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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
70/92

軸外転移輪廻転生

俄に外が騒々しくなり、僕たちは大通りの方を見る。

そこには6人ほどの小規模な団体の人たちがいて、服装的には騎士なのだろうか、ともかく格好いい服を着ていた。

「グレス王国衛兵団...?どうしてこんなところにいるのかな?」

エミリアがふとこぼした一言から僕の思ったことは正しいとわかったわけだけれども。何か、引っ掛かりがあるような気がしてならなかった。


一直線に、迷う事の無くこの場所まで来た衛兵たちは、一言「王がお亡くなりになられました」と告げた。

レーヴァの顔が生気を失い、白くなっていく。そのまま倒れてしまいそうになるのを抑えて、シンは言った。

「...それで、レーヴァを?」

「いえ、ひいてはおつきの方もお連れするようにとの命令でして...。」

...なんだかきな臭い気もしないでもない。でも、それを確定させる情報などないから、仕方なくシンは頷いた。


「...それでは、また会いましょう」

そう言って足早に立ち去っていく男たち。

その姿が見え無くなった途端、「追うぞ」アリオスが口にした。

「追うって...あの人たちを?なんでですか?」

疑問をぶつけると、この“軸”を絶望に追いやった張本人は言いのけた。

「奴らが、死刑執行人エグゼキューターだからだ」



―――



僕たちは、全力で飛んでいた。

飛行フレイ>を使うよりもより早く飛べる方法、つまり<風嵐テンペスト>を制御しながら全力でアリオスまで移動したのだ(アリオスは、風嵐を<スラスター>と呼んでいたが)。

勿論、アリオスに赴く理由は簡単だ。あの場所には―――あれがあるから。

「...あった...!」

うっそうと茂る、雨などないのに霧がかった林。

嘗て僕たちが心の赴くまま侵入し、そして二人に出会った直因。

転移の森があった。


「...よし、それでは全速力だ。早くしないと、奴らと二人の交戦―――いや、奴らによる二人の蹂躙が始まる」

あの衛兵たちは魔人化してアリオスほどの強さになっている、という事ならば確かに二人に勝ち目はないようにも思える。そもそもとしてのアリオスのステータスがおかしいので、勝てるのは僕ぐらいしかいないのだから。

二人はそこそこ強い。でも、流石にアリオスには負ける。

生き残っていることを信じて、しかし内心では二人の事を心配しつつ、僕たちは森を抜け―――荒廃したグレス王国の大地を踏んだ。


「...これが、グレス?」

開口一番、僕の口からそんな言葉が飛び出した。

嘗てラィデォルにも劣らないほどの高い技術と文明が見られたグレートデヴァルの大通りは舗装がめくれて土が焼けこげており、また建物も焦土に薙ぎ払われて崩れた残骸しか目に入らなかった。

