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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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演劇祭後譚

「...そうか。それならいいんだ」

僕たちを見ていたアリオスは、何故か締まりが悪そうにそう曖昧に独りごちると、頭を落とす。

僕が何かしたのだろうか?そう思って周りを見渡すと、皆互いにひそひそと何かを言っている気がする。何故なのか?それは分からなかった。



―――



『レイくーん!こっち来ないー?』

『レイヴンさん!ぜひ俺に―――』

「あ――――‼だから僕は何もしないから―‼」

...演劇祭終了から約5日が経った。

この頃になると、回復系魔術や結界系魔術の講習に参加しているときに話した人が僕の事を広めたのか僕を追う人たちが出てきた。

しかも、それの嫌なところが僕の容姿のせいで男女問わずからの誘いが来るのだ。しかもそのほとんどが僕への求婚とくれば、嫌になるのは仕方ない事だろう。ただ、僕には頼れる仲間が居る!


「...何してるのかな?抜け駆けは禁止って言ったはずだけど...?」

『ヒッ、か、会長!?』

「ほら、散れ散れ!レイはボクのなんだからね‼」

エミリア。僕の親友にして戦友だ。

こういう時に頼りになると言う事は以前のラォルーナ剣術学院との合同演習で学んでいる。

しかし。あとで問い詰めなければならないなと思いつつ、僕は逃げ去っていく学徒達を見守るのだった。



「...で?会長って呼ばれてたけど、何を作ったの?」

「レイのファンクラブだよ!ボクが独り占めできないのはちょっと嫌だけど、でもレイのファンが出来る方がもっと嬉しいから!あ、入会金は銀貨3枚、年会費は銀貨1枚だよ‼」

ちゃっかりと儲けているんだなあと少しだけ嫌いになりそうだ。


「あ、勿論金稼ぎだけじゃないからね!レイのグッズを創ったり、後はグレアさんからの許可を得て小っちゃいころのレイの見た目をした等身大レイ人形を作ったり、それにボクが先導してアリオスに行ったこともあるんだよ!」

そんな僕の失礼な思考を読んだか、そんな事を慌てたように言うエミリア。

その様子を可愛いととらえる様になったのも、演劇祭からの変化だ。


「大変だな、レイヴン」

と、後ろから低めの声―――イア達に言わせればバリトンと言うらしい―――が響く。

僕をこう呼ぶのは彼しかいないので、反応しておく。

「最後にセイタが決めたからだと思いますよ、アリオス」

「ふっ、生意気な」

そこにいたのはアリオス・ヴァルディアヌス。


正直なことを言えばいなくなればいいと思っていたのだが、しかし。

セイタがラヴィア学院長の名でアリオスの在学を確定させてしまったのだ。

正直言って、アリオスの様な奴が得意ではない僕は正直アリオスの事を嫌っていた。

だから、敬意を払いつつもこうやって呼び捨てにしているのだ。

最初のインパクトのせいで嫌われているのはアリオスの方も重々承知らしく、こうやって気軽に話しかけてくる。きっと、皮肉の意味も込めてだろう。


「...まあ、俺も少しは悪いと思うが。だが、最後に彼が締めたことによってレイヴンとエミリアの曲がさらに印象深く、また濃く刻み込まれた。それでいいじゃないか」

「そのせいでエミリアの作った僕のファンクラブに会員がさらに増えることになったんですがね!」

少し苦笑するアリオスだが、寧ろそのせいで酷くなった一面もあるのだ。許すことは当面できそうにない。


と、背中を叩く手が。ここにいるのはエミリアだけなので、諦めろと言う意味だろうか。

仕方なくがっくしと肩を落とすと、同情を込めたアリオスの手がエミリアの叩いている方ではない僕の肩を叩く。

それに少しキレてアリオスの手を思い切り叩くと、僕はエミリアの手すら振り払って自室に帰る。

きっとこの後にエミリアの説得があるのだろうと思うと、少しだけ泣きたくなる。



やはりエミリアが僕の事を説得しに来ると、ついつい甘えてしまって抱きしめてしまっていた。

単純に驚いたような顔をしたエミリアだったが、微笑むと僕の頭を撫でて抱擁を返してくれた。

そこで夕食を食べていないことに気付き、急いで食堂に行ったが...もう軽食と冷えて堅くなった小麦のパンしかなかった。

結局そのことで少しだけ喧嘩して、すぐに仲直りすると互いの寮に戻る。

途中で命知らずの男がエミリアに声をかけていたが、すぐに僕の横を駆けて行ったのを見ると冷たくあしらわれたのだろう。

それで少しだけ優越感を感じてしまったのは仕方のない事だ。そうに違いない。


次の日。

僕たちはアリオスを含めた新たな形で久しぶりに教室にいた。

珍しくユウがいまだに魔方陣の書き込みを続けていたが、セイタはそこに関して諦めたようだ。

「...こうやって集まったというのはどういうことか分かるな?」

セイタがそう言うには、勿論僕たちは知っていた。

こう話して、その後にあったのは長い長い準備だ。


「私たちはこの後、各人の思い出の場所をめぐる。いわば、思い出作りと言ったところか」

その言葉に、僕は今までの考えを思い直すことにした。

この言葉があった時。それは―――長く遠くへ行くことになる言葉だ。

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