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境界の物語  作者: ∀・1
βストーリア
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二周目の旅路

「...あれー?お兄ちゃん、大丈夫ー?」

気の抜けるような声。その声の主には、心当たりがあった。

顔を上げると、不思議そうな顔をした子供がいた。

...恐らく、此処はローガヴァル教会だ。という事は...そこまで思って、不意に此処に至るまでの経緯を思い出す。

僕が肉体に呪いをかけられ、アリオスが暴走し、グレスに赴いてから龍王二人に解呪してもらい―――そして、エミリアとレーヴァを亡き者にしてしまった。


「...レイ?大丈ぶ―――わっ!?」

エミリアの声が聞こえ、つい抱き締める。

「あ、あの、レイ、人が―――」

「...いなくならないで欲しい」

消えた“軸”から来た、嘗て失ったものに対する心からの声だった。

エミリアは訝しげな顔をしていたものの、やがて優しい顔をして言った。

「...ふふ、仕方ないなあ」

頭を撫でられながら、僕は共にいる喜びをかみしめた。


「...ずいぶんと嬉しそうだな、レイヴン・ヴェルドリア」

「アリオスも理由は分かるんじゃないんですか?」

「...まあ、な。少なくとも、今までの“軸”と違う動き方をしていれば、そして自らもその経験があるのならば想像などたやすい。大方、そちらの「俺」がこの“軸”に干渉させたんだろう」

全くもってその通りです。

相変わらず無愛想なアリオスの言葉は、少しだけ―――ほっとしているようだった。


少しして、キッチンの方からユウとシスター・アンバーの声が聞こえる。

以前もあった、豚肉論争だろう。僕には多少なりとも関係ない事だが、その後品種改良されることになるのは今は分からない話だ。

ともかくとして、豚肉を使った料理はこちらでも大好評で、ついでに豚汁も教えていたのでこれからはこのローガヴァル教会に正式に豚が卸されるだろう。

...いや、まあこの後の事は分からないから多分、が枕詞に着くのだけど。



―――



「...それでは、いつかまた相まみえよう」

「ええ。あなた方の旅路に、神の御導きのあらんことを」

前回同様、そんな感じで別れると、ヴァルが「...ん?ようやくついたか。じゃ、早速―――」と言った感じでアホ面を出す。

【戦車】内でくすくすと笑いながら、僕たちはガルゴン王国へと向かっていった。


今回は超高高度を飛ばずとも関門の兵が消えていたため、透明になることで侵入できた(と言っても、本来の関門は鉄扉によって封印されていたが)。

【戦車】にステルス性もあったなんて...と、心の中で大本の制作者であるセイタへの心の中の評価が上がった(ちなみに、そのあとに「ああ、それとこの世界におけるVRハード、仮称『インカーネイト・フューチャー』の基盤が完成したため、計画の次段階へと進むことができるぞ」と言ったことで評価は再び最低へと下落した)。


そんな感じで、僕たちはアリオスの言葉通りにデルマイユ伯領ブロットル村へと赴く。

そこが、どのような所なのかは自分の身をもってよく知っている。

あそこに今いるのは、ガリアン―――魔人だ。

でも、それを避けて通ればベルベッドへ―――祖国へと被害が及ぶのは理解しているつもりだ。

「...レイヴン、上手く立ち回る様に」

アリオスが言いながら次に目を向けた先は、エミリア。そこにどこまでの意味が込められているかは彼がどれだけ僕たちの関係について知っているかによって変わるが、恐らくはただの恋人ぐらいにしか思っていないのだろう。...隠しているつもりだけど。


今回はギルドから入っていったわけではないために、前回見ることのできなかった光景が―――焼かれた小麦畑が目に入ってきた。

パンに限って物価が上がるのは許せないと思った。何より、そのせいで満足に買い食いできなくなったらどうしてくれるんだ!

そんな意地汚い理由とも知らず、決意に燃える僕の瞳を見て「その調子だ、レイヴン」と言ったアリオスは素直なのかそうでないのか。

ともかくとして、僕はガリアン戦へと赴いた。


相変わらずの魔物の量は複層展開した魔術で相殺して、力尽きかけている兵たちの前に立つ。

気のせいなことを祈るが、前回よりもさらに禍々しくなっている気がする魔人に対して、僕はつい最近に構成した魔術をぶつける。

「<禍滅光ダスト・ロウディ>」

たった、一言。それだけなのに、魔人の身体は光り輝いて―――青黒い光が、どこかへと行く。

そして―――空色のローブと、魔人の時とあまり変わらない杖を持った老人が現れた。



「...いや、申し訳ございませぬ。本来ならば私はこの地を守るべきものなのですが...。」

暗い顔をしながら語る老人―――ガリアン・ディア・ソレインは、魔人化した原因をとつとつと語った。

―――私たちは、というより私はこの地に再び結界を張り、魔物の抑制を行うためにやってきていました。因みに、この者達は護衛です。一応、剣を用いて魔術師を守るのはうちもですからね。

...そして、大規模結界術を行使しようとした時―――。

「...何か、真っ暗な闇に引き込まれるような感覚があって...その闇の中で何かを若い男のような声に言われたような気がするのですが、生憎と覚えておらず...。そして、目覚めればこの状況だった、というわけです」


僕には、その闇の中の『若い男』に心当たりがあった。

堕天した、転生神ガイオ=ヴァイオの事だろう。以前、夢の中で見えたその様子を思い出せば、幾つか思い当たる節がある。

「...その闇の中で、男に何かを呑み込まさせられたり、闇に包まれたりはしましたか?」

それが図星だったのか、目を大きく開くガリアン老人。

「...思い出してみれば、闇に包まれて...「僕の計画を邪魔しないでくれるかな?」」

その喋っている途中で、何かが天空より現れた。


「...貴方は?」

そう言うと、黒い一対の翼を生やした少年はさも不満そうに唇を尖らせる。

「今噂してくれていたじゃないか。僕の名前はガイオ=ヴァイオ、転生神だったものさ」

気軽に話をする目の前の少年が一連の犯人だと、そうは思えなかった。

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