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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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戦神の血族

いつもの感じで下に降りていくと、先にはもうシンとレーヴァがいた。

いつも通り甘い言葉ばかり吐いているのかと思いきや、その横顔には真剣なものがあった。

ついついエミリアと顔を見合わせると、分からない、と言いたげに首を振った。

何があったのか理解できない僕たちは、その二人が向いている先にお父様がいるのを発見した。


もしかすれば、二人は婚約したいなどと切り出したのか。

そこらへんは僕には分からないまでも、何かしらお父様に関係のあることがあったのだろうとは容易に想像できた。

近づいていっても気づいた様子が無く、それだけ真剣な事なのだろうとは想像に難くない。


「...婚約したいのは結構だけどね、此処はどうするんだい?前の時の約束じゃ、シンが18になった時には此処の領主を継ぐんだろう?その時に相手が身元不明、なんてことになれば色々大変なんだよ?」

「前にも言ったけど、それでもいいなら婚約すればいいって言ったのは父さんだろ?だから、僕はこれでいいんだ」

「...はあ。分かったよ、でもシンが18になったらこっちで領主をしてもらうからね?」

「それだったら<平行人体パラドクシア・クローン>をここに置いて二人であっちにいるよ」

「そうか。...ま、僕も其のうちそっちで二人を見ることになるだろうから良いけどさ」


どうやら纏まった様なので、僕たちは今降りてきたふうに登場する。

「...何か話してるみたいでしたけど、何を話していたんですか?」

エミリアに感謝しながら、僕も彼女同様に首を傾げる。

だが、案外まともなようでおかしなところのあるお父様はそのまま話していたことを口にする。

「ああ、シンとレーヴァが婚約したいって言うからさ、それで話してたんだ」



―――



「ぶッ!?」

茶を飲んでいたレーヴァがその言葉で口に含んでいた茶を噴き出すついでに酷くむせ、シンがその対応に追われている間に僕たちは驚きに目を見開いていた。

婚約の事、ではない。お父様がそれを本人のいるところで口にしたことだ。

「ちょ、ちょっと、お義父さん!?」

レーヴァが取り乱しているのは初めて見たかもしれない。そんな事を思いながらも、僕は諫言しようとした。


「...フィリップさん。一応本人たちは隠し通せたと思ってたんですよ?それなのに言うのはかわいそうじゃないですか‼」

しかし、エミリアのその言葉で僕はその矛先をエミリアに向けざるを得なくなる。

「その言葉も間違ってる、エミリア!」

「えっ?」


驚きのあまりかズルッ、という音が聞こえそうなほど体を傾けると、そのままエミリアは階段を真っ逆さまに落ちて行ってしまう。

「わあぁぁっ!?」

こうなると、本当にエミリアは間抜けだと評したくなる。

ただ、そんな事は置いておいて僕はエミリアが会談を落ちていく速さよりやや早く動き、エミリアを受け止める。


「全く、こうなると本当に間抜けになるからなあ」

「う...。わ、悪かったですね‼」

頬を紅くして顔を背ける辺りが本当に可愛らしく思えてしまう。

ただそれを本人に言うと更に可愛らしい反応を取ると知っている僕はそれ以上何も口にせず、代わりに頭を軽くたたく。


軽くすねたような顔をするも、僕の腕の中に納まろうとする辺り案外満更ではないのかもしれない。

と、昔の僕なら考えた事は無かった事を考えると不意に笑みがこぼれてしまう。

「...レイ、なんで笑ってるの」

「いや、何でも?」

まだ拗ねているのか口調に棘が残る言葉を浴びせられても平然と流せるようになったのも一つの変化と言えばそうだが、それはどちらかというと退化な気がしてならない。


「...そういえば、レイとエミリアさんは付き合ったりはしないのかな?僕としては、二人なら別に婚約してもいいと思うんだけど」

しかし、そんな言葉を浴びせられるとエミリアはまたもや顔を赤くし―――そして、何故か僕に抱きつく。

「エミリア?」

その行動に驚きつつも問おうとする僕だが、「...何も言わないで」と目を背けながらも言うエミリアを見るとなんだかどうでもよく思えた。


「...お似合いだね。やれやれ、こんなのを見られたら戦神の孫もまた...なんてアリオスに言われかねないな」

是ばかりは本心のように思えるその言葉に苦笑しつつも、僕は皮肉のようにごちる。

「案外二人が仲いいのは知ってるんですよ。それとも、それは隠した方がいいんですか?」

苦笑交じりにそう言うと、お父様の視線が刺さった。

しかも、腕の中から「あのさあ...。」と咎めるような色を帯びたエミリアの声が聞こえ、見るとこちらもやはり咎めるような視線だった。


「...どうもこう、戦神の血族と言うのは重要なことに関して口が軽いのだろうな」

と、そこにアリオスが現れた。やはり苦笑していたが、その目は僕たち全てを見ていた。

「それに関してはどちらかというと神全体、じゃないかな?じゃなきゃ、その飼い犬の君に伝染るわけがない」

しかし、次にお父様がそう言うと僕の方を見、「...そういえば、この“軸”ではまだ明かされていなかったな」と呟き、どこかへふらふらと向かう。


...それはエミリアの事も指していたのだろうか?だが、流石にそこまで考えることは出来なかった。

「...レイ、ボクならお嫁さんになってもいいよ?」

そう口にするエミリアの暴走を止めるために思考を費やすと、そのようなことは頭から消えていた。

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