禁忌ではなくなりつつある魔術
「禁忌魔術ぅ?いつもの奴ってことかな?」
エミリアがそう言うのも分からなくはない。何せ、僕たちの中では禁忌魔術そのものであるイアがいるのだし、ユウが行っていることも禁忌魔術に分類されるものだからだ。
ただ、一応禁忌は禁忌な為に伏せておくべきなのかもしれないのかもしれないのかもしれない。
「そう...かな。でも僕にしてみればどうでもいい事なんだよ、そんな事は」
そう言って、グレアは自らの肉を抓る。
「この肉体も、僕にしてみればかりそめのものでしかない。ただレイ達の動きを監視するための、ね」
そう言えば、グレアの元の肉体はお父様だったような記憶がある。
監視という目的は分からなくはないが―――なぜこのタイミングで?
「僕はさ、ただ平和に過ごしたかったんだ」
そう問うと、グレアはそう語った。
もしかしたら、グレア=お父様の言う平和とはもともとの生まれである神族としての土地で生きて行くことだったのかもしれない。
ただ、それをお父様の本当の父親が地上に降ろしてきただけで。
少しだけ悲しくなったが、そうでなければ皆と会えなかったかもしれないと考えればこうなってよかったとも思えた。
「...禁忌魔術?そんなもので作られたんなら、あなたを創った人を言いなよ。その人をとっ捕まえるからさ」
ト、今までの言葉を聞いていなかったのかそんな事を言う影が。
極北の地から来たのだろうか、青い頭髪を持った女子生徒がそんな事を言っていた。
だが、そんな事をされれば僕たちの故郷でもあるアリオスは消滅する羽目になる。
グレアもそれは同様なので言わないものだと思っていたが―――しかし、グレアは矛先を変える手段をとった。
「それを言うなら、そこにいるイアも禁忌魔術である<神体降臨>によって召喚された存在だよ?」
それでうまいぐらいに矛先を変えるのだから、きっとこの女生徒は馬鹿なのか、騙されやすいのかのどちらかなのだろう。
「...じゃあ、君。君を作ったのは誰かな?教えてくれたら君には何もしないから」
そんな脅迫に負けないだろうと言うのが僕の見解だ。だって、イアはあのセイタを相手取っても何も問題なく対処するから!
「まあ教えてもいいが、お前は禁忌魔術の禁忌の意味を知っているのか?」
やはりと言うか、同じようにけむに巻いて回避するのだろう。
「うん?分からないけど...?」
「禁忌魔術の意味はな、使えないものが多いから禁忌なんだ。つまり、使える物が禁忌魔術だったら全く問題ない」
「うんうん」
「つまりだな、お前の言っていることは間違いだ。分かったか?」
「分かった!」
やはりと言うか、言い包められていた。
しかし、僕ですらもそれには納得していた。
アリオス幼年学院にいた時に<神体降臨>を使わされたときに聞いた説明では、確かにあの時の教師はイアと同じ様なことを言っていた。
つまり、僕にとってもそれはおさらいの様な物だったというわけだ。
「...ボクもやってみたい!」
「エミリア、そういうふうにチャレンジすることは悪い事ではないけどさ、そんな事をしたら死ぬかもしれないから禁忌魔術になってるんだよ?」
「だって、レイが出来てボクが出来ない事なんてないですよ!」
「そうかもだけど...。」
「まあまあレーヴァ、こういう時はエミリアにやらせてみればいいと思うよ」
「でも...。」
「最悪死んでも5秒以内だったら<時間遡行>で蘇生できるからね。だから、さ?」
「ああもう、分かったよ!エミリア、シンのおかげでできるんだからね、シンに感謝しときなよ!」
後ろで色々なことを言っている気がしたが、僕は聞こえないふりをした。
―――
「あ、あの」
ようやく話が終わり、のんびりしていたころ。エミリアが、そう声をかけてきた。
何を話すのか気になって、つい急かしてしまう。
「...ボクも<神体降臨>を使ってみたいなあって...。いい、かな?」
「勿論!ただ、僕かシンのいるところで使ってね。そうじゃないと最悪死んだときに復活できないから」
その言葉に聞き覚えがあったのか、もしくはシンやレーヴァと話しているときに新辺りに言われた言葉と同じだったのか、その言葉を言ったとたんに笑われてしまう。
そうやって笑われるのは心外だったが、それも心地の悪いものではなく、少しくすぐったく思えるようなそれになっていた。
「じゃあ、使ってみてよ」
「うん!じゃ、ボク頑張るよ!」
そう意気込んでいるエミリアは元気いっぱいと言った感じだった。
久しぶりに見るその顔だが、なんとなく危機感は無かった。
そしてエミリアが<神体降臨>を使い、そこに現れたものは―――。




