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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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遥かなる夢現

ユキを見て、なぜそこにと言う言葉は出てこなかった。

僕たちはそのまま帰路に着き、ついでに僕たちを追ってきていたらしい剣術学院生を睨みつけ、眠った。

流石に直ぐに共にいる気にはなれなかったため、少し離れたところで眠ることに。

少し気まずかったのは、言うまでもないだろう。



―――次の朝。

僕はいつも通りに起きた。ただ、少しばかりいつもより暗いような...?

そんな思いを持って見渡してみると、欠伸をしているエミリアを見かけた。

しかし、何故いつもより暗いのだろうか。

「...おはよう、レイ」

エミリアはこのことに気付いていないのか、そう話しかけてくる。


むやみに錯乱させるべきではないと思って、僕はテントを出ようとした。

しかし、テントの入口が何かの重石でもあるのか、開かない。

「あれ?出ちゃだめだよ、レイ。まだ夜中だからさ」

そう言うエミリアの顔には、笑顔があった。笑顔な筈なのに―――危機感を覚えるような、そんな笑顔だった。

もしかしたら、僕は幻覚を見せられているのかもしれない。そうでなければ、この様な事態が起きる筈がないのだ。


「ボクだけのレイだからさあ...勝手にいなくなったりしないよね?だって、ボクがどんな状況にいても、レイだけは一緒に居てくれるんでしょ?」

...エミリアは酒でも飲んでいるのだろうか。そうでなければ、誰かに操られているのか。

そう思えるような言葉が続いた後、突然糸が切れたように動きを止める。

心配に思って近づくと、動きを止めたはずのエミリアが僕を抱きしめた。


「...やっぱり、レイはボクが一番なんだね。ふふっ、嬉しいよ」

恐る恐る顔を覗くと、そこには心からの笑みを浮かべた表情が。

僕の目に映るエミリアは、やはり嬉しそうに笑みを浮かべていた。それこそ、先程の狂気に駆られたような表情など持ち合わせていなかったかのように。

...やっぱり、酔っているのだろうか。


そう思いながらエミリアを抱きしめ―――。



―――



「nぐ...ハッ!?」

口から少し出ていた涎を飲むと、そこには僕を面白そうに見る少女の姿があった。

その横には、裏切られたような表情をするエミリアが。

段々目のピントが合っていくと、そこにいたのがユキだと言うことが確認できた。


「いやあ、寝ぼけていてもボクとエミリアちゃんを間違えるってのは...ねえ?」

あくまでも面白そうに、しかしその目の奥底は決して笑っていない―――それどころか僕を蔑むような光すらあった。

僕は悪くないはずなのだけど...そんな事を言っても、エミリアに伝えれば逆効果だろう。


どうやら、僕の手はユキの腰に回っていた。

もしかすれば、僕は夢現のままにエミリアと非常に似た姿を持っているユキを抱きしめていた様だ。

エミリアと間違えてしまうのも仕方ないのだけど、やはりそのようなことを言っても今のエミリアには逆効果になるように思えてならない。

何も言わず、僕はエミリアに平身低頭する事を選ぶ。


「...まあ、レイだから許してあげるよ」

第三者がいると言うのに、その言葉はいつもの様な形式ばったものではなく、知人が僕しかいない状況で使うフランクな口調になっている。ユキは信頼できるという事なのか、もしくは吹っ切れたか。

どちらにしても、ユキのニヤニヤに晒される僕の身にもなってほしい、とこっそり思ってしまうのは仕方ない事なのではないか。


イアはまだ寝ているし、ユキはそんなイアの顔をこねていた。やっぱり二人は恋仲か何かなのかもしれない。


その時、ふと気になってラルクさんとルキシさんを見ると―――。

「さあお姉様、私の愛を受け取ってください!」

「ルキシ、やめなさい。それに、毎回言っているけど私はルキシの姉ではないんだよ?」

―――姦しいわけではないものの、大いに耳が痛い話をしていた。勿論、物理的に。

そんな感じで、僕たちは何事もなかったかのようにテントを出る。すると、そこに見慣れた影が。


「...夜にどこに出ていた?それに、ラォルーナ剣術学院生も一部が後をつけていたようだが...何をしていたのだ?」

あきれたような、それでいて懐かしむ様な、それでいて何かを憂いているような表情をするのは、勿論ながらセイタ。


ただ、言っても何も始まらないと思って「空気を吸いに行っただけです」と伝える。

だが、「私に嘘を平然と吐けるのだから、レイヴン・ヴェルドリア、貴様と言うやつは素晴らしい道化だな。ヴァルにも勝るのではないか?」などとセイタが言うものだから正直なことを離さざるを得なかった。


「...そうか」

そう一言だけ言うと、セイタは前よりも丸まった気がする背を向け、去っていった。

その口から小さく、「...私にとっては、もう眩しすぎることだな」と伝えられた言葉は、僕たちの耳には届かなかった。

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