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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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演劇祭当譚

まずは僕たちの方ではないバンドからなのだが、セイタ―――もといラヴィア学院長の計らいによって僕たちは全員並ばせられた。

意外と人が多く、この前で歌を歌うとなるのは少しだけ勇気がいる。

ただ、今までもそんな勇気を必要とするときは少なくない。それどころか、寧ろ勇気を振り絞って戦うようなのを倒し続けていたのが僕なのだが、今までとは違う緊張が僕に在った。


僕たちはあとで発表なので後ろに下がるが、そこの中では外から聞こえてくるユキの声が僕の緊張をさらに高めていく。今じゃ、かすれた声すらも出ないだろう。

そんな時、左肩を誰かのこぶしが叩いた。

それを見ると、エミリアだった。

「そんなに緊張していると、ボクだけの発表会みたいになっちゃうよ?落ち着いて、魔術を打てばいいよ」


僕の魔術を知っているはずなのにそんな事を言っているエミリアを見ていると、ついつい笑いがこぼれる。

「...もう、ボクが茶化したのに笑わないでよ‼」

やっぱり僕を落ち着かせるための言葉だったようだが、少しエミリアが怒ってしまった。

すねたエミリアを宥める為に僕はユキとイアの歌を聞きそびれ、気付けば僕たちの番が回ってきた。


早速回収が終わったのか戻ってきた5人を見てから、ラヴィア学院長の紹介の声が朗々と響き、僕たちは遂に演奏を始めるのだった。



―――



正直に言えば、僕たちが演奏した歌はこの世界に革命を起こした。

そもそもとして、この世界にはバンドと言うものが無かった。

そこにファーストインパクトとして先程の演奏があり、次にダブルボーカルの僕たちが歌うことによって混乱と共に歓喜の渦は更に大きくなった。


いつもとは違う感じだが、エミリアと共に歌う所などはマイク越しに互いを見つめ合う感じで、その実僕たちは互いの顔など見ていない。

流石に見つめ合うと恥じらいで動かなくなるだろうと、少しだけ視線を外しているのだ。

ただ、観客からは見つめ合っているように思えたのか、それとも僕が少女に見える所為か、声援はその後に統一されたものとなっていき、曲目が終わるごとに大きな拍手が浴びせられた。


僕たちの曲もついに終わり、演劇祭もついに終わり―――と思ったんだけど。

【最後に、私たちの歌を聴いてもらおうか!】

そうセイタが言い放ち、覆面の男が現れる。

更にその横にヴァルと思しき男と、もう一人誰だか分からないが何故か懐かしみのある男が現れ、場は混沌に包まれた。



―――



どれほど酷く考えても、セイタの歌う歌はいつもの横柄・傲慢さからは想像もできない程に素晴らしいものだった。

いつもはノイズが走ってそのまま消え失せてしまいそうな声だと言うのに歌声は実に澄んでおり、その歌の内容も彼の行動からは想像もできない様な、そんな内容だったためにセイタを良く知る者からすれば非常に衝撃を受けるようなものだった。


その歌の洗練さからは誰も言葉を失い、風に飛ばされるように音が途切れると暫くは無音になり、その後に耳が無くなるかというほどの巨大な拍手の波が興った。

かくいう僕らもついつい拍手をしてしまい、蛇蝎の如くセイタを嫌うユウでさえも拍手をしていた。



「...いやあ、やはり歌と言うものは素晴らしいな。しかし、私はやはり剣を握っていた方が落ち着く」

セイタの歌の副産物である拍手が終わり、それと同時にラヴィア学院長の演劇祭終了の宣言が行われた。

教室に戻ると、自分の行動すら適当なものだと思っているようにも感じてしまうセイタのそんな言葉が耳を打った。

それとついでに、二つの頬が殴られたような音も。


彼の頬を殴ったのはユウとヴァルだった。

どちらもセイタの事を良く知るからか、その顔には怒りがあった。

「何をする!?」というセイタの言葉にも、「「自分で考えろ(なさい)」」とやはり怒りの篭った言葉で返され、セイタ自身が言葉を失っていた。


「...それでは、俺は帰らせてもらおうか」

...と、今まで無言だった謎の男がそんな言葉を放つ。

つい皆が無言になってしまったので彼は帰ろうとするが、シンがその背に言葉を掛けた。


「...なんでそこにいるんだい?」

その一言は彼を振り返らせるには十分だった。

振り返ると、その男は言った。

「俺はお前の思っている俺ではない。俺はお前の事を知っているが、恐らくお前は俺の事を知らない。そうだろう、アリオス・ヴァルディアヌス?」


アリオス・ヴァルディアヌス。

その名前は、僕を止めるに十分なものだ。

その名はシンの転生前の名であり、そしてレーヴァの祖先でもあるものだ。

一応は僕の遠縁の親族でもあるし、恐らくはエミリアも同様だろう。

しかし、それを言ったことは他の人には無い。

僕たちだけの秘密だと言うのに、何故この男は知っているのだろうか。


そこまで考えて、彼が失念していたとばかりに帯剣していた剣を抜くと、僕たちの顔は一変した。

そこにあったのは、紫雷八光剣ガドヴァルトスド。『アリオス・ヴァルディアヌス』が代々受け継いできたものだが、何故ここに?


「...じゃあ、俺の名前を言ってやろうか?」

そう言う彼の言葉に僕たちは頷かざるを得なかった。


「...俺の名は、アリオス・ヴァルディアヌス。レーグス・シャルロティア・グレスにこの名を譲ったとはいえ、まあ元の名など忘れたからこう名乗らせてもらおうか」

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