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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
30/92

研究室の兄妹

やっとラィデォルに着いた疲れもあってか、男子寮の指定された寮室―――0101だった―――について荷を置くなり、すっかり脱力してしまう。

柔らかな枕と広めにとられたベッド、そしてそんな広いベッドをもってしても余りある部屋の大きさ。

「ふぅ...。」とつい感嘆のため息をつくぐらいにはいい場所だった。


そうやってそのままベッドインし、寝てしまいかけてはっと目を覚ましていた時には、昼だった筈なのにもう真っ暗になっていた。

こんな上質な部屋にありつけるとは思えず、つい満足してしまったようだ。

しかしこんなところでの夕方は恐らく食堂しか開いておらず、その食堂をして今日は使えない身だ。

仕方なく<物質創造バース・デモニッション>で林檎とパンを作り、食べる。


なんでこんなことになったのか...。

と、扉がノックされて開けてみると、隣の部屋に住んでいるシンがいた。

「どうせ寝たんだろ?だから、持ち帰れそうなものだけ持ってきたよ。まあ、早いうちに食べな」

なんて神様だ。僕はその仕打ちにそう思ったね。



―――



次の日。晴れて僕たちは入学する。と言っても何かあるわけではなく、僕たちは【特別生学級】と書かれた木の板が申し訳程度にかかっている、どう見ても研究室でしかないところに来ていた。

扉を開けると、そこには二つの影があった。


近づいていくと、その片方は聞き覚えのある高音の声で「おお、シンにレイ。それに...エミリアと...レーヴァ?よく来たな。手紙を見た感じか?アイツ(・・・)には何か言われなかったか?」というおっさん臭い言葉をくれ、もう片方は何も言葉をくれなかった。

「...おい優、何とかじゃべったらどうなんだ?」とイアが言うものの、「...これが終われば観光レベルでこっちに来れるようになるから良いでしょ?それに、死んでいたとしても皆の魂自体はあるんだから、例えばダグラスあたりでもこっちで復活させてあっちに戻すこともできるでしょ?」と取り合っていなかった。


...そんなやり取りを続けているうちに面倒になったか、「...ヒバナユウ」と名前らしい事を言い、「全く、兄さんのせいで無駄なことをする羽目になったんだけど」と苦言を呈していた。

それに取り合わない辺り、こう言った事はもう何回も行っているんだろう。ユウもそれに慣れているのか、何も言わなかった。...いや、とても低い音の舌打ちはしていたが。


「...えーと...。」

何をどうすればいいか分からない状況で、そんな事を言っていると突然ユウから魔の手が!

油断していた僕はその手に捕まってしまう。

「...ほんと小さいのね。ま、私に言えた事じゃないけど」

そして、創ってるものが見づらいだろうに僕を脚に乗せ、そのまま続きをしてしまう。


苦言を呈そうとユウを見ると、その顔に驚く。

その顔は、学院長よりも恐ろしかった。

顔の右半分を仮面で隠し、左半分にあっても目の部分以外は仮面で覆い、目の部分は眼帯をしていた。

何も見えなさそうとも思ったが、きっとしっかり見えているのだろう。

「...そんな顔されると傷付くんだけど」という声が聞こえた。


謝ると、「それでいいのよ」と僕を反転させ、撫でられる。

それは恥じらいを覚えるだけでエミリアにもされていたから最悪良かったのだけど、エミリアと大きな違いがあった。

それは、髪が長い事だ。彼女の白銀の髪がくすぐったかった。


「...レイを離してください」

と、ようやく僕に救いの手が。

呆気に取られていた皆(イアを除く)がようやく元に戻り、エミリアが救いの手を伸ばしてくれたのだ。

しかし、それに対するユウは手慣れた感じで。

「...分かったわよ。好きなんでしょ、レイの事」

とあしらい、そして素直に僕を離す。


ようやく助けられた。そう思い、「ありがとうございます、僕を助けてくれて」という。

きっと、「ふふ、問題ないですよ、レイ」と言ってくれるはずだ、あの面倒見の良くて苦労人なエミリアは。

そう思って彼女を見ると―――。

「―――っ‼」

すっかり顔を赤くしていた。何か顔を赤くするようなことはあったのだろうか。

そんな僕たちを見て、シンが「...ありゃ重篤な鈍感を患ってるね、レイは」と言った。

解せぬ。

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