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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
35/92

清涼祭の準備

『清涼祭』。

正式名称を納涼・夜華祭と言うそれは、稀にあるこの学院の、休日以外の休みだ。

その日の昼は、何もない。ただのんびりと過ごすだけだ。しかし、夜になるとその限りではない。

全学年の全学級(7個)各一つ+特別生学級一つ+教師二つの、計38の出店が並ぶのだ。

しかし、それに関して僕達は今非常に悩んでいた。

それは―――。

「...何をすればいいんだろう...。」

―――根本的過ぎて忘れていた事。出店を何にするかだった。



―――



「一息に出店って言っても、私は何をすればいいのか分からないし、そもそもとして私は行事を提供する側だから今まで要求されていなかったんだけど...。」

ユウがそう言い、

「...正直、俺も今までこうやって出し物する事なんて40年ぶりぐらいだからなあ...。

おい優、お前は最後に出しものしたのはいつだ?」

「...ナノマシンを出した時だから、大体今から感覚で20年前ぐらいかしら」

「そうか...。よし、レイ。お前がやれ!後は頼んだ、その時間で俺はどうにかこの世界でもゲームが作れないか試してみる‼」

イアはその勢いで僕にその一切を押し付ける。


何とか逃げようともしてみた。

「逃げれば、今ここでヴェフロールを呼び出す」

しかし、何故かその名のものを出されると危険な気がしたため、おとなしく僕が考える羽目に陥るのだった。



―――



「...じゃあ、ちょっとした酒場風にすればいいじゃないですか」

「...酒場ぁ?レイ、アンタそれ本気で言ってんの?そんな事をすれば―――」

「問題ないですよ。息抜きぐらいが丁度いいでしょうし、それに...少し位酒を入れても、寧ろ学院内の人たちに受けると思いますから」

「...腹黒いわね」

「よく言われます」

思いついたことは、案外ユウには不評だった。


何故だろうと思うと、

「優な、酒が苦手なんだよ」

イアがそう言った。

「は!?そんなわけないでしょ!?」

ユウがそういうものの、「お前ユキよりも弱いじゃねえかよ」と言われて怒りながらもすごすごとその矛を下げた。

僕たちにしてみればそのユキが気になるところだったけど、きっと二人の間での酒の弱い代名詞なのだろう。

...こちらにしてみればエミリアと同義だ。


「...何か僕に失礼なことを考えませんでしたか?」

「いや、全く」

その僕の心が読まれたか、エミリアに鋭い警戒を思われてしまう。

そんな僕たちの様子を見ていたイアが、ぽつりとつぶやいた。

「...やっぱり、俺は平和な世界でいるよりも少し線上に足を踏み入れていたほうが良かったのかもな」と。

それに頷いていたのは、ユウだけではなかったと思う。


湿った風が吹き抜け、何処へと吹き去った。

『くしゅん。...おかしいな、こんなところに風なんて吹いてないのに。ボク(・・)を誰か読んだのかなあ...。いや、マンガじゃあるまいし、そんなことあるはずないか!』

その風は、確かに送られるべき人へと伝わっていたけど―――その事は、僕たちには伝わらない。

あくまで、こういうのは一方通行なのだ。



―――



酒場風にするのは決まった。しかし、決まったところでもう一つの条件があった。それは―――。

「材料をどうやって調達するか...。」

またもや当然のことだが、材料の調達の事だ。

大見えを張って『???を出店として出します!』と言っても、その資材がないのなら訳ないという具合に僕達は今またもや悩んでいた。

資材を集める方法なら正直いくらでも考えつく。例えばユウを頼って融通してもらうなどだ。

しかし、それを行った場合僕に対してのユウの敵愾心はさらに上がるだろう。

そんな恐ろしいことを平然とやるほど僕は恐れ知らずではないので、どうにかして集めるほかないのだが―――。


「...レイ、僕は今非常にいい方法を思いついたよ」

「ひゃあぁっ!?」

其のことを考えている所に後ろからそんな声を掛けられるのだから、驚きのあまり悲鳴を上げてしまう。

ただ、それでシンが少し悲しそうにしていた節があったので謝ることに。


「...それで、その方法って言うのは?」

許してくれたので聞いてみると、珍しく少し目を輝かせた様子でシンは言う。

「酒の元になる物の名産地が近くにあったじゃないか!」

「え?」

僕に考える時間も与えず、シンはその場を口にする。

そこは、僕たちの最終目的地だった場所。僕たちの故郷。

「アリオスだよ!」

ベルベッド共和国、要塞砦市アリオスだった。

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