と、僕の腕を容赦なく引っ張る力に顔を向けると、アリオスだった。

「こっちだ」

言われた通りに進み、どんどん裏路地を通っていく。

心配になって、「こっちで合ってるんですか?」と聞くと、

「間違いない。俺はこの場所だけは変えない様にレグに言いつけたからな」

自身気な声がアリオスのものではない喉から出た。


...シンの言葉通り、裏路地の奥まった方に地下通路があり、そこから潜っていく。

本当にこの先に?とは思うものの、如何せんこの先にあるという証拠が強すぎて二人についていくしかなかった。

「「...この先だ」」

その扉を開けると、少し遠いところから聞きなれた音が―――剣のぶつかる音が聞こえてきた。

少し片方が押され気味なようだ。そしてその剣の持ち主と思われる声がして―――冷たい汗が流れた。

「...レーヴァ様、死なないでください!」


シンが暴走を始め掛けていた。

今すぐにエミリアが手を打たなければ、魔人を切り倒した後エミリアも斬り殺すだろう。

「...はああぁぁッ‼」

珍しく裂帛の気合を込めたエミリアの声。魔人の最後の一人だったのか、小さく息を吐く。

無言で二人を促し、僕はホッと息をついた。

なんだ、二人とも死ぬ事は無かったじゃないか。レーヴァは少し危ないかもしれないけど、<時間遡行スリーパー・オン>を使えば問題なく回復するだろう。

そう思っていたのに。


僕たちが見たのは、エミリアの後ろから人の形をした影が―――レーヴァの影が伸び、エミリアの腹を深々と剣が貫いた様子だった。

「エ...っ!?」

エミリア、と声をかける途中で声が裏返ったのも気付かずに、僕は駆け寄る。

「レー...ヴァ...?」

レーヴァに手を伸ばしたシンの両腕は、数瞬の内に切り落とされる。


「...すまない!」

そう言いながらアリオスは戦闘行為を始めるものの、レーヴァは追随するところか寧ろアリオスを突き放すように激しく舞う。

その後ろには青黒い光が、しかしアリオスのそれより不規則に舞い―――まるで、ガリアンのようだと思った。

僕は非常に悩んだ。此処でレーヴァを切り捨てるべきか、否か。


エミリアを見ると、彼女の背からも青黒い光が纏わりつき―――そして、優しく包むように動いた。

「...ん...」

起きる気配はない。しかし、彼女は時折瞼を開きかけては閉じてを繰り返した。

...レーヴァを止めることが先決だ。

「...切り捨て御免」

そう呟くと、僕は全力で踏み込む。地面が割れる音がして、その瞬間跳ねる。


レーヴァは、あらためて見ると魔人その者だった。

眼は赤く染まり、目の間に複眼が4つあった。

口は本来の所の他に左右に一か所ずつ増えて、口には一文字ずつ、『ご』『め』『ん』という形をしていた。

あの魔人たちのしでかしたことを思って、僕は無性にイラついた。

そして、アリオスが「<紫雷八光華ガドヴァルトスド>」と呟くと、レーヴァ―――だったものが、けいれんを起こした。


動かなくなったレーヴァ。死にかけているのかもしれないけど、まずは青黒い瘴気を抜くことが先決だ。

悪しき瘴気を消滅させるイメージで、魔術を構成する。

「<星光破衝波スターレイン・ウェーブ>」

半径5Ⅿまで広がり、アリオスが一瞬苦し気に息を吐く。

そして、レーヴァとエミリアに<時間遡行スリーパー・オン>を掛ける―――筈だった。


「...え?」

魔術を行使し終わって、慣れない魔術に目を閉じた為どうなったのか確認できず目を開けると、そこには一振りの剣とロケット、そして短剣―――というよりもナイフと呼んだ方がいい―――が置いてあるのみだった。

レーヴァはどこに行ったのかと見渡しても、何処にもいない。

「...レイ」

いつもの口調で、しかしどこか棘のある言い方でシンが僕に言う。

「...レイのせいで、二人は死んだよ」と。



「...そんなわけない。悪しき瘴気を消しただけであって、死ぬはずは―――」

「魔人の肉体は、すべてが悪しき瘴気で構成されている。そこに悪しき瘴気の消滅をしたら―――どうなると思う?」

「...でも、エミリアは」

「肉体の半分以上が消し飛んでいる。死ぬのは間近」

急いで彼女のもとに駆け寄ると、いつもの彼女がいた。しかし、顔は苦し気だ。


ほっと一息つき、「エミリア」と呼びかける。少し鈍い反応。

「...レーヴァ様、ゴメン」

そう言うと、隠していたらしい短剣を僕に取らせる。

その時に触れた彼女の手は、ほとんどが骨だった。

驚いて聞きただすと、

「もうそんな時間はないから、さ。取り敢えず、ボクの言葉を聞いてよ」

そう言われて、先程の手の様子を思い返して何も言えずに聞くことにする。


「...まあ、はっきり言うと夢なんだろうなあって思うんだよね。

レーヴァ様が居なくなって、ボク一人きりで寂しく暮らす、そんな夢。

だって、ボクのそばにはずっとレイがいてくれるから、だから夢な筈なんだ。

なのに、なんだか眠いんだよね。レイ、ちょっと横に来て」

さりげなく甘えるエミリア。いつもなら見せないそんな顔が、本当に夢だと思っている証拠なのだろう。


その細い体に腕を回す。服の中で、小さくぺきっと言う小枝の折れたような音がした。

「...夢、だよね?レイがそんな悲しい顔なのは、これが悪夢なんだら...だよね?」

半ば朽ちかけている顔から涙が流れた。

「......勿論。きっと、目が覚めればいい朝日が出てるよ」

すぐには答えられなかった。答えれば何の事は無かったが、それでも―――。


「...じゃ、お休み。また、良い朝を迎えれればいいね」

そう言って骨の手を見て...悲しそうな笑顔をした。

そして苦笑すると、目を閉じて。

身体の周りを覆っていたアリオスのものと同質の青黒い瘴気が消えて、彼女の肉体は灰に消えた。



―――



「...ッ」

何かを言おうとして、喉が渇ききって掠れた音のみが出た。

「...レイ、シン」

アリオスが気の毒そうに言葉を漏らす。しかし、耳には入らない。

腕の中にあった短剣。レーヴァが彫って指を切ったのか少し血痕が残る字体で、『忠臣の剣』と書いてあった。だが、涙で滲んで『衷臣の剣』と見えた。


ふいに、背中が叩かれた。

「...また、二人が見たいか?レイヴン・ヴェルドリア。―――いや、特異点」

アリオスの声に、振り返らずに首を振る。

「なら、こういえばいい。―――――」



そして、僕はそれを口にした。

特異点のみが使える、“軸”を移動する一度きりの技。

「<軸外転移輪廻転生《ポセッション・ワールド・レヴィオヌヲ・レグリガルダィ》>」

一旦物語は終了。と言っても普通に続くが。

てことでどうも、作者の葵です。

今回がいったん物語前半戦、αストーリアの終わりになります。

普通にβストーリアが週末から続くよ!別に打ち切りとかじゃないのでご安心を。

...え、もう見ない?イヤイヤ、もう一話ぐらいは...いえ、もう少しご覧くださいませお願いしますこの通りです(土下座)。

てことで!70部&αストーリア終結ということで、再び短編をば。



―――次作キャラ小噺―――



???「何それ?美味しいの?」

???「美味しくはないぞ?これはファイガン・クレイドルと言ってな、所謂VRMMOに接続するための機械なのだ」

???「フーン...。まあ、ボクがかかわる事はなさそうだね」

???「ほら、早く行くよー!」

???「あ、ハーイ!じゃあね、お兄ちゃん」

???「うむ!ではな、我が妹よ」

???「妹じゃなーい!ボクは男だーっ!」



―――



次作もよろしくお願いいたします。 葵

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