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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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演劇祭讃譚

練習が始まった。と言っても、練習が始まったのは実際の所僕だけだった。

何故かというと、そもそもとして僕たちのグループ分しか楽譜・歌詞が無い事。次に、ヴァルもグレアも電気接続に必死になっていること。あとは、エミリアの歌詞をセイタがまだ作っていないからだ。

結局僕だけ練習するのも何故かいたたまれず、魔石から電気を生み出す方法を考えることになったのだった。



―――



「...で?変電器は作れたのか?」

2週間後。僕たちはいまだに魔力を電気に変えれていなかった。

僕たちはとても頑張った。色々な手法を試してみて水魔術災級、<翠嵐ウェザーズ・ヘビー>の副産物として発生する雷を分析して、新たに雷魔術を生み出し、雷魔術上級<魔雷トゥリア>を用いることによって電力を生み出すことには成功した。しかし、それをそのまま使うにはあまりにも電力が大きすぎると言うことで、僕たちは頭を抱えに抱えて今に至ったというわけだ。

ちなみに、既にセイタは全ての作詞作曲楽譜づくりを終えており、どこぞに行ってしまった。


が、イアのいう所の変電器と言うものは僕たちの考えに一切現れなかったものだ。

その言葉を聞いて僕たちは頭を抱えてしまい、変電器が作り終わったのはもともと魔術がない世界のものだったというそれを魔術対応型に変更してからたった3日後の事だった。



―――



機材がようやく出そろい、僕たちはやっと練習に赴けるようになった。

今回は初めてということで準備期間がいつもより大幅に長めの3ヶ月もあった。

...いや、もしかしたらそれはイアが部活と称した聯隊レイドの結成時間も含めたものだったのかもしれないが。


とまあそんなこんなで時間は流れ、発表ももうすぐと言う所まで時間は流れていた。

このくらいになってくると、僕たちは演奏の事も覚え、僕達以外はもう練習すら終わっていた。

何故僕たちにまだ練習があるかというと、エミリアが練習を強硬に主張するからだ。

しかし、僕たちの練習ももう終わっている。では何故か―――それはエミリアが単純に二人きりの状態で僕に甘えたいからだ。


「レイ、撫でてよ」

「はいはい、分かったよ。本当、エミリアは人がいるときといないときでは大違いだね」

皆が居なくなり、僕たちだけが残っている練習場。

そこで、エミリアはボクに抱きついていた。


本当なら練習が無いのだからここにいるのはよくないよ、ぐらい言えればいいのだが、エミリアの笑顔を見てしまうとそんな信念すらもなくなってしまう。

次こそは言おう、次こそは...とそんな事を思っても、ついつい可愛いエミリアには膝をついてしまうのだ。

どうあがいても越えられない壁と言うのも存在するらしいと感じた。


エミリアを撫でながら僕は考え、それをエミリアに伝える。

「エミリア、ちょっといいかな?」

「ん、何?」

エミリアが僕だけといる笑顔を浮かべ、問い返してくる。やっぱり、このくらいのエミリアが最高に可愛いと思ってしまったが、此処で言葉を切ってしまったらだめだと思い、僕は続ける。


「...多分さ、この演劇祭が終わったら僕は多分この学院の男子生徒に追われる羽目になると思うんだ。だから、その時は僕を守ってくれないかな?」

正直、こういうのは恥ずかしい。だが、こうでもしないと僕の身が危ないような気もするのだ。

恥ずかしさを押し殺してそう言うと、エミリアは意外そうに眼を見開いていた。


「...レイがそんな事を言うなんて。なんだか意外」

そう言われるのも承知だった。正直なことを言えば、僕も剣術学院との研修時に男子生徒に追われなければこうやっていう事もなく、その結果成功したことに挙げた祝杯ではなく涙をのむことになっていただろう。

その事を伝えると、「...ボクのものだよね?ね?」と謎の反応をし、その理由が僕を色々な人の目に晒した結果他の女に僕がコロッとつられてしまうのではないかと言うものだったことが分かったためにその誤解を解くべく、「エミリアが一番に決まってるじゃないか」と口にしつつ髪を梳くように撫でる。

くすぐったそうに笑うエミリアが可愛いものだから、やっぱりエミリア以外のヒトにコロッと...という事は無いのだろうと、そう思わされたのだった。



―――



「...さて」

セイタがユウが書いたと思われる魔方陣の下書きか書き込まれた黒板を見ながらそう口にする。

僕たちは、その一言で身がしまる。


今日は演劇祭当日。

他の所が色々と準備を行い、恐らくはあまりないレイドの発表があるのだろうか。

だが、そんな中で僕たちだけは大荷物を持っていた。

二つのバンドがあるほか、セイタは他にも何かを用意しているらしい。

桜なるかは未知数だけど、結局は大成功に終わるのだろう。

そう信じながら、僕たちは前のレイドが終わったことを確認し、最初に『結球輪禍』―――つまりは僕たちではない方のバンドが始まる。


どうなるのか、それを考えながら僕は期待と緊張に弾んで息を吸った。

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