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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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下宿宿のヴェルドリア邸

結局、特に細かい話があると言うわけでもなく僕たちは訪問から観光にモードをチェンジした。

お父様に脅は...もとい説明をして奪っ...もとい頂いた軍資金でアリオスの観光を行う。

金貨12枚と銀貨50枚の軍資金は僕たちにとって大きな金額だと言うのは言うまでもないのだが、エミリアと僕でこっそり僕の<恒久的次元収納デルヘドラ・イント>に隠してある金額に比べればはした金ともとらえられてしまう。

儲けるのも考え物だな、と思いながら僕たちはアリオスの屋台を廻ったのだが...。


「...前よりも高いね」

「どうしようもないんじゃないでしょうか?流石にこれが全部ボク達のせいとは言えなくとも、大きなきっかけなんだから」

「...俺が見た“軸”のアリオスよりも非常に栄えているな。本来ならここで魔人たちがいてもおかしくないんだが...。」


三者三様の意見の通り、大市と見紛うばかりだったアリオスの物価は相当物価の高いはずのラィデォルすら霞むほどだった。

以前、僕とシンがここにいた時の物価で言えば、今ある軍資金すらも金貨5枚ほどの価値と言うことになる為、今の物価上昇率が異常なことを物語っていた。


「...ただ、こんなに高くなったら町の奴らはどうするんだ?いくら何でも生活できなくなるんじゃないのか?」

と、僕の懸念をそのままイアが口にする。

それもそうだ、物価が日々上がっていくのなら得た金すらもあまり価値がなくなり、どんどん貧しくなる...そんなところではないのか?

「ああ、其の件に関しては問題なさそうだね。ここの僕が得た利を殆ど物価の調整に使ってるようだから、多分高いのは外から来る人たちへの宿代・関税・出店代ってところかな?」

ただ、お父様も街―――いや、次代の大公爵候補ともいわれているのだ。しっかりと対策は取っているらしい。


ともかくとして、買い物をしていくうちに日は傾き、気付けば午後5時を示す夕の鐘が鳴っていた。



―――



「...で、宿代が惜しいから此処に泊まると」

「良いだろう、戦神の子フィリップ・ヴェルドリア?頼む」

「...まあ、仕方ないか。シンもレイもいることだし、こうやって神の代行者が僕に頭を下げてるからね」

仲が悪く見せているのではないか、と思うぐらいに柔らかい口調で言うお父様に安堵しつつ、苦笑を見せるアリオス。本当に、何かの一定理解に達したうえでの口論だったのではないのだろうか?


「まあ、今まで通りに泊まっていけばいいよ。そうだ、空いている部屋が3つと、客人用部屋が4つ、それにシンとレイの部屋があるからそこら辺の采配はご自由に、ね」

一言が余計だが、親切心から次の言葉を残してくれたのは僕たちにとって玉音にも近いものだった。

「あ、皆分の夕食は作ってもらうから、或る程度になったら下に来てね」



「...はぁ」

「どうしたの、ため息なんかついて」

いつもの柔らかな口調で話しかけてくるレーヴァ様に何でもありません、とだけ答えてボクはまた小さくため息を吐く。

フィリップさんが言ってくれたのは、きっとボク達がどう動こうと関与しない、と言ったところだろうか。


...つまりは、ボクがレイの許に行っても構わない、という事でもある。

ただ、レーヴァ様の護衛と言うボクの存在意義とレイと居られる時間のどちらが重いか、そう聞かれると―――時間の長さや心情から、わずかに護衛が勝つ。

それでもほぼ同等の比重を持つ二つの物事があるから、ボクはこうして溜息を吐いてしまうのだ。


「...あ、そうだ。私はシンと一緒に寝るけど、エミリアはやっぱりレイの所に行く感じ?」

物思いに耽っていたところでそう言われ、ボクは一瞬何のことを聞いているのか分からなかった。

そして、もう一瞬かけて言葉を理解し―――そこで、レーヴァ様の言葉の大して隠されているわけでもない意味に気付く。


「そ、そんなことしませんよ‼ままま、まさかそんなことするわけないじゃないですか‼」

ボクの反応を見てだろうか、レーヴァ様は意地悪そうな笑みを浮かべてボクに問う。

「じゃ、エミリアはだ~い好きなレイといるのが嫌なの?」

先の質問ですっかりいつもの蓋が緩くなったのだろうか、ボクは普段口にしない様なことを口走ってしまう。

「いや、勿論レイは大好きですよ‼でも、ま、まだ恥ずかしいと言うか...。」


と、皆まで言ってしまって気付く。

「...レーヴァ様、もしかしてボクに言わせようとしてたんですか...?」

少しだけ疑念を持ち、それに倍する皮肉を持ってレーヴァ様にそう尋ねると―――。

「さ、さあ。ちょっと、私には難しいかもなー。あ、アハハ...。」

わざとらしいぐらいに挙動不審になり、ふけもしない口笛まで吹き始めた。


これは大当たりだな、と思いながらボクはささやかな復讐をする。

「そうですよね、レーヴァ様はだ~い好きなシンと一緒に寝るんですもんね?」

きっとボクの顔も先程のレーヴァ様みたいな意地悪い笑みが浮かんでいるのだろうと思いながら返答を待つと、「さ、さあ、ご飯の時間だよ!早く下に行かなきゃ!」と自分の言っていた事なのに露骨に話をすり替えようとする。

復讐は成功したぞ、と内心で拳を握りながら、ボクはレーヴァ様についていった。

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