学院の地下船廠
ここに来てから初めての夏がやってきた。
アリオスは夏も過ごしやすい天気だが、ここら辺は夏に湿った空気を持つ風が吹く。
どうやら此処の西の方にある、アリオスが縦に5個、横に3つも入る大きな湖の水が暑さで蒸発し、その分湿気が多くなっているのだ。
イアとユウに言わせれば、それは「ニホンに近い」らしい。
二人の感想は、きっとセイタにも被るものがあるだろうと思いながら、僕は今イアと一緒にセイタの地下研究室にいた。
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「...なぜおまえもいる、イア」
「いや、レイの監督ってことにしてくれ。それに、俺はもう4つぐらいは似たようなのを作ってるしな」
「...そういえば、お前はクリンゲやエリトルガ、イグジステンスも手掛けているのだったな」
二人が何を話しているかは分からない。でも、きっとニホンで起きた話だろう。
そんな事を考えながら、僕はイアがついてきた理由を思い出していた。
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僕は、今日遅くまでラィデォル魔術学院に残っていた。
理由はもちろん、セイタの話を聞いて戦艦とかいう途轍もなく大きそうな船を作る為だった。
『...じゃ、早く寝ろよ。この世界で無理し過ぎて、あっちに言った瞬間死ぬとかは勘弁してほしいからな』
『...私はそんなに柔じゃない。3ヶ月ぐらいなら最悪寝なくても大丈夫』
『いや、それは寝ろよ!?』
だというのに、僕がいる場所からはユウの研究室兼寝床を横切らなければならず、最悪二人にバレるようなことがあってはならないと思った。
その為、僕はこうやって息を殺してイアが離れるのを待っていた。
「...優の実験に巻き込まれる俺の身にもなれって話だよなあ」
ぶつぶつ文句を言いながら行き慣れたように何も見ずに歩くイア。
これなら横を通ってもバレないかもしれないがバレると大変だと思い、一呼吸だけしてまた息を殺す。
そしてイアが真横を通り抜けるが、まだ気は抜けない。
そうして息を殺してしばらく経ち、ようやく一呼吸着くと―――。
「...なあ、お前誰だ?どっかのスパイなのか?」
そのイアの言葉は、僕を震え上がらせるに十分な言葉だった。
すっかり恐慌を起こしかけるものの、そんな事をすれば僕はきっとイアに捕まる。
なので、物音を立てないでいたのだけど―――。
「...この感じはレイか。何しにこんなところに残ってんだ?」
すっかり言い当てられてしまい、焦る。
だが、これこそイアの思うつぼと言う事を考え、無言になる。
「そうやって律儀に黙る辺りがお前なんだよ」
しかし、僕の頭にその手が近づき、遂には触れられてしまう。
「ほんとに何してんだ、お前?」
その眼光は鋭く、僕は仕方なく行き先を明かし―――そして、今に至るのだ。
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「...まあ、経験者がいるのだから良いだろう。
...レイ君、少しの間目を瞑ってくれたまえ」
そう言われ、僕は素直に目を閉じる。
瞬間、何か外で物音がした。
「もう開けてもいいぞ」
次はイアの言葉で、僕は目を開ける。
すると、そこに広がっていたのは下の方が水になっている大きな空洞だった。
「...これはドックと呼ばれる戦艦作成に着工するために作られた場だ。
嘗て、この様な場所でイアはクリンゲと呼称される戦艦を作った。レイ君も同じようにできるだろう」
「いや、あれは仕方なくだな...。」
「...やっぱり、イアはすごいのか...。」
イアは、きっと世界をバスター出来るぐらいには強い戦艦を作ったのだろう。
そう思うと、決意が漲った。
「まずは、魔力量を確認させてもらう。この水晶に手を当ててくれ」
何処かで聞いたことのあるフレーズだ。
まあ、それに従って僕は手を当てる。
すると、ミシミシという音が鳴って思わず魔力を引っ込めそうになる。
「いや、リミットを掛けなくてもいいぞ。リミットを掛けるようなら俺がお前の身体を内側から破裂させる」
が、そのイアの言葉(というより、脅し?)によって僕は魔力をリミットを掛けずに出し続ける。
「...大体イアの12億倍か。この程度であればまあ問題ないだろう」
と、魔力を計測し終わったかセイタはそんな言葉と共に僕の手を水晶から離させる。
...それにしても、イアの魔力量はどのくらいなのだろうか?好奇心で聞くと、
「だいたいこの世界の基準で言えば2億5000万だな」というお答えが。
どうやらイアがもともといた場所ではこの20倍持っていたそうだけど、転生で力を失ったのだろうか。
それにしても...僕の魔力量が30京と言うのは何かの冗談だろうか。
そんな事を考えながら、僕たちは次の工程に移行した。




