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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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傷心、レイ知らず

翌朝。

僕が目を覚ますと、僕の上に乗りかかる様にエミリアが寝ていた。

引きはがすこともためらわれるし、何よりそんな事をすれば寝起きのエミリアに文句を言われかねない。

そのまま何の対処もせずにいると、エミリアの寝相がさらに悪くなり、僕を抱きしめる形に。

少しだけ緊張してしまうが、何事もないように微動だにせずいることが僕の唯一の出来る事だった。

そのうちラルクさんが起きてきたが、口の前で小さく指を立てると事情を理解してくれたかそうでないのか、少し笑みを浮かべて静かにしてくれた。

エミリアが起きると、僕に抱きついていたことが恥ずかしかったのか顔を赤く染める。


その様子が可愛らしかったので何かに残したく思ったものの、その表情は一瞬で消え去ってしまい、僕を突き放す。

「理不尽だ!」と言って抗議しようとしたものの、エミリア以上に寝起きの悪いユキと寝たふりをしているようにも見えるルキシさんが寝ているので小声で抗議することにした。

しかしエミリアはそれに取り合わず、涙を流していないのに目のあたりを赤くすると言う器用なことを行い、僕の立場を危うくさせる。


そんな感じで僕とエミリアがユキの方に近づいていった(僕はエミリアに押しやられて行った)のが運の付き。

「あだっ!?」

ユキの足が僕の腰にクリーンヒットし、倒れ伏してしまう。

その時にせめて道連れを、とエミリアの服をひっかけエミリア諸共床に倒れる。

そして互いに頭を打ってしまう。


非常に痛かった。

そのせいで互いに「「よくも!」」というのだけど、同じ言葉を発してしまったことが癪で顔をそむけてしまう。

「...わあ、まるで恋人だね」

ただ、ラルクさんのその一言で場の空気は変わる。


「...どうしたの、二人とも。顔赤いよ~?」

ラルクさんにそう言われてしまったせいで、自分の状態が分かる。というよりも、頬の熱さでもうわかっていた。

た、確かにエミリアは可愛いけど、僕の中ではそういう対象ではない。

そう伝えると、エミリアは裏切られたような顔をしてテントを出て行ってしまう。


「...うわあ、無いわ―」

ラルクさんがそうしたんでしょうに、という言葉は僕の中では出てこなかった。

流石に今のは言いすぎたかもしれないと自分でも思っている分心は重い。

しかし、責めて謝ることはしなければならない。

そう思ってテントを出ようとすると、エミリアが戻ってきた。

顔を赤くしているのは何故か。そう思って顔から下に目線を移動させようとして、気付く。


ただ、それを口にするよりも早くいつ起きたか分からないユキの手が僕の目と口を覆い、ボクが何もしていないと言わしめる様に行動する。

エミリアが服を着たところで、ようやくイアが「...おはよう」と寝息交じりに起きてきたのだった。



―――



エミリアに無視されている。

しかし、それはあの発言をした身であれば必然ともとれる。

寧ろ、あの時に手を出されなかった方がおかしいのだ。

何とか謝ろうとするものの、その糸口すら彼女に切り刻まれる。

通常時は冷静だったり笑顔だったりするエミリアだけど、それが敵対するとなると―――僕にとっては非常に苦しい。


何故か本来の期間である3日間が過ぎて8日間経った今でも演習は続けられている。

演習らしい演習と言えば、剣術学院生にちょっとした魔術をエミリアの厳しい視線にさらされながら教える事だった。

エミリアの視線は僕を凍らせるどころか外の温度との差で僕が砕け散りそうなぐらいだった。

しかもその視線のせいで僕が他の人から同情を得てしまい、それで更にエミリアの視線が冷たくなっていくのだ。

...もう少しこのままだったら僕が本当に砕け散りそうだ。それ以前にいつ斬られるか分かったもんではなく、非常に冷や冷やとしているのが現状だ。


「...エミリア」

「...なんですか?僕は忙しいのですが」

エミリアは、僕に対して少しだけ一人称の発音が変わった気がした。

ただ、それだけ僕に対して怒っているという事でもあって、僕はいつも此処で心が折れてしまう。

しかし、今日の僕は違う。

「...あの事、謝りたくて」


「謝る必要なんてないですよ、どうせボクはレイヴン(・・・・)君にそういう目で見られない、一生をレーヴァ様の護衛で終えるような者なんですから」

その言葉を聞いた時、僕は今までの行動には無かった行動を起こしていた。

「...なんですか、いまさら」

彼女の冷たい視線と驚いたような表情、それでいて少し嬉しそうな声音。

やっぱり、僕の行動は間違いではなかったのだ。


「...そういえば」

少しの間だけその状態でいたが、ふとエミリアはそんな事を言い出す。

「確か、レイはボクに何か一つ願い事をかなえてくれる、って言ってなかったかな?」

いつもの調子に戻っているはずなのに、なぜかその声に僕はビクッとしてしまう。

「じゃあ、さ」


どんな無茶ぶりを言われるのかと気が気ではなくエミリアの言葉を待っていると、溜息を吐かれてしまう。

「...今から連れて行く場所で起きることを、誰にも言わないで。それで、ボクがそこでしたことは秘密にしてよ」

そう言ってから、エミリアは僕を引っ張る。「さあ、早く!」と言って僕を急かす様子はまるで時間に追われているようだ。


そう言ってついていくと、小高い―――というよりかは、寧ろ相当高い―――丘の上にいた。

「...レイと居ない間に、此処にたまに来てたんだ。此処なら何にも邪魔されないしね」

エミリアはそう言うと、自分の顔を叩いた。そして深呼吸を何度かすると、僕に言う。

「...ボクと付き合ってよ!」

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