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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
32/92

『ペットボトル事件』 or 氷華斉太

ネタバレですが、この世界の転生の概念的には死んで異世界に飛ぶ、じゃなくて死んで果てなく遠い宇宙のかなたに行く感じです。

注:今回追加された設定なので以前との齟齬が発生していた場合、それは僕の確認不足ということでご容赦ください。 ∀・1

『...え?』

そこに現れた容器は、透明だった。

硝子製かと言われればそういう訳でもなく、ただ単純に透明な柔らかいものでできていた。


「...なんで次の段階のものが来るのかしら...。」

ユウの言っている意味はある程度しかわからなかったけど、実験が意外な成功を収めたことは分かった。


結局成功したんだから、どういうふうに進めようとしていたかを聞いた。

「最初は少し遠い場所のものを召喚して、次に外天まで範囲を広げるの。

次に、私たちがもともといた世界からこのペットボトルみたいな無機物、次に紙コップとかの有機物、それに機械を召喚するの。それから人を呼び出して、こっちで同位体の魂を作って本体は送り返し、ついでに私も戻るってわけ」

でも、無機物とか有機物とか機械などと言うものは聞きなじみのないものだった。


「...優の言う事は真面目に聞かねえほうがいいぞ。

それにしても...俺の知っていた転生の概念が悪い方向に崩れていったんだが...。」

僕を宥めるイアは、何かを思い出したかそう言って遠い目をした。


それにしても...このペットボトル?というのは何でできているのだろうか。

何かを極限まで薄くして、紙よりも薄そうに見える。

なのに水を形を変えることなく入れておけるのはなぜなのだろう。

ただ、そんな事を考え出すときりがないように思えたので何もしなかった。


「そうだ、レイ。試しにそれを炎で焼いてみて」

「おい!?そんな事をすればただじゃすまないぞ!?」

イアの忠告も聞かずに僕は手から出した炎(焰尾大剣パーシヴァルの能力で温かくならない様になった代わりにいつでも魔力消費無しで出せるようになった)でペットボトルを炙る(水はもう抜いていた)。


すると、なんという事でしょう。

「...ぐっ!?何これ、早く逃げなきゃ!」

「...だから言っただろ!?なんでプラと燃えるごみとであるのか考えた事もないのか‼」

「知らないわよ、そんなの!」

「...<次元収納デルヘドラ>、<物質創造バース・デモニッション>」

驚くほどの異臭と共に、目から涙があふれるではありませんか。

イアの忠告の意味も分かり、取り敢えず空気を消し去り、新たに同じ空気(焼きペットボトル無し)を作る。


「...アレ、下手したら普通に死ぬからな?にどと、ああいう真似をするな。するなら、俺はお前を存在ごと消し去らなければなくなる。...まあ、半分機械が混じっているお前の身体には正常に反応するとも思えないが」

「...悪かったわね、兄さん。私が無能で」

「あれならまだセイタの方がましまであるぞ」

「...あんな老害、もうこの世界に来ることもないでしょ」

「お前に巻き込まれてるんだからな?ついでにヴァルも」

二人の話している内容は分からなかった。が、少なくとも僕が知るような言葉ではない事は理解できた。



―――



かくして、一時ユウ(一応、生徒名としては聖奉語で『氷りし華の優しき者』を意味するピース・アイシクルフラワーとなっていたが)の研究室を使用不可にした、僕たち3人しか知らない雑談の合間の事件、『ペットボトル事件』は幕を閉じた。

因みに、その原因になった召喚魔術を使用した紙はイアがボロボロに破き去り、ユウはそれに絶望していた。...が、僕がこっそり<時間遡行スリーパー・オン>で蘇らせたため、不思議な友人関係が僕たちの中に生まれた。



―――



僕たちがこの学院に入って早くも2週間が過ぎ去った。

パンの代わりにコメを食べる文化はグレスにもあったので、学食のコメはすぐに慣れた。

ミソシルとかいう茶色い液体も、何気に美味しい。

何処からか取り寄せているのだろう魚の切り身やテンプラは大抵茶色い液体につけて食べる。


一体それがどんなところから出るのだろうか。

と、そんな益体もない事を僕は自室で珈琲を飲みながら考える。

この珈琲も、シンがどこからか持ち出してきた色々な器具が無ければ愉しめないものだ。

...きっとユウも疲れているだろうから、今度ユウにもこれを差し入れしよう。

そう思いながら珈琲を飲んでいると―――。


「...そんなに珈琲が好きなら、ダグラスにでも頼めばいいものを」

という、学院長の声の高さを3音ほど下げたような、少し疲れ気味の声が聞こえた。

驚いて周りを見渡すと、突き出すように用意されている広めのベランダに男が立っていた。


何かの要因があったのか、髪は40の峠を越えたばかりに見えるのに白髪。

肉体は意外と若々しいものの、年老いてきているのか、それとも動くことを怠っていたのか、非常に弱弱しく見えた。

そのよれよれの白衣と内に着た服は、やはりラヴィア学院長に似ていた。

ただ、覆面は付けていなかった。


「えーと...そのダグラスと言うのは誰ですか?イアとユウも同じことを言っていましたが。

それに、貴方誰ですか!?後、どうやってここまで入ったんですか!?ここは魔力結界を張ってるのに...‼」

その奇怪さから僕は、正直最初の所共通する違和感を聞こうとした。しかし、だんだん現実感が戻ってきた為に語気は荒くなっていく。


其れにも、彼は冷静に返す。

「ダグラスと言うのは、私たちの共通友人だ。私の名前はヒバナセイタ、あの馬鹿たちの父親だ。

...きっと、私の事をののしってくれたはずだ。特に優が」

そこで自嘲気味に続きを話す。

「...わたしには魔力がないのだよ。魔力結界は魔力の反発によって魔力を持つ者をはじく。

つまり、魔力が無ければそこら辺の適当なところから一足に飛べばここには入れるのだ」


哀れかな、そんな彼はやつれていた。

「...私の研究室は、この学院の地下にある。来たければくればいい。それと、この学院にいる二つの高役職者たちは、私と私の仲間であるヴァルの時間平面上非同位体だ。この世界で生まれ、同時に此処で役職を得たという感覚でいる者達だが...私たちがそちらに宿ることもできる。君も、その素質はあるのだから、優に手伝って長い時間研究に時間を割くか、それとも私の作る対高エネルギー体・真空空間用宇宙戦艦、名前は未定だが、それの手伝いをして外天を飛び、月―――この世界でいう所の天界に赴き、この世界と私たちがいた世界の行き来を行うか。果ては同じだが、道は違う。

...ま、興味が無ければそれでいい。ではまた会おうか、レイヴン・ヴェルドリア」


言いたい事だけ言うと、彼は足早に逃げ去った。

その後暫く彼のいたベランダを見て呆けていたが、夜のとばりが下りてくる時間になってようやく動き、学食を貪ることに成功した。

乾いた空気が目立つようになってきた、夏の頭の事である。

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