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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
61/92

ヴェルドリア邸その一

或る程度、というのは大体1時間弱らしい。

午後6時の鐘が鳴るころに下に降りると、食卓にはもう料理が並んでいた。

先には、もうお父様やアリオスが着席しており、何やら仲良く談笑していた。

しかし僕に気付くと顔を硬くし、次いでアリオスのみが眉尻を上げ、口一文字に言葉を放つ。

「...見た、か?」


素直に答えてしまうとバレると思い、「...?何のことですか?」とすっとぼける。

相当怪しまれたものの、一応は矛先を引っ込めて普通を装っていた。

しかし、実際の所アリオスとお父様が懇意にしていたのを見るとその行為が虚しいものに思えてくる。


僕たちが空気の悪い状態でいると、ようやくシンとグレアが並んでやってきた。

こちらは、経験が今いる席に座った二人と同じはずなのに仲良く談笑していた。

それを見るなり二人が目を細くし、何かを言おうとしているようにも見受けられた。

だが何かいう訳でもなく、二人が席に着くのを目を細めたまま観察していただけだった。


「...すみません、遅れました!」

「ちょっとレーヴァ様が道に迷って...。」

そこそこの時間が経ち、レーヴァとエミリア以外が揃ってからある程度の時間が経った頃、ようやく二人が大食事場に着いた。

本当に色々な所に行ったのだろう、レーヴァが着ている服の袖辺りに埃がついていた。


「じゃ、ご飯にしよっか。まあ、神の使いには要らないだろうけど」

「何を言う。俺にも必要に決まっているだろうに」

「やれやれ、神の名が聞いてあきれるよ」

「それは貴様の方だろう!」

食事前に僕(と恐らくはシンとグレア)以外にはアリオスと口論しているようにしか思えないやり取りを行うと、お父様はようやく食事を容認した。

傍から見ても少し元気がなさそうに見えたレーヴァは、一口食べるごとに目の色と表情を暖かいものにしていき、意外なことにエミリアも遠慮なく食べていった。


僕はこれらの料理が後で膨れることを知っているので、あまり腹に納めない代わりに味わうことにした。これはシンとグレアも同様であり、アリオスに至っては「...このような程度の低いものなど食べたくはない」と、もっと程度の低いものと思われる黒パンと酸っぱいにおいがテーブルを挟んで反対にいる僕にも分かるぐらいの臭いを持つ水を飲んでいた。

お父様やシン、グレアが驚いていることから恐らくは神界のものなのだろう。


「...それじゃ、後は風呂に浸かってきなよ。地下には大浴室もあるから、入るなら入ってね。僕は税徴収を行ってくるから」

珍しく何らかの感情がこもった言葉を放つと、お父様はどこかに行った。

本当に税徴収に行ったのではないと思いながらも、少し動向が気になってしまった。


「...よし、それでは残りの時間は自由行動とする。ただし、<転移ガレヲーノ>の使用は禁止だ。それでは、私は眠ることにしよう」

いつも通りの傲岸不遜な態度でそう言い切った白衣に覆面のままのセイタは、自室へと向かっていき―――途中で振り返ると、言った。

「...言っておくが、私は何があっても関与しないし、何が有ろうと私は眠り続ける。問題が生まれたのなら、各々で解決してくれ給え」


...どういう意味なのだろうか?特に問題を起こす気などないし、僕にとって言えば問題が起こるキッカケすらない。

それなのに、ぐるんっと首が後ろを向いた時に心臓が刎ねる思いだったのはなぜだろうか?



―――



特に何が起きるわけでもなく、僕は自室で眠りに付こうとしていた。

ただ、何故か眠れない。いつもと違う事と言えば皆がここにいることぐらいだが―――それも、ラィデォルにいるのと同じ状況下なのに、僕は違和感を覚えて眠りに付けなかった。

「...レイ」

だから、真横から聞きなれた声が聞こえても驚きはしたが声や表情に出す事は無かった。


「...寝ちゃってるか。じゃあ、横でいれば驚いてくれるだろうなあ...。ふふっ」

いつもよりも声は小さく高いものの、それがエミリアのものなのは間違いなかった。

ただ、少しいつもと違う気もする。

エミリアは僕の横に来て頭をなでると、本当に僕の隣で横になった。


彼女が酔っているのだろうか、と考えながら僕は一切ボロを出さない様に目を閉じていると、すぐにエミリアの寝息が聞こえ始めた。

酔っているならこの後に唇が出かねないが、幸いと言うべきか、―――不幸と言うべきかそんな事は無く、いつもレーヴァと同じベッドに寝る時の習性からか僕を抱きしめるのみで、それ以外にはいつもと違う事は無かった。


こんな事ならいっそエミリアを抱きしめ返してやろうかとも思ったものの、その前に眠気が忍び寄り、気付けばもう朝の日差しがカーテンの隙間から溢れ出していた。



「...あ、おはよう、レイ」

何もなかったかのように振る舞うエミリアを見て、頭を捻ってしまう。

しかし、敢えてエミリアに合わせることによって僕の身の安全を得る。

この後に人が来たりなんかすれば僕がエミリアに手を出したと勘違いされたかもしれないけど幸いそんな事は無く、僕たちはいかにもすれ違いました、とでも言わんばかりに談笑しながら階下に降りて行った。

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