、ずっと一緒に居たいと思えるほどに、良い「人」だ。
...でも、なぜか。ボクの心の中で、ガイオ君以外のヒトが何かを呼び掛けてくるような気がして...ちょっとだけ、そのよく思いも出せない声と、叫んでいる内容に...心惹かれる気がする。
こんなボクの心に...今日もボクはおかしくなってしまうのだろうか。
―――
大量にいた魔物もやっと尽きたのか、今度は魔人主体の軍勢が来た。
魔術を用いた反射速度と単純な速さを強化したと思われる殺人的な加減速と回避行動をとる魔人たちは狙いにくく、それ以前に対人と言うのが大きくて弾幕は相当薄い。そしてこれで押しつぶすのだろう。
...そう考えて、僕は突撃も考えた。特攻すれば比較的損害を与えることは出来るだろうから。
ただ、こちらの損傷も激しくなるのは考えるまでもない。要塞が落とされる事は無いだろうけど、それでも致命的なほどにはダメージを追うだろう。しかし磨り潰されるのも時間の問題。さて、どうしたものか。
「...僕が特攻する」
考えに考えている間に、そんな事を言ったのはあろうことかディスペアーだった。
何とか止めようとするものの、言葉が出ない。それに...(分体だから、別に死んでも蘇らせればいいんじゃないのか?)そう思ってしまう所もあった。
止められないままにディスペアーは突撃し...そしてしばらくした後、遠くで爆発が発生。その十秒後ぐらいに、爆発音が僕の耳に届いたのだった。




