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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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冰海の主

「...寒っ!?」

転移床を抜けて思った事は、その一点だった。

今までの寒さがまだまだ序の口だというかのような冷気が僕たちを襲い、パーシヴァルに首を灼き落されたときに熱を貰っておけばよかったと思うぐらいには凍える寒さだった。


と、なんともなくなった。

身体が慣れたからなのかもしれないが...大本の予想は、シンの持つ大剣だった。

パーシヴァルの尾で象られたその剣は周りの気温に干渉するのか、シンは少し熱そうにしていた。

そのまま防寒着を脱ぐものだから、レーヴァにギョッとされていた。

「熱くてね。レーヴァも近づいてみればわかるんじゃないかな?」

シンがそういうので、仕方ないようにレーヴァはシンに抱きつく。


なんとまあ大胆に、と思ったのはエミリアもシンも同じだと思った。

と、レーヴァにもシンの異変が移ったか、「アレ、とても熱い!」と言い出し、服を脱ぎだした。

これでレーヴァがものぐさでこの下に何も服を着て居なかったらエミリアに幾らでも叱られただろうけど、そんな事は起こらず、防寒着をそこかしこにほっぽり出した。

エミリアも羨ましく思ったか、少しだけ手を近づける。


シンがその手を握ると、エミリアも同じように防寒着を脱ぎだす。

それにやはり触発され、僕もシンの手に触れる。が、特に何か変わった様子はなく、そのまま防寒着を着たままにしていた。

他の3人がおかしそうな視線をくれたので少し虚しくなった。



―――



まあ、そんな事も早々と終わらせ、この村―――べリオロ村だったか―――の寒そうな方向へと向かっていく。

実際に寒い方向に進んでいくと、そこには2Ⅿほどありそうな氷像が並べられ、《...貴公らも私の世界の住人となりたいのかな?》と少し喜ばしそうな声が奥から聞こえた。

と言っても、その声は前パーシヴァルが発したものと同質だと予測していたために驚きは少なかった。


その龍は、恐らく冰龍王だと思える見た目をしていた。

周りに吹雪が舞い散り、全てが凍てつくような世界の中で生き生きと動く少ない影。

吹雪からうっすらと見える日光に反射して銀に光る鱗。

頭部には、またもや王冠のように発達した組織があった。


...と、僕は恐ろしい事実に気付いてしまった。

氷像をのぞき込むと、中に何かきらりと光る物を見つけたのがきっかけだったけど―――果たして、それは剣だった。

そして、その横にあった黒っぽいものは―――人間の頭部だった。


しかし、悲鳴を上げるわけにはいかない。

焰龍王との戦いで、香ばしい鼻腔をくずぐられる匂い―――しかしそれは、パーシヴァルの紅き爪に灼かれた人間の肉の匂いだった―――に食欲を掻き立てられるのを我慢しながら戦ったことを思えば、なんとも思わなかった(そう言うと少し語弊があるのだけど)。


《...貴公らは、私の力に干渉を受けないみたいだ。嬉しいよ、一緒にいれそうで。でも、背が最も大きなものが持つ剣は我が弟の尾だね?それは私に悪影響を及ぼす。...今回は眠りにつくけど、いつか空に要塞が出来るようなことがあれば私はそこで君たちと戦う。いいね?》

そう言い残して、冰龍王は地下に沈んでいく。


「...待て!」

その鋭い言葉と共に、僕の頬を何かがかすめた。

次の瞬間、生暖かいものが頬を通り、同時にドゴォと何かが砕けたような音が鳴った。


その声の主―――レーヴァは冰龍王が沈んでいった場所に行くと何かの剣のような物を拾い、綺麗にそれが入るように作られている頭部組織を削っては背に負った。

まるでシンのようだと思いながら頬をぬぐうと―――右手には血がこびりついていた。

急いで<時間遡行スリーパー・オン>を発動させけがを直すと、急いでレーヴァの許へ向かう。


そこにはもう3人がいた。

レーヴァはシンに剣の掛け方を教わり、エミリアはそんな二人を眺めていた。

僕が来ると、レーヴァは謝罪し、次に剣の紹介をした。

「この剣はね、さっきの冰龍王の角の骨なんだ。...冰角大剣としか言いようがないけど、これで私とシンが似たような対極の剣を持ったわけだね!」


嬉しそうなレーヴァは、シンの腹の左斜め上を突いた。

古傷などないはずなのに、すごく痛そうにしていた。

きっと、レーヴァがおかしいぐらいの強さを持っていたのだろう。そうとしか考えられない。



―――



氷像となった人は、冰龍王にそのまま呑み込まれたため帰ってくる事は無かった。

ただ、僕たちは新たな収穫と共に帰ってきた。

それを見た老人の依頼受付は、少しだけ微笑を浮かべた。

そして、まだまだ旅は続く―――。

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