未来へつなぐ、道
「―――そこまで」
―――鋭いその攻撃を、レイヴァが防ぐ。
いつ持ったか、レイグ王が持っていた長剣で防いでいた。
レガートは俺の状態を見たか、おろおろとする。
そんなレガートに、俺は情けないものを見せてしまったと思う。
「...悪い、これ以上続けるのは無理みたいだ。だが、あれなら俺の最盛期の時よりも強くなれるぞ」
まだ15のレガートなのにこれだけ動けるのだ。
これが世界を襲っていたらと思うと―――ゾッとするどころか、むしろ笑いすら浮かんでしまった。
「...では、またいつか」
そう言って再び去るレガートに、俺は今度は引き止めずに「...ああ、じゃあな、レガート」
と言う。
そこでレガートは振り返り、微笑を顔に張り付けると年相応の笑みを浮かべて、少女らしくいう。
「...じゃあ、また会いましょう、御祖父様、御祖母様!」
絶句する俺達をよそに、レガートは鼻歌交じりに帰っていく。
...あれのままだったら、いつか女王になって結婚した時にその相手を振り回すんじゃないんだろうか。
それとも、レイヴァのように今は猫を被っているだけなんじゃ―――。
「あだッ」
と、そんな思考を読んだかレイヴァが俺の腕を抓る。かつて親指と人差し指だけで剣を振り回していたその左手の抓りは、俺の肉が抉れるのではないか、というほどに痛かった。
俺でなければ、本当に肉が抉れていたのではないのだろうか。
―――
そこからは、いくらでもある銀銭でグレスの王都・グレートデヴァルに家を建て、街の行事に参加し、街の商人を似たようなもので固め、魔物を倒す冒険者と呼ばれる人たちの集まる場所を作った。
そして、そこを冒険者ギルドと言う名前にして広げる。
60になった時、俺とレイヴァは旅に出た。
ラギアス大陸の上の方には、魔物だらけの場所が多く存在し、そして町も多くあった。
そんな街の一つ、グローク公国エヴァ―ガルド町に寄った時、俺は驚いた。
こちらの方にも銭貨が広がっていたのだ。
価値もそのままに、という事はグレスの影響がここにもあるという事だった。
その後、そこにいた小さな蜥蜴を大きくしたような火を噴く奴に「お前の名はパーシヴァルだ」とレギュリアで聞いた英雄の名をつけてやると、俺達は先を急ぐ。
ずっと進んでいく俺達の周りには、魔物から食材と薪だけで守ってくれる、とお世辞にも少ないとは言えない商団の量が常にあった。
街に着くと、彼等はパンと少量の水をくれた。
そして、また新たな商団が俺達に張り付き、その繰り返しだった。
そうやってグニャグニャと行っていたために15年もかかったが、遂に俺達はラギアスの上の大陸を超える、山脈を見つけた。
大きい穴が開いていた事を考え、そちらに向かうと、関税として銀銭500枚を取られた。
金はこれであまり残らなくなったが、それでも俺は良かった。
レギュリア大陸とラギアス大陸を合わせて、レギュロス山脈とでも言おうか、その内部に存在する場所は物価は高いが安全な場所だった。
稀に地面が揺れるが、その地も2年で離れるとまたもやどこかに向かう。
そして、1年が経ち―――俺は、ベルベッド帝国と呼ばれる土地に来た。
言葉が同じで、レギュロスで換金したために暮らすことは容易だった。
だが、魔物が強い場所があった。
そこを俺とレイヴァは結界を張って魔力を封じると、その地には俺の名であるアリオスと名付けられた町が出来た。
ヴェルドリア伯爵には「いくら感謝しても感謝しきれない」と言われたが、もう何時死んでもおかしくない程に老いた俺達は、最後の仕事を行う事にした。
「...レイヴァ」
「はいはい、分かってるよ。あれでしょ?」
こんなレイヴァの声を聴くことももうないかもしれない、と思いながら俺とレイヴァは命を統べて魔力に変えて、<転生>を使う。
「...また、いつか」
「うん。今度は平和な世界で、ね」
最後にレイヴァを抱きしめると、俺達を紅い光が包んだ。
―――
【...初めてだよ、人がここに来るなんて。おっと、失礼。自己紹介がまだだったね。
...ボクは輪廻を司る、君たちに神と呼ばれる種族の一人さ。ガイオとでも名乗っておくかな。
此処に来るのは、魔王として人に適度な破壊をもたらすものが死んでから初めてだね。しかも隣にいるのは魔王の娘じゃないか。
...アリオスくん、君は頑張ったよ。今度は、お望み通り幸せにしてあげよう。
―――ま、平和になるかどうかは君たちの行動如何で変わるかも、だけど】
そう語った少年は、からころと笑う。
確かに、彼の横にはレイグ王がいた。
それが笑いかけてくると、俺は自然と敬礼をしていた。
『そんなに堅苦しくなくともよい。それに、二人して此処に来たという事は<転生>を使ったのだろう?余としては、また会えることが楽しみだ。それと、一つ。転生をする際、魂は二つに分割される。一つは全てを継承した力。もう一つは、精神のみが残るものだ』
レイグ王は、そう自然に言うと珈琲を飲む。
全く変わらない様子に苦笑し、レイヴァを見ると―――姿が若々しくなっていた。
【あ、伝えるの忘れてた。その姿はね、最も自分が記憶している姿になるんだよ。ほら、君もひどい姿になってるよ?】
なんて神だ。この野郎、と言いたかったけど、それももういい。
「...じゃあ、平和になるまで僕は待つ」
『...そうだね』
そして、俺―――いや、僕達は時の流れを見つめ続けた。
いつか、転生するその時まで、ずっと―――。
そして、僕は転生する。また、レイヴァと会う様に―――。




