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境界の物語  作者: ∀・1
βストーリア
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魔神

「...えーと?コスプレかなんかなのか?」

イアが平然と、しかし戸惑いを隠さずに問う。

「そのコスプレって言うのは確か此処より1億8900万光年離れたところにある星の言語だったかな?違うよ。僕は自分の意志でこうやっている」

「...なんでこんなことを?」

すると、元転生神は平然と言いのける。


「ただ単なる暇つぶしさ」

その言葉に、兵士の一人が激高して斬りつけたのちに言った。

「その暇つぶしで、我々を巻き込むな!この邪神めえぇっ!」

斬りつけられたはずのガイオはしかし、幻影となって消え失せる。

その代わりに、声が響く。

『人間もするだろう?暇つぶし。むしゃくしゃしたら、近くに偶然スライムがいて小石をぶつけた。それに、人間社会を構成する金とかいうのを手に入れるために、幾ら強い人間でも魔物を殺し、家畜を殺す。全く同じことなのに、なぜ僕が避難されなきゃならないのかなあ?』

全くの正論だった。しかし、「...それを行う側の内には分からないものだ。行われる側の苦痛、嘆き。ガイオ様はそれを分かって行われているからこそ世界にとって脅威となり得るんだがな」

アリオスがしみじみと言った言葉に「そうだねー」と姿を現して返すあたり、ガイオと言う名の意識を持った魔神の事がよく分からなくなっていった。


「...ま、どうせ僕はそのうち死ぬからさ。最後の一回ぐらい、世界を創り変えたっていいじゃないか。人は過ちを繰り返す。それなのに一回だけ規模の大きな『業務』を行う事は悪い事なのかい?」

...ふいに、分かる。

この少年は―――エミリアと同じなんだ、と。

心はとても弱くて、そのくせ環境は彼にとって非常に悪く、いつしかそれに慣れた―――その行き過ぎた形。


「...じゃあ、僕が作り変える」

「え?」

呟きに、ガイオは反応する。君にできるはずないよ、と嘲笑するような風すら伴って。

それでも僕は、ガイオを見てはっきりと言い切った。

「君が望もうと望むまいと、君も幸せになれる。そんな世界に」



―――



ガイオと言う名の、弱い心を隠した人外は暫く目を見開き―――そして、人がするように、笑った。

「フッ、ふふっ...。...そっか。僕みたいな『邪神』でも幸せになれる世界、かあ。...欲しかったなあ、そんな幸せな世界...。」

言葉の尻は感傷に浸りながら。すでに幾千の人を死亡させた者が見せる顔だとは思えない、泣き出す寸前の子供の様な顔すら伴って。

そして僕の方を見ると、目に光る物を見せながら、毅然とした口調で言い返した。

「...でも、今の世界じゃそれは無理だ。世界は変わるよ。でも、創り変えるんじゃなくて、―――」


しかし、その言葉は横から伸びてきた槍によって中断させられる。

槍が突き刺さった黒色の翼を見て、次いでその男を翼の一振りで槍ごと消滅させ―――そして、僕を見つめた。その目には、明らかな憎しみと怨み、そして―――隠しきれていない、悲しみがあった。

「...僕は、これでも人を信じてきた。君となら、確かに素晴らしい世界を創れる。そうも思えたんだよ?」

翼が大きく動かされ、次第にその風は強くなる。


「―――なのに。やっぱり、人間は騙し、裏切り、利用して。どうしようもないね」

黒き風を纏った、魔力で構成された風に押しつぶされそうになりながら、叫ぶ。

「そんなつもりは―――」

「五月蠅いね。結果として、君は僕を裏切った。それだけが真理であり、答えだ」

しかし、黒き風となったガイオは聞く耳を持たない。

「...答えることもできないのかい?はあ、残念だよ」


「え?うわ、やめ―――」

次の瞬間、エミリアが黒い風に呑み込まれる。

「エミリア!」

『そんなに心配しなくてもいいよ、この少女は殺さないし何なら姫として扱わせてもらう。まあ、少しだけ寂しい思いをしてもらうけど―――なんて事は無い、この少女の、そしてこの少女が愛しい君が死んだあと、すぐに後を追わせてあげるよ。永遠に、二人なにもが揃っている闇の中―――ふふっ、こんなに優しい事をしたのは今までで初めてだね』


黒い風は空に溶けていき、エミリアも解けていく。

飛行フレイ>で離れていく黒い風を掴もうとしても離れていって―――掴むことなく、手は空を掴んだ。

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