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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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清涼祭前譚

「...ついにこの日がやってきました」

清涼祭。これまで行ってきた材料集めの日々が遂に実を結ぶと思うと、少し涙まで浮かんでくるようだ。

長い長い日々。思い出そうとすると、何故か観光気分でいるレーヴァと、それを止めるべく動く僕とエミリアばかりが思い浮かぶ。シンとイアが思い浮かばないのは傍観者だったからで、ユウが思い浮かばないのは単純にほとんどの時間を宿で過ごしていたからだ。

そう思うと、案外この学級はばらばらだと改めて思い知らされる。まあ、そもそも一つになる必要などないのだが。


ということで僕達は今、急遽自分たちのベースを取られぬように少し焦りながら簡易な酒場を作っていた。

あと一時間もすれば、僕たちのほかにも通常の学級の人たちがくる。

その人たちの目に触れぬように、此処は魔力場を乱して存在しない場所になっていたが、近づいてくればその限りではない。

普通であるならば、此処はあと50分後には僕たちがテープとコーンを持ってここを囲い、その後に周りを布で覆い、それでようやく1時間が経つ予定だ。


だが―――そもそもとしてその材料をどうするかという所があった。

僕たちの酒場は何も学院から支給されるものがない。

他の学級は学院に頼んだ小屋がもう完成しているはずで、その小屋を学級指導者が<次元収納デルヘドラ>で設置し、そこから内装の準備をするだけのはずだ。

だから、僕たちは一時間で酒場の原型となる小屋を作らなければならないのだ。


「...地獄、ですね」

絶望して呟く僕に、あきれたように言う影が。

「そんなの、<時間収縮グィーヅ>で時間経過を短くすればいいじゃねえか」

それを言った主は、イアだった。

ボクはハッとした。そんな方法など、僕が考え得るものには無かった。


...結果、ユウに魔力場を乱す魔方陣と同時に<時間収縮グイーヅ>を使用してもらい、体感5時間で酒場の原型―――下手な酒場よりもこの時点で豪華だ―――を作る事が出来たのだった。



―――



その体感5時間が実際の所50分だったことに驚き、その後にテープとコーンで周りを侵入不可にする結界である<不可侵結界ガルデア・エヴフェ>を発動させ(その時に外に出ていたイアはその後一瞬だけ解除した時に戻ってきた)、結界の範囲である限界の場所に布を掛けることによって内容を分からなくさせ、そこでようやく通常生徒達が外に出てきた。


全ての者達が出てきたのだろうか、学院長の宣言が聞こえた。

【これより3時間、各自の内装を整える時間を与える。

そしてその15分後、当学院外に待機していただいている非学院関係者の方々が学院内に入場されるため、君たちにはその間接客を行ってもらう。なあに、予行演習だと思ってくれたまえ。

...それでは準備時間、開始とさせていただこう!】

その声がセイタの者に聞こえたのは、僕だけだったのだろうか。



―――



僕たちが用意するものと言っても、たいしたものはない。

まず酒、次に食品とそれを入れておくもの、調理器具(魔術に耐えられるもの)。そして一般的に使われる木製ジョッキ―――ではなく、魔晶鋼で作られた特製ジョッキを用意した。

これだけではまだまだ時間が余っている。どうしたものか―――と、そこまで悩んでいる間に、扉の開く音がした。

「失礼する」


瞬間、イアとユウに警戒の表情が浮かぶ。一方の僕は、その声に意外性以外の何も覚えなかった。

「...なぜ外にも席を作らないのかね?これでは、大して人が入らずに内側の回転率が下がるだろうに」

だが、次の言葉で二人は顔を見合わせてしまっていた。

が、警戒の表情を一瞬で取り戻したユウは(顔が見えない為、その感覚でしか分からないのだが)そのまま言った。

「...なんであんたがここにいるの?斉太」


「私はただ単純に言ってみただけだ。そもそもとして、この店の集客能力に対する座席数が少ない。せめて、6人席を後8つは欲しいところだ」

前の研究者のような顔をした彼はどこへやら、その顔は怒りと義憤に満ちていた。

...いや、寧ろただ単純に客へ対する品質を向上させようとしているだけにも見えたが。


と、そこにイアが言葉を挟む。

「この世界にはな、魔術があるんだよ」

「それがどうした?何かを変える事が出来る方法があるのかね?」

セイタの言葉に、大いに賛同したいと思ったが、イアは不敵な笑みを浮かべていった。

「魔術で空間拡張すればいいじゃねえか」

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