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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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レギュロス山脈

今までの寒さが嘘だったかのように、ラギアス天地は暖かくなった。

常冬の大地が一転、四季のある魔物が多い大陸に早変わりしたのだ。

最も厳しいと言われていたこの大陸の生き方は、大きく変わるだろう―――。


そんな事を言いながら、僕は今レギュロス山脈にいた。

銀銭500枚の関税はやはりと言うかしっかりとられ、レギュロスの中にある山中国家ゲルググに滞在していた。

此処ではそもそもとして依頼すらない為金は消えていくが、その代わりと言うかなんというか...換金できる。

今まで銭貨だったものは、レギュロスを越えるときには貨幣へ変えなくてはならない。


なので、僕たちの手持ちはすっかり金貨と銀貨に埋め尽くされていた。

基本銀貨でいいのだけど、今日のように少し高めなところで外食となるのなら金貨を持ち出すことになる。


「...いやあ、おごってもらう形になって悪いね」

「まあ、それでいいと思いますよ。今日は今までのお礼と言うことで」

「もう、なんでそんなに堅苦しいのさ!ほら、ボクみたいにフランクな感じで、ね?」

「...仕方ないなあ」

今日は、今までのエミリアへの感謝の意を込めて外食。

...というのは名目で、人目をはばからずにイチャイチャしだしたシンとレーヴァが見たくないだけだ。


「じゃあ、ボクは紅牛のステーキで」

「僕も同じものでお願いします」

さらっと銀貨45枚するものを頼めるのは、金銭的余裕があるからか、エミリアへの恩が深いからなのか―――それとも、他の感情に起因するものなのか。

紅牛の肉塊から肉が切り出され、焼かれていく。


示し合わせたように数秒だけ肉に火を通し、そして切り分けてから礼儀に気を付けて貪っていく。

紅牛が生でも食べられるというのもそうだけど、生肉で腹がやられないようになったのも大きな違いだ。

きっと、アリオスにい続けたままでこんなことをすれば流石に腹を壊していただろう。



最初のころは、僕はこちらに来て不幸だと思った。

でも、今ならばお父様の決めた相手と結婚して領主となる事なんて信じられない。

こうやって、エミリアやレーヴァと会えない人生なんて信じられない。

「...どうしたの?」

こうやって一緒にいることが一番だ。


だから、僕は「...大丈夫ですよ」と答え、「...大事な話があります」と、彼女を呼んだ三つ目の理由を始動させた。



―――



「...僕たちの旅はもうすぐ終わると思われます。ですが、僕には懸案事項が残っています」

「それは何?ボクにはそんなものあるように思えないんだけど」

確かに、エミリアにはわかるまい。だって―――。

「...エミリアとレーヴァの事ですよ」


「...え?」

目を見開くエミリア。でも、僕はその予想通りの反応を見てつい笑ってしまう。

「もう、笑い事じゃないんだよ!」

そう怒るエミリアは、とてもかわいかった。

「いや、だって二人は飛び出してきた身だから、僕たちが家に着いたらどうするのかって思ってさ」

「勿論、二人の傍にずっといるよ!」


そう即答してくれたのは嬉しい。途轍もなく。でも、二人には権力の足かせがあるのだ。

「...レーヴァの事はどうするの?レーヴァが王女だってのは前聞いていたけど、グレス王国に戻らなくていいの?」

「...良いよ。ボクを棄てて居なくなる母さんとか、権力ばっかり求める貴族。そんなものにうんざりしてるから、レーヴァ様はああやって叛逆してるんだよ。僕も同じだから、止めはしないしむしろ積極的についていったんだけどさ」


そこで溜息を吐くと、エミリアは言う。

「アリオス・エラグト・グレスの始めたあの国は、もう腐り切っちゃったんだよ」

それを言った後の彼女は、何かの生きる意味を失ったように見えた。

話しかけることもはばかられ、何も言えない。

そんなところに、「...食後のデザートはいかがでしょうか?」という声が聞こえた。

またもや照らし合わせたように「「...じゃあ、アイスクリームで」」と答え、銅貨5枚分の価値しかないことに驚き、そしてエミリアの苦言などなかったように帰り着く。


いつもの様に話せたことは良かったけど、何かしらの業を二人も背負っているのかと思うと、悲しく、同時に少しだけ嬉しく思えた。



―――



「おや、お帰り。意外と遅い帰りだったね」

「眠い...。シン、私寝るね?」

「ああ、うん。お休み、レーヴァ」

宿に戻ると、そこには甘言ばかり吐くシンとレーヴァの姿が。

引きちぎってやりたいとも思ったけど、得も知れぬ心の闇は奥に押し込み、レーヴァ抜きでこれからの事を話すことに。


「...アリオスに戻ってどうなるか、ねえ。言っとくけど、戻らないからね?」

「「...え?」」

僕は、唖然とした。

戻らないというのは、何かの悪い冗談か?

そう思ったのもつかの間。シンが表情を綻ばせて言う。


「言っただろ、僕。ラィデォル魔術学院に行きたいってさ。そこから、アストラル・デスティニア宛てに入学を進める文書が来たからさ」

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